88 / 115
再会編(ヒューSIDE)
クエスト⑥
しおりを挟む
食事が終わったらお風呂だ!
メルトが言っていたキスの先はまだっていうのは忘れてないけど……。
いや、嫉妬でつい、悪戯したのは認める。
でも、メルト嫌がってなかったんだけど。本気で嫌がったら俺もやめていた。
もしかして、メルトは俺のこと、少しずつでも、好きになってくれてるんだろうか。
「先にお風呂入ろう。メルトが褒めてくれたお風呂だからね」
手を繋いでテントのお風呂に向かう。元の姿の俺の手とメルトの手じゃ、大人と子供くらい差がある。悔しいので、脱衣所に入ったら大人の姿になった。
繋いでいる手を引いて抱き寄せて口付けると、メルトの身体から力が抜ける。
大分、心を許してくれていると、思うんだけどな。
舌を差し込むと、メルトからも舌を絡めてくれるようになった。おずおずとした動きだけど、それが嬉しい。
ああ、メルトのファーストキスは俺なんだっけ。凄く嬉しい。
鼻に抜けた声で、俺を呼ぶメルトの甘い声が背筋をぞくりとさせる。
唇を離してメルトを見つめた。上気した頬が色っぽくて、翠の瞳が熱に潤んでいる。
いやがっている顔じゃないと確認して、俺はメルトの服を剥ぎにかかった。
キスの余韻にぼうっとしているのか、全部脱がされて、声をかけるまで、動かなかった。
シャワーを浴びて、メルトを洗う。メルトは為すがままだ。いや、俺を見ている?
あれ? 視線が股間の方に釘付けになっているぞ。
「……メルト、さすがの俺でもそんなにガン見されると恥ずかしいんだけど……」
「え、あ、いや……その……改めてみると凄いなと……」
「え、そうかな? で、ナニが?」
自分がにやにやした悪い顔になっているのを自覚する。ナニってナニだよね。わかってる俺の凶器のことだって。
「いや、それよりも入ろう、お風呂……」
手を引っ張られて浴槽へ向かう。俺のナニよりお風呂なんだ。そっかー。
「それよりもなんだ……」
メルトのクスッという笑い声に目を細めつつ浴槽に身を沈めた。
「ヒューのせいでお風呂好きになってしまったみたいだ。一カ月入らなかっただけでもう我慢できないくらいだった。浄化の魔法も使えないから、ずっと濡らしたタオルで拭いていただけだったしなあ」
「俺のせいって……まあ、俺のせいだけど。メルト、人前で汗拭う時、上半身裸になったりしてないよね? ちゃんと隠れて拭ってたよね?」
目を逸らされた。これは?
「え、あ? そこまで意識してなかったから、どうだった、かな? うん、大丈夫だと思う?」
これは本気で意識してなかったな? メルトはこんなに色っぽくて魅力的なんだから、襲われちゃう。ラーンの騎士団め。どうせメイルがフィメルの着替えを堂々と覗きたかったからそんな風習になったんだろう。
北の方はメイル上位主義がまだ蔓延ってるって聞いたことあるからな。
そもそもメルトを辞めさせることがおかしい。ラーンの騎士団は品行方正で、素晴らしい騎士団だって評判だったのにがっかりだ。
思わずメルトを抱きしめた。メルトはあまり人を疑わないんだろう。もしかしたら悪意に気付かない可能性もある。
酔ってるところをやられたのだってそうだ。そんなのただやりたかっただけだ。そいつが。初物食いたかっただけだろう。本気でメルトが好きならちゃんと言葉にして申し込んで、付き合ってからするもんだ。あー腹立つ。
「お、おい、ヒュー……」
「ダメだ。メルトはこんなに色っぽいんだからメイルの前でそんなことしたら、絶対襲われちゃう。絶対だめ」
「わ、わかった。色っぽいとかはちょっとわからないが、これからはヒューがいるから、ヒューに浄化してもらえば、それはしないですむだろう? 出来れば俺が浄化を使えるようになればいいんだが」
ん?
これからは俺がいるから?
思わず体を離してメルトの顔をじっと見る。
メルト、今言った言葉って告白のようなものだよ。ずっと一緒にいるって言ってくれたんだから。思わず嬉しくなって顔が緩んだ。あー今俺は締まりのない顔をしていると思う。
「うん。俺がずっと傍にいて、浄化するから! まかせて。メルトが魔法を使えるようになりたいなら、それも俺が頑張って使えるようにするよ?」
驚いた顔でメルトが俺を見つめた。
「え? 俺が魔法を使えるようになるのか?」
「うん。前から言っているように治す手段はあるんだよ。ただ、そのう、直接触れて魔力を流し込んで治療しないといけないから、魔力の相性が悪いとできないっていうのと、セックスに近いことになっちゃうから……メルトと恋人にならないとって思っていたんだけど。今はお試し期間で一応恋人同士だから、メルトがいいっていうなら今夜からでも治療していこうか。すぐには治らないからしばらく続けないといけないけど……いいかな?」
言ってくれるかな。お試し期間はいらないって。
「治るなら、お願いしたいのは俺の方だ。身体強化や生活魔法を人並みに使えることができるなら、俺はどんな治療でもいい。もちろん、ヒューだからって思っている。凄い魔術師だからな。ヒューは」
あー。うん。メルトの信頼が重い。でも、メルトは魔法を使えないことに、相当なコンプレックスがあるみたいだ。
そうだよな。この世界で生活魔法を使うのに苦労するものはほとんどいないから。
ならば、全力で治そう。
「じゃあ、今夜から、ね?」
俺は夕べと同じように風呂から上がるとメルトをしっかりと抱きかかえて寝室に跳んだ。
メルトが言っていたキスの先はまだっていうのは忘れてないけど……。
いや、嫉妬でつい、悪戯したのは認める。
でも、メルト嫌がってなかったんだけど。本気で嫌がったら俺もやめていた。
もしかして、メルトは俺のこと、少しずつでも、好きになってくれてるんだろうか。
「先にお風呂入ろう。メルトが褒めてくれたお風呂だからね」
手を繋いでテントのお風呂に向かう。元の姿の俺の手とメルトの手じゃ、大人と子供くらい差がある。悔しいので、脱衣所に入ったら大人の姿になった。
繋いでいる手を引いて抱き寄せて口付けると、メルトの身体から力が抜ける。
大分、心を許してくれていると、思うんだけどな。
舌を差し込むと、メルトからも舌を絡めてくれるようになった。おずおずとした動きだけど、それが嬉しい。
ああ、メルトのファーストキスは俺なんだっけ。凄く嬉しい。
鼻に抜けた声で、俺を呼ぶメルトの甘い声が背筋をぞくりとさせる。
唇を離してメルトを見つめた。上気した頬が色っぽくて、翠の瞳が熱に潤んでいる。
いやがっている顔じゃないと確認して、俺はメルトの服を剥ぎにかかった。
キスの余韻にぼうっとしているのか、全部脱がされて、声をかけるまで、動かなかった。
シャワーを浴びて、メルトを洗う。メルトは為すがままだ。いや、俺を見ている?
あれ? 視線が股間の方に釘付けになっているぞ。
「……メルト、さすがの俺でもそんなにガン見されると恥ずかしいんだけど……」
「え、あ、いや……その……改めてみると凄いなと……」
「え、そうかな? で、ナニが?」
自分がにやにやした悪い顔になっているのを自覚する。ナニってナニだよね。わかってる俺の凶器のことだって。
「いや、それよりも入ろう、お風呂……」
手を引っ張られて浴槽へ向かう。俺のナニよりお風呂なんだ。そっかー。
「それよりもなんだ……」
メルトのクスッという笑い声に目を細めつつ浴槽に身を沈めた。
「ヒューのせいでお風呂好きになってしまったみたいだ。一カ月入らなかっただけでもう我慢できないくらいだった。浄化の魔法も使えないから、ずっと濡らしたタオルで拭いていただけだったしなあ」
「俺のせいって……まあ、俺のせいだけど。メルト、人前で汗拭う時、上半身裸になったりしてないよね? ちゃんと隠れて拭ってたよね?」
目を逸らされた。これは?
「え、あ? そこまで意識してなかったから、どうだった、かな? うん、大丈夫だと思う?」
これは本気で意識してなかったな? メルトはこんなに色っぽくて魅力的なんだから、襲われちゃう。ラーンの騎士団め。どうせメイルがフィメルの着替えを堂々と覗きたかったからそんな風習になったんだろう。
北の方はメイル上位主義がまだ蔓延ってるって聞いたことあるからな。
そもそもメルトを辞めさせることがおかしい。ラーンの騎士団は品行方正で、素晴らしい騎士団だって評判だったのにがっかりだ。
思わずメルトを抱きしめた。メルトはあまり人を疑わないんだろう。もしかしたら悪意に気付かない可能性もある。
酔ってるところをやられたのだってそうだ。そんなのただやりたかっただけだ。そいつが。初物食いたかっただけだろう。本気でメルトが好きならちゃんと言葉にして申し込んで、付き合ってからするもんだ。あー腹立つ。
「お、おい、ヒュー……」
「ダメだ。メルトはこんなに色っぽいんだからメイルの前でそんなことしたら、絶対襲われちゃう。絶対だめ」
「わ、わかった。色っぽいとかはちょっとわからないが、これからはヒューがいるから、ヒューに浄化してもらえば、それはしないですむだろう? 出来れば俺が浄化を使えるようになればいいんだが」
ん?
これからは俺がいるから?
思わず体を離してメルトの顔をじっと見る。
メルト、今言った言葉って告白のようなものだよ。ずっと一緒にいるって言ってくれたんだから。思わず嬉しくなって顔が緩んだ。あー今俺は締まりのない顔をしていると思う。
「うん。俺がずっと傍にいて、浄化するから! まかせて。メルトが魔法を使えるようになりたいなら、それも俺が頑張って使えるようにするよ?」
驚いた顔でメルトが俺を見つめた。
「え? 俺が魔法を使えるようになるのか?」
「うん。前から言っているように治す手段はあるんだよ。ただ、そのう、直接触れて魔力を流し込んで治療しないといけないから、魔力の相性が悪いとできないっていうのと、セックスに近いことになっちゃうから……メルトと恋人にならないとって思っていたんだけど。今はお試し期間で一応恋人同士だから、メルトがいいっていうなら今夜からでも治療していこうか。すぐには治らないからしばらく続けないといけないけど……いいかな?」
言ってくれるかな。お試し期間はいらないって。
「治るなら、お願いしたいのは俺の方だ。身体強化や生活魔法を人並みに使えることができるなら、俺はどんな治療でもいい。もちろん、ヒューだからって思っている。凄い魔術師だからな。ヒューは」
あー。うん。メルトの信頼が重い。でも、メルトは魔法を使えないことに、相当なコンプレックスがあるみたいだ。
そうだよな。この世界で生活魔法を使うのに苦労するものはほとんどいないから。
ならば、全力で治そう。
「じゃあ、今夜から、ね?」
俺は夕べと同じように風呂から上がるとメルトをしっかりと抱きかかえて寝室に跳んだ。
7
お気に入りに追加
1,107
あなたにおすすめの小説
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる