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再会編(ヒューSIDE)
後始末 ※
しおりを挟むR18表現があります。
背後注意。
※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※ ※※※
「メルト? あ、やっちゃった……」
相性が良すぎる魔力は快感をもたらしすぎる。気絶したメルトをそっと横たえる。ベッドと自分たちに浄化をかけ、メルトの横に寝転んだ。そっと抱き寄せて、髪を梳く。
愛しいメルト。
魔力はまだ、お互いを巡っている。この繋がりは、しばらく解けないだろう。
上掛けを引き寄せて目を閉じた。
『すっごい美味しかった!』
『あの、ヒュー……俺、ちゃんと、こ、恋人になりたい、から……最後まで……して?』
『……出られるかな……』
きらきらした顔で、俺の手を握ったその手を離すまいとした。
『メルト!』
握っていたのに、すり抜けた。捕まえようとして手を伸ばした。
『逃げないから焦らないで、ヒュー……』
メルトが俺の手を握って、キスをくれた。
『ああ。やっと、会えた』
「……メルト?」
夢を見ていた? なんだか、今より幼いメルトを見た気がする? 願望が夢に出るっていうから、それか?
カーテンの隙間から、光が部屋に入っている。
夜が明けたのか。
薄明りにメルトの金髪が輝いている。そっと手を伸ばして触れた。
気持ちが通じた。
メルトも俺のことが好きだなんて、信じられないほど嬉しい。
「……ん……」
メルトの瞼がゆっくりと開く。綺麗な、翠色の瞳。ぼうっと俺を見ているが、段々と目が覚めたのか、焦点が合っていく。
可愛いな。
じっと見ていたのが恥ずかしかったのか、メルトの頬に朱がさす。
「……お、おはよう……」
「おはよう、メルト……」
思わずキスした。おはようのキスだ。嬉しそうなメルトがますます可愛い。
昨夜発見したのは、メルトが赤くなりやすいってことだ。
お試し期間だから照れてるのかと思ったら、そうじゃなかった。
白いからすぐ真っ赤になる。
「朝から可愛いね。昨夜入れなかったからお風呂に入らないか?」
可愛いと言うとメルトが何とも言えない顔になるのもまた可愛い。
「うん……せっかくだからな」
許しを得たので横抱きにして浴室に跳んだ。メルトはさらに何とも言えない顔をしていた。
よく西洋の映画に出てくる猫足の白いバスタブだった。でも小さい。
ちゃんと洗い場があって、俺達は洗いっこをして、湯を溜めたバスタブに浸かった。
狭いバスタブには狭いなりに良いところがある。くっつかないと入れないことだ。
メルトは俺の足の上に乗っかるようにして対面になって入っている。肩がすっかり出ちゃうので、時々湯をかける。
「重くないか?」
「全然。もっと体重あってもいいくらいだよ?」
メルトの背に手を伸ばして引き寄せる。綺麗な筋肉質の体。無駄な脂肪が一切ない、鍛え抜かれたそれ。お腹なんか綺麗に割れてた。
その肌には鬱血痕。俺の付けた印。お湯に触れた肌が真っ赤に染まっている。
「メルトの身体、本当に綺麗だ」
メルトが真っ赤になった。ああ、可愛いなあ。
「あの、俺の身体にあった傷が消えてるんだが……ヒューが治したのか?」
「ああ、細かい傷だよね? 魔力の治療のついでに治したけど、あとここ」
そっとメルトの目の下の傷に親指で触れてなぞる。
「治しちゃってもいい?」
「治るのか?」
「うん。あとかたもなく」
「お願いしていいか?」
「もちろん!」
メルトを更に引き寄せて俺はメルトの傷に口付けた。
「……あ……」
舌先でメルトの傷をなぞっていく。
「…ん……ヒュー……」
そこから魔力を吹き込んで、治癒魔法をかける。傷ついた細胞を取り除いて、新たな皮膚を作る。
イメージはメルトのすべすべの肌。
そっと唇を離すとそこに傷はもうなかった。
「治ったよ?」
メルトの手が傷のあった場所を探る。
「ありがとう……」
メルトが嬉しそうに微笑んだ。眩しくて目を眇める。息を飲むほど、綺麗だ。節操なしの息子が朝から元気で困る。
「……メルト……その、抱いてもいい?」
メルトの腰を引きよせて硬くなったそれをメルトの尻の谷間に潜り込ませた。メルトが恥ずかしそうにして頷く。
「……うん……俺も、したい、かも……」
可愛すぎる!!
それから浴室で一戦、ベッドに戻って二戦はした。夢中になってメルトを貪りつくした。俺は魔力が多くて、底なしだ。しかも相性がいい。
メルトは過ぎた快感に気を失った。
果てたメルトの髪をそっと撫でる。
暫くは起きないだろうメルトの額にキスして起き上がる。
上掛けを掛けて、ベッドを離れると着替えて元の姿に戻る。
「スリープ」
念のためにメルトに魔法をかけて部屋を出た。
結界魔法をかけ、鍵をかけると魔法でさらに鍵をかけた。メルトが内側から開けることができるけれど、外からは俺以外扉は開けられない。
宿に伝言か手紙は来ていないか聞くと何もなかった。連れが寝ているから、掃除などはしないでいいと告げ、宿を出てギルドに向かった。
ギルドマスターに取り次ぐよう受付で告げると、面談室に案内された。
昨日の件は知れ渡っているのだろう。
怖れる目か探るような目か、敵意の目。
敵意?
マップで赤の光点を示したギルド職員をマークする。
他の光点は黄色(中立)か、青(敵意なし)だ。
内通者がいたわけだ。
鍛錬場は出入りの人数くらいは把握しているはずだからな。
そうでなければ、不特定多数の冒険者が出入りするギルドで、メルトが都合よく一人で、あいつらに襲撃されるなど、ありえない。
受付のある場所や酒場でなら、あるいは諍いが起きるだろうがそれだって衆目がある。
ギルドマスターの光点は黄色。しかもまだ動いてない。
当然だ。別の場所にいるからね。ここは街の衛兵宿舎か?
まだデッザはすべて把握はしてないからな。
しかたない。
俺は通信機を取り出した。この機械の登録先は俺の実家、アルデリアの商会と、グレアムの屋敷。ボルドールと、ミハーラ。
俺の通信機はほぼスマホだ。
他の端末は皆、大げさなシステムにしてあって、盗難などに遭わないようにしている。
『なんだ。ヒュー、これを使ってくるなんて、よほどの急用か?』
「ミハーラ、久しぶり。うん。かなりの急用。僕がワイバーンの調査依頼受けたのは知っている? 調査結果とか、もう行っている?」
『いや、受たのは聞いている。ヒューが受けたなら問題はないと思って、気にしていなかったな』
俺はため息を吐いた。あの脳筋め。まず本部に報告をあげるべきだろう。
「昨日、終わらせて帰ってきた。岩山の山頂には約40体のワイバーン。10体は討伐して、卵は60個はあったかな? 30体は守護龍が竜舎に連れて行った。騎士団に確認して、こっちのギルドマスターに連絡してくれないか? あいつ使えないんだよ。現場では強そうだし、悪くないんだけど、突発的な事件の処理能力はあんまりないかな?」
『あんまり虐めるなよ。性格は実直で、もとSランク冒険者だ。睨みを利かすべきギルドマスターなら及第点だろう?』
「昨日、俺の伴侶がギルド内で襲撃されたんで、評価はマイナスだ。索敵に引っかかった職員がいるし、依頼の報告で2時間以上待たされた上のそれで、僕は今、非常に苛立っている。デッザ潰していいかな?」
『伴侶? え? 待て待て待て!! それはダメだ。何とかするからせめて3日は待て!』
「襲撃事件の方は多少動いて構わないか?」
『現行犯なら言い訳できないだろう? どうせ、処刑か犯罪奴隷だ。問題なかろう』
「言質は取ったよ。犯罪に手を染めたギルド職員の名は報告させるよ」
『ありがとう。ではこっちも動く』
「よろしくね。明日報酬受け取りたいからさ」
『わかった。では切るぞ』
スマホの通話ボタンをタッチして切り、アイテムボックスに放り込んだ。
待たされるのは嫌いなんだよ。特にここはお茶も出ない。
俺は面談室を出て、ギルドマスターの元へ向かった。
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