アーリウムの大賢者

佐倉真稀

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王都アルデ(ヒューSIDE)

剣聖 ※

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※R18表現がありますのでご注意ください。







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「あ、まっ……」
 あわてたメルトが俺にしがみ付いた。そのまま腰を突き上げる。奥に当たった感覚がして、快感が押し寄せる。
「気持イイ……」
 メルトからもうっとりとした呟きが漏れた。突き上げる腰の勢いが増した。
 メルトの中は熱くて、気持ちがいい。
 狭いそこが唸って絡みつくように締め付けてくるのを振り切るように抽挿した。
 混ざっていく魔力がお互いを快感に導いていく。
「あっ……くるっ……くるよぅ……」
 自分からも腰を揺らし始めたメルトの色っぽさに俺もますます張りつめて激しく揺さぶった。
 メルトのしがみ付く手の力が強くなって震えた。
「あっ……あっ……あんっ……あっ……あああああーーーーッ……」
 仰け反って達する姿に息を飲みながら俺も果てた。
 かくりと気を失ったメルトの背を慌てて支えて抱き込む。
「気を失っちゃったか……魔力、注ぎすぎたかな?」
 惜しいけれど、繋がりを解いて、浄化をかけベッドに優しく横たえる。乱れた髪をそっと直して横に潜り込んだ。
「愛してるよ、メルト」
 チュッと額にキスを落として灯りを消した。

 翌朝、起きたらメルトがいなかった。
「あれ? メルト?」
 そして夕べ魔力を注ぎすぎたせいか、元の姿に戻っていた。
 辺りの気配を探ったら、メルトの魔力ともう一人、よく知っている魔力の気配。
「え?」
 慌てて服を着て、大人の姿になって転移した。

「メルト!」
 傷だらけで座り込んだメルトが目に入った。
 その側に、剣聖がいた。俺の師匠だ。
 シャープな顎にぎらつく青紫の目。限りなく赤に近い赤紫の髪を短く刈っている。身長は今の俺と同じくらいで、鍛えられた鞭のような感じだ。前世で言えば豹のようなイメージの人物。
 着崩したクレム領軍の軍服を着ている。
 そういえば指導官をしていたな。それなら宿舎にいるはずだ。
 なぜここへ?
「師匠……メルトに何してるんですか……」
 ああ、師匠なのに、魔法を撃ってしまいそうだ。
「おーヒューだ。こいつイイね。わしの弟子にした。めちゃくちゃ鍛えれば、お前より強くなりそうだ。何よりお前と違って、剣が好きなところがいい」
「メルトは確かに剣が好きですが、俺の伴侶ですよ。大切なんです。それなのに、こんな傷だらけにされると魔法撃っちゃいそうなんですけど……」
 俺の周りに魔力が溢れて乱れ舞う。髪がふわりと浮き上がった。
 俺の本気を知ると、師匠の顔がにやけたものから真面目な顔になって、ついでに青くなった。
「わかった。わかったから、魔力を散らしてくれ。弟子にするのはダメか?」
 メルトが俺をキラキラした瞳で見る。あーーーーーーー……メルトがやりたいなら俺が止められるわけがない。
「あー。まあ、メルトがやりたいっぽいからいいけど。俺が優先。じゃないとカレーはもう一生作ってやらない」
「わかった。傷は残さないようにするから! カレーを作ってくれ!」
 弟子よりカレーが大事なのか? まあ、俺しかカレーは作れないんだけど。

「メルト……ヒール、浄化。大丈夫?」
 メルトに回復魔法をかけて傷を消す。綺麗な肌に傷あとなんて残さない。手を握って起こした。
「すごく楽しかった」
 満面の笑みを見て、思わずぽかんとした。
 あんなに傷だらけだったのに?
 楽しい?
 思わず二人の顔を交互に見てしまった。
 剣馬鹿二人爆誕……。
 いやもう、爆誕してた。
「メルト、この人は俺の師匠で、チャド。今代の剣聖だ」
 こんな感じでもこの人フィメル。……メルトもだった。あれ? 剣に夢中な人ってフィメルが多いの?
「よろしくお願いします」
 師匠はがははと豪快に笑った。

「こっちこそ、鍛えがいのある奴を弟子にできてよかったぜ。ヒューは鍛えがいがないし、領軍はてんでモノにならねえ。これから楽しみだなあ。あ、カレーは今夜にでも作ってくれ。じゃあ、わしは寝るわ。夕べしこたま飲んでよお……そうしたら、ヒューの魔力を感じるじゃねえか。思わず宿舎から飛んできちまったんだよ。まあ、走ってだけどなあ……」
 また笑いながら母屋に歩いて行った。
「なあ、ヒュー、俺、そんなにヒューの匂いする? お風呂入ったほうがいいかな?」
 突然メルトが変なことを言い出した。
「は?」
 何を言ってるんだ?
「ヒューの魔力と間違えたって言って。伴侶だからとか、若いっていいとか……なんでだろうな?」
 そういえば魔法は使えないのに魔力感知はできるんだった! 魔力視まではいかないが、魔力で人の識別はできると言っていたな!
「あんのくそ剣聖~~~~!」
 思わず叫んだ。

 部屋に戻ってメルトがお風呂に入ってる間に色々とアイテムボックスに入ってるものを物色した。
「カレー粉はあるな。米もある。ナンは料理長に作ってもらえばいいか。あれ? メルトは辛いのって食べたことないよな?」
 塩もあんまり使わない感じだった。
 俺は元の姿に戻った。魔力を節約しないといけないからな。

 お風呂上がりのメルトと朝食を一緒に食べた。アイテムボックスから出したので濁した。
 今母屋に行ったら師匠が朝食を食べてるだろうし。
 朝食を食べているとメルトがカレーについて聞いてきた。
「カレーってなんだ?」
「あー。カレーね。メルト、辛いの平気?」
「辛い? しょっぱいってことか?」
「そうか、香辛料ってあんまり使われてないんだっけ。デッザで使われているハーブも北に生えるものばかりだからな。カレーに使うのは南の植生だし。じゃあ、今夜師匠のリクエストで作るから、メルトも食べてみて。師匠は辛いのが好きなんだけど、メルトにはあまり辛くないようにするからね?」
「食べたことのない奴か。すごく楽しみだな」
 メルトが上機嫌だ。

「ごちそうさま。そうだ、昨日買った食材を移しておかないと」
 俺がテーブルを片付けるとメルトがポーチから食材を出した。どんどん出てくる食材にメルトの眉間に皺が寄る。
「ヒュー、このポーチ、こんなに入るはずがないんだが……何かしたか?」
「あー、その、王都へ行く時の別れ際にちょちょいと改造をして拡張をしておいたんだ」
「はあ? マジックポーチがそんなに簡単に改造できるのか?」
「僕、空間魔法使えるから、ほら。ね? 預かっているリュックも改造しちゃう? あっちのほうが素材はいいからもっと入るよ。時間停止機能も付ける? インデックスも付けて、何が入っているか検索しやすくしようか?」
 ぽかんとしているメルトに畳みかける。
「そんなに喜んでくれるなら今しちゃおうか。一応中身は全部出しておいて? そのポーチももっと使いやすくしちゃうよ」
 メルトから預かっていたリュックを取り出して渡した。

 メルトがリュックの中身を整理している間に俺は出してもらった食材をアイテムボックスに仕舞った。
 ポーチに入っていたものをメルトが出してテーブルに置く。
 その内の一つがテーブルから転がり落ちそうになったので、手でキャッチした。
 これ、俺が作ったものだ。作った覚えはないけれど、わかる。
 なんで、メルトが持っているの? 
「これ……」
「それは12年くらい前に、見習い騎士のダンジョン演習で行ったダンジョンで手に入れたみたいなんだ。俺はその時のこと、覚えていなくてどうやって手に入れたかわからないんだけど。ああ、他にも短剣とか、火竜の革で作られた剣とか、すごくいい装備とか、身につけていたらしいんだけど。基本、演習で手に入れたものは騎士団のものになるから、そのペンダント以外は騎士団にあるんだけれど……? どうしたんだ?」
 持っている手が震える。火竜の剣がないと思っていたらメルトにあげていた?
 ダンジョンで?
 手が震える。なにか、重大なことを忘れている。それは確かだ。
『大事な人なのに……思い出せ』
 ずきりと頭が痛む。

「メルト、このペンダントに魔力を流してくれる?」
「え、俺が魔力を? 流せるかな?」
 メルトに魔力を流してメルトの魔力を押し出すようにペンダントに導く。
「こんな感じで流すといい」
 メルトはコツを掴んだようでペンダントに魔力を流した。
「見て、メルト」
 光り出したペンダントに俺は確信する。12年前に俺たちは出会っている。
 何故だか、お互い忘れてしまっているけど。

 ペンダントヘッドの裏には龍の爪を模した刻印とメルトの名前が光って浮いていた。
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