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再会編(ヒューSIDE)
冒険者ギルドデッザ支部②
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遅い。
ギルドには通信装置があっていざとなったら、本部に連絡が取れるはずだ。本部は王城とのパイプラインを持っているからすぐに問い合わせられると思うんだけど。
メルトも戻ってこないし。暇だから作っていたメルトのおやつ袋完成しそうなんだけど。
「よし。できた」
鑑定を発動させる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
おやつ袋(製作者:ヒュー・クレム)
素材:ブルーオーガ(レア種:表皮ブルー)
容量10000アイテム・各アイテム収納限界1000個(箱に入れた場合は箱を1つと感知)
ソート機能有・時間停止機能有(任意選択可能)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
よし完璧。料理をたくさん詰めたら渡そう。
俺はおやつ袋にアイテムボックスに溜め込んでいる焼き菓子等を詰め込んだ。リストが浮かぶのを確認するとアイテムボックスに仕舞った。
ティーセットとお菓子も仕舞う。
どうするかな。これ以上は時間の無駄だ。ギルドマスターを探して帰るようにするか書置きしてメルトを迎えに行くか。
『ヒュー』
メルトからの念話だ!
『メルト? 待たせちゃった? もう少しかかりそうなんだけど』
『鍛錬場で6人に囲まれている。出口を押さえられて逃げられない』
『すぐいく』
ちょっと目を離したらこれだ! 書置きのメモを残しつつマップでメルトの位置を確認した。
どこだ?
俺はイヤーカフに魔力を通し続けた。
イヤーカフを通してうっすらとメルトの見ているものが見える。地下の鍛錬場か? ここは。
にやけた破落戸の顔。聞こえるメルトへの暴言。
『まあ、この人数とやりあったら生きていられるかわからねえけどな』
『殺す前に啼かせるのもいいんじゃないか?』
『ガタイの良いメイルをヤルのもいいかもな』
ああ、こいつらには消えてもらおう。
その瞬間メルトと破落戸の間に入れるように転移した。すぐに戦闘に入れるよう手に剣を持つ。転移とともに大人の体になった。
「メルト!」
足が床に着いたと同時に横一閃。斬撃を繰り出して手前にいた二人が吹っ飛んで、その後ろの4人も返す刀で斬り捨てた。
剣を振って血脂を落とし鞘に納めアイテムボックスに仕舞う。扉の鍵は開錠の魔法で解除した。
メルトは怯えた表情をしていた。
6人は拘束魔法で、動けないようにしている。メルトの後頭部に手をかけ抱き寄せた。
俺のローブを握るメルトの手が震えた。
許せない。
俺の殺気が漏れたのか、全員気絶したようだった。
「もう大丈夫」
額にキスすると、メルトはほっとした顔をした。
「来てくれてありがとう。ヒュー……」
「魔力流してくれてて助かった。ここ、来たことがなかったから扉壊さなきゃいけないところだった。メルトはもう俺の傍離れちゃだめだよ?」
メルトは頷いて俺にしがみついたままだ。頬に手をやるとメルトの涙腺が決壊した。
「泣かないで。俺が悪かった」
一人にした、俺が悪い。抱きしめる手に力を込めた。メルトの涙をキスで吸い取った。
「ヒューは悪くない。俺が迂闊だっただけだ」
バタバタと廊下から足音が聞こえてきた。マップを確認すると10名ほどがここに向かってきていた。敵意はない。ドンドンと扉が叩かれた。
俺は元の姿に戻り、メルトに浄化をかけて顔を見せないよう、マントを羽織ってもらった。
扉を開けるとギルドマスターがそこにいた。後ろにはギルド職員らしき者がいた。なかなかに鍛え上げているものばかりで、荒事に慣れているメンバーを集めてきたのかと思った。
「残したメモを見た? あんたらがちんたらやっていたせいで、俺の大事なメルトが被害に遭うところだった。メルトの魔道具を狙って、一人になるところを襲いに来たみたいだな」
床に気絶している破落戸を顎で示した。ぎろりと、ギルドマスターを睨む。
「この中の一人には以前鍛錬場で声をかけられたことがある。もしかしたらその時から狙われてたのかもしれない」
メルトの言葉に俺は舌打ちをした。
「声をかけてきたのは誰?」
メルトが静かにいかつい顔をした茶髪の冒険者を指さした。
俺はそいつの顔を覚えた。部屋を出るときに蹴っておいた。
ギルドマスターの顔が引きつっていたが、これはギルド側の手落ちだ。
「そういえば、剣を振り始めた時にはかなりいた冒険者たちが、気が付いたら一人もいなかった」
「メルト、それはもしかしたら、こいつらが意図的に追い出した可能性もあるね。ギルドの施設を利用して、常習的に犯罪行為を繰り返していたかも」
「この男が? 真面目に依頼を熟すパーティーだと聞いていたが」
ギルドマスターが呆然としていたが見る目がなかったと諦めてくれ。
「俺達はもう帰る。またここには来るから、その時にしてくれ」
メルトを抱えて、ギルドを出る。メルトが俺のローブを掴んで離さない。まだ少し震えている。
「メルト、もう大丈夫だよ?」
「ああ。ヒューが助けてくれたから。ありがとう、ヒュー」
メルトの震える手を握る。身体を寄せて顔を覗き込んだ。
「どういたしまして。宿探しに行こう。とりあえず、この間泊まっていたところに行ってみようか」
「ヒュー、空きが無かったら、テントでもいいぞ。ヒューのテントは高級宿より凄いから」
「え、でもテントだよ?……うーん……そうだね。まあ、安い宿しかなかったら考えよう」
俺は眉を寄せて唸りながら答えた。手を繋いで、先日泊まった宿に向かう。
宿に入って、部屋の空きがないか尋ねた。この間泊まった部屋より上の部屋なら空いているということだった。浴槽があるという。即決だった。
最上階のその部屋に案内してもらう。簡単な説明を受けて中に入った。
俺はすぐ、大人の姿になってメルトを抱きしめた。
メルトの唇が震えて決意を込めた目で俺を見た。
「俺、ヒューが好きだ。もう、ヒューしか考えられない」
メルトが、俺を好き? ほんとに?
背に回されたメルトの手が少し震えた。
「メルト……嬉しいよ、メルト……俺も好きだ」
俺を選んでくれた!!
歓喜に震えた俺はメルトに口付けた。
『俺のメルトだ。やっと捕まえた』
心の奥底で、何かが揺れて、弾けた。
ギルドには通信装置があっていざとなったら、本部に連絡が取れるはずだ。本部は王城とのパイプラインを持っているからすぐに問い合わせられると思うんだけど。
メルトも戻ってこないし。暇だから作っていたメルトのおやつ袋完成しそうなんだけど。
「よし。できた」
鑑定を発動させる。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
おやつ袋(製作者:ヒュー・クレム)
素材:ブルーオーガ(レア種:表皮ブルー)
容量10000アイテム・各アイテム収納限界1000個(箱に入れた場合は箱を1つと感知)
ソート機能有・時間停止機能有(任意選択可能)
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
よし完璧。料理をたくさん詰めたら渡そう。
俺はおやつ袋にアイテムボックスに溜め込んでいる焼き菓子等を詰め込んだ。リストが浮かぶのを確認するとアイテムボックスに仕舞った。
ティーセットとお菓子も仕舞う。
どうするかな。これ以上は時間の無駄だ。ギルドマスターを探して帰るようにするか書置きしてメルトを迎えに行くか。
『ヒュー』
メルトからの念話だ!
『メルト? 待たせちゃった? もう少しかかりそうなんだけど』
『鍛錬場で6人に囲まれている。出口を押さえられて逃げられない』
『すぐいく』
ちょっと目を離したらこれだ! 書置きのメモを残しつつマップでメルトの位置を確認した。
どこだ?
俺はイヤーカフに魔力を通し続けた。
イヤーカフを通してうっすらとメルトの見ているものが見える。地下の鍛錬場か? ここは。
にやけた破落戸の顔。聞こえるメルトへの暴言。
『まあ、この人数とやりあったら生きていられるかわからねえけどな』
『殺す前に啼かせるのもいいんじゃないか?』
『ガタイの良いメイルをヤルのもいいかもな』
ああ、こいつらには消えてもらおう。
その瞬間メルトと破落戸の間に入れるように転移した。すぐに戦闘に入れるよう手に剣を持つ。転移とともに大人の体になった。
「メルト!」
足が床に着いたと同時に横一閃。斬撃を繰り出して手前にいた二人が吹っ飛んで、その後ろの4人も返す刀で斬り捨てた。
剣を振って血脂を落とし鞘に納めアイテムボックスに仕舞う。扉の鍵は開錠の魔法で解除した。
メルトは怯えた表情をしていた。
6人は拘束魔法で、動けないようにしている。メルトの後頭部に手をかけ抱き寄せた。
俺のローブを握るメルトの手が震えた。
許せない。
俺の殺気が漏れたのか、全員気絶したようだった。
「もう大丈夫」
額にキスすると、メルトはほっとした顔をした。
「来てくれてありがとう。ヒュー……」
「魔力流してくれてて助かった。ここ、来たことがなかったから扉壊さなきゃいけないところだった。メルトはもう俺の傍離れちゃだめだよ?」
メルトは頷いて俺にしがみついたままだ。頬に手をやるとメルトの涙腺が決壊した。
「泣かないで。俺が悪かった」
一人にした、俺が悪い。抱きしめる手に力を込めた。メルトの涙をキスで吸い取った。
「ヒューは悪くない。俺が迂闊だっただけだ」
バタバタと廊下から足音が聞こえてきた。マップを確認すると10名ほどがここに向かってきていた。敵意はない。ドンドンと扉が叩かれた。
俺は元の姿に戻り、メルトに浄化をかけて顔を見せないよう、マントを羽織ってもらった。
扉を開けるとギルドマスターがそこにいた。後ろにはギルド職員らしき者がいた。なかなかに鍛え上げているものばかりで、荒事に慣れているメンバーを集めてきたのかと思った。
「残したメモを見た? あんたらがちんたらやっていたせいで、俺の大事なメルトが被害に遭うところだった。メルトの魔道具を狙って、一人になるところを襲いに来たみたいだな」
床に気絶している破落戸を顎で示した。ぎろりと、ギルドマスターを睨む。
「この中の一人には以前鍛錬場で声をかけられたことがある。もしかしたらその時から狙われてたのかもしれない」
メルトの言葉に俺は舌打ちをした。
「声をかけてきたのは誰?」
メルトが静かにいかつい顔をした茶髪の冒険者を指さした。
俺はそいつの顔を覚えた。部屋を出るときに蹴っておいた。
ギルドマスターの顔が引きつっていたが、これはギルド側の手落ちだ。
「そういえば、剣を振り始めた時にはかなりいた冒険者たちが、気が付いたら一人もいなかった」
「メルト、それはもしかしたら、こいつらが意図的に追い出した可能性もあるね。ギルドの施設を利用して、常習的に犯罪行為を繰り返していたかも」
「この男が? 真面目に依頼を熟すパーティーだと聞いていたが」
ギルドマスターが呆然としていたが見る目がなかったと諦めてくれ。
「俺達はもう帰る。またここには来るから、その時にしてくれ」
メルトを抱えて、ギルドを出る。メルトが俺のローブを掴んで離さない。まだ少し震えている。
「メルト、もう大丈夫だよ?」
「ああ。ヒューが助けてくれたから。ありがとう、ヒュー」
メルトの震える手を握る。身体を寄せて顔を覗き込んだ。
「どういたしまして。宿探しに行こう。とりあえず、この間泊まっていたところに行ってみようか」
「ヒュー、空きが無かったら、テントでもいいぞ。ヒューのテントは高級宿より凄いから」
「え、でもテントだよ?……うーん……そうだね。まあ、安い宿しかなかったら考えよう」
俺は眉を寄せて唸りながら答えた。手を繋いで、先日泊まった宿に向かう。
宿に入って、部屋の空きがないか尋ねた。この間泊まった部屋より上の部屋なら空いているということだった。浴槽があるという。即決だった。
最上階のその部屋に案内してもらう。簡単な説明を受けて中に入った。
俺はすぐ、大人の姿になってメルトを抱きしめた。
メルトの唇が震えて決意を込めた目で俺を見た。
「俺、ヒューが好きだ。もう、ヒューしか考えられない」
メルトが、俺を好き? ほんとに?
背に回されたメルトの手が少し震えた。
「メルト……嬉しいよ、メルト……俺も好きだ」
俺を選んでくれた!!
歓喜に震えた俺はメルトに口付けた。
『俺のメルトだ。やっと捕まえた』
心の奥底で、何かが揺れて、弾けた。
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