アーリウムの大賢者

佐倉真稀

文字の大きさ
上 下
86 / 115
再会編(ヒューSIDE)

クエスト④  ※

しおりを挟む

 

 かるいR18表現があります。
 背後注意。
 苦手な方は飛ばしてください。



  ※※※  ※※※  ※※※  ※※※  ※※※  ※※※  ※※※




「当ててるからね。いっしょに気持ちよくなろう?」
「えっ……い、いっしょに? 当ててる?」
「うん。生理的なものかもしれないけど、俺の事、意識してるって思っていいんだよね? だから凄く嬉しくて」
 メルトの顔がさらに赤くなって耳まで染まる。可愛い。

「あ、それはそのう、うん……」
 こくりと頷いてくれたメルトが愛しい。愛しくて口付けた。
 さっきまでの軽いものじゃなく、舌を絡めて唾液を交換するようなキス。
 何度も貪るようにして、きつく吸い上げた。お互いの魔力が口腔を経由してお互いの体へと入っていく。それが気持ちいい。

 俺達の魔力は相性が良すぎる。
 お互いの象徴はキスだけでもはち切れそうだった。
 手を伸ばしてまとめて握る。ちょっと扱きあげただけでお互いの体が震えた。
 気持ちいい。
 メルトの手が俺の背中に縋るように伸ばされる。メルトの象徴と俺のが擦れ合う度に快感が魔力とともに上がってくる。メルトの目が伏せられて、快感に震える。

 メルトが仰け反るのを抱きしめている手で支えた。
「……ひ、ヒュー……もう、ダメ……あっ……あ……ああああぁ――ッ」
 達する様子を目を眇めて見ながら俺も達した。お互いの精がお互いの肌を汚して滴り落ちていく。
 メルトが俺に凭れ掛って荒い息を整えていく。
 気持ちよかった。
 シャワーを出して、汗を流した。
 メルトが俺に身を委ねてくれてる。嬉しい。

「戻ろうか? 掴まってて」
 魔法でお互いの水分を飛ばして乾かす。横抱きに抱えあげてベッドの上に転移した。
 メルトを横たえて上掛けを掛ける。隣に潜り込んで、肘をついてメルトの顔を覗き込んだ。
「めちゃくちゃ色っぽくて可愛かった」
 俺の声は浮かれ切って弾んでいた。真っ赤になったメルトはくるりと背を向けた。

 え、嫌われた?
「あ、ごめん。言い過ぎた? 久しぶりにメルトとこうしていられて嬉しくて……ついやりすぎちゃったかも……」
 慌てて言ったらメルトが俺のほうに向きなおった。顔は赤いままで、照れ隠しなのかちょっと怒ったような顔だ。怒られる?

「……ヒューはその、かっこよかった……俺、重いのにあんな風に抱きあげられて運ばれるのって初めてだったし。それに、凄く気持ちよかった。……もう寝る。お休み」
 そう早口で言った後、俺の胸に顔を埋めた。
 え? 何これ? 尊い。
 そっと抱きしめて、魔道具の灯りを魔法で消す。

「おやすみ、メルト……」
 メルトの体温を感じて寝るのは一カ月ぶりで。
 ドキドキしすぎて眠れるのだろうかと思っていたけれど、すぐに寝てしまったメルトの穏やかな寝息を聞いているうちにいつの間にか寝てしまった。
 明日は早く起きないといけないから、目覚ましの魔法を寝る前にかけた。

 メルトの夢を見たような気がする。

 俺に優しく「ヒュー……好……」と、告白しようとした夢。
(ピピピピピピピ……ピーピーピー)
 アラームが鳴って思わず目を開けて飛び起きる。ビックリした顔でメルトが固まってた。朝からメルトの裸見ちゃった。眼福。

「時間だ。起きなきゃ。アラームの魔法って心臓に悪い……あれ? 起きてた? おはよう」
 朝の挨拶のキスをチュッとメルトの唇に落とした。んん?? 思ったより、メルトの頭の位置が高い。あ、元の姿に戻っていた。気合い入れてないと、意識がない間に戻るんだよな。
「お、おはよう……まだ暗いがもう出るのか?」
 再起動したらしいメルトが問いかけてくる。俺は欠伸をして両手を上にあげて伸びをした。よし。意識がはっきりしてきた。
「早めに出ないと野営できる場所に着くのが夜中になりそうなんだ。着替えたら出発しよう。食堂はやっているはずだから食事したらそのまま宿を引きあげて、北門から出よう」
 メルトは頷いて、ベッドを降りて着替えを始めた。俺も着替えてローブも羽織る。

 チェックアウトするから忘れ物がないようにチェックして部屋を出る。
 食堂から美味しそうな匂いがする。メルトの視線が匂いのする方へ向いた。
「メルト、おなか空いてる? じゃあ、早くいこう!!」
「ヒュー、階段では危ないぞ」
 階段をメルトの手を引っ張りながら駆け下りようとしたら、引き留められた。引っ張ろうとしたらびくともしなかった。メルトの体幹凄い。
 メルトは元の姿だと、子ども扱いなんだよな。まあ、この身長だと仕方ないけど。

 食堂には他の客はいなかった。
 朝食のメニューはパンとスープ。オプションで卵料理とベーコンとソーセージ。飲み物もオプションだ。メルトは足りなさそうだったので、一人前追加した。ホットミルクの蜂蜜入りも頼んだ。

 この世界の乳製品は植物に成る実だ。ココナッツみたいな感じだ。かといって植物由来の生クリームみたいな感じではなく、動物性脂肪ぽいのだ、
 ファンタジーだな。
 魔素量が多い地域で採れたものは甘くておいしいミルクになる。魔力量が豊富に含まれていると濃いミルクになるからだ。
 魔物が魔素の多い地域に住むと強い魔物に育つのはこれが原因だ。
 ヒューマンも魔力を多く含む食材を多くとって育てば魔力量が伸びる。
 貴族と平民の違いはそこにある。食事の量が違うからな。ただ器の上限は生まれついてのものだからそこは仕方ない。

 メルトの器の上限は高いし、量も多い。この魔力が身体強化に使われればもっと強くなる。放出が苦手でも内部を巡らせることはできるはずだけど、魔力器官に異常があるから、現状魔法を使えない。
 治す手段はあるんだけれど、どうしたもんかな。
 俺は、美味しそうに朝食を平らげているメルトを見ていろいろ考えた。でも、その前にちゃんと恋人になれるよう努力しよう。
 胃袋は掴んでいるはずなんだ。野営のご飯でアピールしよう。

 食事を終えて宿を引き払って北門へ向かった。
 外は白んでいて、もう、市民活動は始まっている。日の出とともに起きて、日の入りとともに寝る。
 それが普通だ。まだまだ灯りの魔道具は市民レベルでは普及していないし、蝋燭だって灯りの油だって高価だ。

 大通りは馬車が行き交っているし、冒険者や屋台を引く人、行商人の姿も見える。パンを焼く匂いやスープの匂いが漂ってくる。
 ローブを着て歩いていると、少し暑い気がするくらいの気温だ。昼間になればもっと暑くなる。
 魔の森ではもう少し気温は下がるし、目的の岩山の頂上となると、早春の気温くらいになると思うから、防寒対策は必要だ。

 北門からは多くの冒険者たちが出て行くのが見える。大勢の冒険者が門番のチェック待ちで列を成している。俺達はその最後尾に並んだ。
「凄いな。こんなにいたのか」
「ここを出て右の方に行く道の先に“幽玄迷宮”っていう高難度のダンジョンがあるんだ。アンデッドが多く出る迷宮だから、幽玄なんてつけられているらしいよ」
「アンデッドか。剣じゃ難しいな。ゾンビの類はハンマーか。レイスは聖属性付与の武器が必要だな」
「聖属性付与なら僕出来るよ。魔法もばっちり」
「……ヒューだからな」
 ぼそっと呟かれた言葉は俺には聞こえなかった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

転生したけど平民でした!もふもふ達と楽しく暮らす予定です。

まゆら
ファンタジー
回収が出来ていないフラグがある中、一応完結しているというツッコミどころ満載な初めて書いたファンタジー小説です。 温かい気持ちでお読み頂けたら幸い至極であります。 異世界に転生したのはいいけど悪役令嬢とかヒロインとかになれなかった私。平民でチートもないらしい‥どうやったら楽しく異世界で暮らせますか? 魔力があるかはわかりませんが何故か神様から守護獣が遣わされたようです。 平民なんですがもしかして私って聖女候補? 脳筋美女と愛猫が繰り広げる行きあたりばったりファンタジー!なのか? 常に何処かで大食いバトルが開催中! 登場人物ほぼ甘党! ファンタジー要素薄め!?かもしれない? 母ミレディアが実は隣国出身の聖女だとわかったので、私も聖女にならないか?とお誘いがくるとか、こないとか‥ ◇◇◇◇ 現在、ジュビア王国とアーライ神国のお話を見やすくなるよう改稿しております。 しばらくは、桜庵のお話が中心となりますが影の薄いヒロインを忘れないで下さい! 転生もふもふのスピンオフ! アーライ神国のお話は、国外に追放された聖女は隣国で… 母ミレディアの娘時代のお話は、婚約破棄され国外追放になった姫は最強冒険者になり転生者の嫁になり溺愛される こちらもよろしくお願いします。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

処理中です...