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見習い騎士はダンジョンで運命と出会う(メルトSIDE)
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それから同じように灰色狼が現れた。たいてい3~5体で現れる。ヒューがまず拘束魔法を放って動けなくなったところで俺が狼の首を落とす。
最初はなかなか首を落とせなかったが、何回も遭遇するうちにコツがわかってきた。ヒューからもアドバイスがあって、それで今のところ問題はなかった。
ヒューはもしかしたら高ランクの冒険者じゃないかと思う。魔物に詳しいし、ダンジョンにも慣れている。それに剣も魔法も極めている感じだ。剣を指導してもらいたい気がする。
それに最初は動揺していて気付かなかったが倒した魔物は、どうやらヒューがマジックバックにしまっているらしい。
目の前で倒した狼が消えた時はびっくりした。あのテントを収納してまだ余裕があるなんてすごい。
「んー、こっちの道は行き止まりだ。一番近い分岐を進もう。」
ヒューはマッピングをしていると言っていたが、手に書く物を持っていない。大丈夫なのだろうか。
スキル?でもアレって斥候職の持つスキルじゃなかったっけ。考えつつ、言われたとおりの道を行く。
感覚ではまっすぐな道が交差している感じだ。見通しは悪く道は狭い。
出てくる魔物は俺が知っている限りの知識では脅威度Bランクだった。騎士5人で安全に処理できるランク。なのに、ヒューの魔法であっさり俺にも対処が出来ている。
多分、ヒューだけでも余裕な気がする。本当にすごい魔術師、なんだ。俺と共闘といったのは、多分…。
あの部屋を出てずいぶん時間が過ぎた。手に持つ剣が重く感じる。
「メルト、疲れたか?休憩するか?あっちに少し広い場所がある。そこで少し休もう。」
ハッとしてヒューを振り返った。ヒューは優しい微笑みを浮かべていた。
「あ、うん、少し…」
遠慮がちに頷くと、またヒューは髪をくしゃくしゃにするようにかき回して手を離す。
「じゃあ、そこまでひと頑張りだ。そこまでに魔物は…いるな。狼2体ってとこだ。」
ヒューの言う通り、狼が2体出た。それを屠って進んだ先で、少し開けた場所に出た。
でもさっきの部屋のような安全地帯ではないらしい。
ヒューは俺に水の入った水袋を渡してくれ、水を飲ませてもらった。魔道具で、魔石の魔力がなくなるまで水が溜まるものだといった。
便利だなと思ったがやはり魔力を流すことは必要みたいだった。何口か飲んで返した。そうしたらヒューはそのまま口を付けていた。なんでか頬が熱くなった。
少し休んでまた出口を探す。上へ向かう通路を。休憩を取ってから体感で5時間くらいたった時、ヒューが戻ろう、といった。戻る?
「さっきの部屋に戻ろう。このまま探索しても多分、すぐには出られない。」
「戻ったらまた最初からに…」
ここまで来るのに時間がかかったのに、戻ったらその分ロスになるんじゃないか?そう思って言いかけたらヒューに手を握られて、目の前の景色が変わった。
あの部屋だ。
「…え?ど、どうして?」
思わずきょろきょろして周りを見回した。最初の部屋だ。
「ちょっと転移魔法でね。次はさっきの場所に転移するから大丈夫。」
ヒューは俺にそう説明して片目を瞑った。……気障なメイルだとそう思った。
転移魔法って、そんなの知らなかった。確かに一瞬で移動できる手段があるなら、安全な場所の方がいい。
「これは一度行った場所か、目で見える場所にしか行けないからね。それとダンジョンの階層を跨ぐことはできないんだ。失敗する。同じ階層なら大丈夫みたいだから使ってみた。補助のアンカーも打ってあるしね。」
そうか、それで歩いていたんだな。確かに脱出できるならとっくにしているはずだし。
ともかくヒューはやっぱり規格外なんだな、とそう思った。
「じゃあ、野営の準備をしようか。」
ヒューがそういうと例のテントを出し、食事の支度をした。俺はうろうろとしただけで、邪魔をするだけだったので、休んでおいでと言われた。
それなら鍛練をしようと、少し離れた場所でいつもしている筋力の鍛練と、型をなぞる素振りをする。次第に夢中になって時間と場所を忘れた。
いつの間にかヒューが食事を作り終えて、俺の鍛練を見てた。それに気付くと剣を降ろして頭を掻く。
「終わったら、声をかけてくれれば…もしかしてずっと見てたのか?」
ぼそりと呟くと、ヒューは何か考える顔をして、次の瞬間両手に木剣を持っていた。
どこから出したんだ?という疑問は多分無駄だと思ったので、突っ込まないことにする。
その一本を、俺に放り投げた。思わず受け止めて首を傾げた。
「模擬戦する?」
思ってもみない申出に俺は満面の笑顔で、はい!と返事をしたのだった。
ヒューは自然体で立っている。構えもしない。でも隙はない。
打ち込む場所を探して、俺は探る。真正面から…いなされる。
側面から?…横から飛んできそうだ。
あらゆる場面を考えて、でも打ち込めるイメージはわかなかった。
ぞくぞくする。団長の稽古を受けている時みたいに。
格上の相手との、稽古。
ああ、楽しい!
真正面から、踏み込んだ。上段から降り降ろす。下からすっと腕を上げて剣を滑らせていなされた。
横に身体がずれて隙ができる。
その瞬間剣を押されてよろめいた。剣先が首筋めがけて打ちおろされる。
転がって逃げた。起き上がると目の前にヒューが立っていた。
打ちおろされる剣を受け止める。重い!
何とか返してやや斜めから打ちおろす。何度か打ち合って鍔迫り合いになる。
俺は必死になっているのに、対するヒューは涼しい顔をしていた。
手加減されている、と感じた。
それはそうだ。俺よりずっと格上なのだから。きっと稽古を付けるつもりで、この模擬戦を提案したんだろう。
ならば俺は、ヒューをよく観察して、技を盗む。視線の先、身体の使い方。技の出し方。呼吸。
ヒューは魔術師なのに、何でこんなに凄い剣士なんだろう。俺も同期になら、強いと言われるほうなのに。敵わない。力も技量も。経験が多分全然違う。
ヒューは俺にとどめは刺さず、長く打ち合いをしてくれた。そうして俺の体力の限界まで付き合ってくれたのだった。
最初はなかなか首を落とせなかったが、何回も遭遇するうちにコツがわかってきた。ヒューからもアドバイスがあって、それで今のところ問題はなかった。
ヒューはもしかしたら高ランクの冒険者じゃないかと思う。魔物に詳しいし、ダンジョンにも慣れている。それに剣も魔法も極めている感じだ。剣を指導してもらいたい気がする。
それに最初は動揺していて気付かなかったが倒した魔物は、どうやらヒューがマジックバックにしまっているらしい。
目の前で倒した狼が消えた時はびっくりした。あのテントを収納してまだ余裕があるなんてすごい。
「んー、こっちの道は行き止まりだ。一番近い分岐を進もう。」
ヒューはマッピングをしていると言っていたが、手に書く物を持っていない。大丈夫なのだろうか。
スキル?でもアレって斥候職の持つスキルじゃなかったっけ。考えつつ、言われたとおりの道を行く。
感覚ではまっすぐな道が交差している感じだ。見通しは悪く道は狭い。
出てくる魔物は俺が知っている限りの知識では脅威度Bランクだった。騎士5人で安全に処理できるランク。なのに、ヒューの魔法であっさり俺にも対処が出来ている。
多分、ヒューだけでも余裕な気がする。本当にすごい魔術師、なんだ。俺と共闘といったのは、多分…。
あの部屋を出てずいぶん時間が過ぎた。手に持つ剣が重く感じる。
「メルト、疲れたか?休憩するか?あっちに少し広い場所がある。そこで少し休もう。」
ハッとしてヒューを振り返った。ヒューは優しい微笑みを浮かべていた。
「あ、うん、少し…」
遠慮がちに頷くと、またヒューは髪をくしゃくしゃにするようにかき回して手を離す。
「じゃあ、そこまでひと頑張りだ。そこまでに魔物は…いるな。狼2体ってとこだ。」
ヒューの言う通り、狼が2体出た。それを屠って進んだ先で、少し開けた場所に出た。
でもさっきの部屋のような安全地帯ではないらしい。
ヒューは俺に水の入った水袋を渡してくれ、水を飲ませてもらった。魔道具で、魔石の魔力がなくなるまで水が溜まるものだといった。
便利だなと思ったがやはり魔力を流すことは必要みたいだった。何口か飲んで返した。そうしたらヒューはそのまま口を付けていた。なんでか頬が熱くなった。
少し休んでまた出口を探す。上へ向かう通路を。休憩を取ってから体感で5時間くらいたった時、ヒューが戻ろう、といった。戻る?
「さっきの部屋に戻ろう。このまま探索しても多分、すぐには出られない。」
「戻ったらまた最初からに…」
ここまで来るのに時間がかかったのに、戻ったらその分ロスになるんじゃないか?そう思って言いかけたらヒューに手を握られて、目の前の景色が変わった。
あの部屋だ。
「…え?ど、どうして?」
思わずきょろきょろして周りを見回した。最初の部屋だ。
「ちょっと転移魔法でね。次はさっきの場所に転移するから大丈夫。」
ヒューは俺にそう説明して片目を瞑った。……気障なメイルだとそう思った。
転移魔法って、そんなの知らなかった。確かに一瞬で移動できる手段があるなら、安全な場所の方がいい。
「これは一度行った場所か、目で見える場所にしか行けないからね。それとダンジョンの階層を跨ぐことはできないんだ。失敗する。同じ階層なら大丈夫みたいだから使ってみた。補助のアンカーも打ってあるしね。」
そうか、それで歩いていたんだな。確かに脱出できるならとっくにしているはずだし。
ともかくヒューはやっぱり規格外なんだな、とそう思った。
「じゃあ、野営の準備をしようか。」
ヒューがそういうと例のテントを出し、食事の支度をした。俺はうろうろとしただけで、邪魔をするだけだったので、休んでおいでと言われた。
それなら鍛練をしようと、少し離れた場所でいつもしている筋力の鍛練と、型をなぞる素振りをする。次第に夢中になって時間と場所を忘れた。
いつの間にかヒューが食事を作り終えて、俺の鍛練を見てた。それに気付くと剣を降ろして頭を掻く。
「終わったら、声をかけてくれれば…もしかしてずっと見てたのか?」
ぼそりと呟くと、ヒューは何か考える顔をして、次の瞬間両手に木剣を持っていた。
どこから出したんだ?という疑問は多分無駄だと思ったので、突っ込まないことにする。
その一本を、俺に放り投げた。思わず受け止めて首を傾げた。
「模擬戦する?」
思ってもみない申出に俺は満面の笑顔で、はい!と返事をしたのだった。
ヒューは自然体で立っている。構えもしない。でも隙はない。
打ち込む場所を探して、俺は探る。真正面から…いなされる。
側面から?…横から飛んできそうだ。
あらゆる場面を考えて、でも打ち込めるイメージはわかなかった。
ぞくぞくする。団長の稽古を受けている時みたいに。
格上の相手との、稽古。
ああ、楽しい!
真正面から、踏み込んだ。上段から降り降ろす。下からすっと腕を上げて剣を滑らせていなされた。
横に身体がずれて隙ができる。
その瞬間剣を押されてよろめいた。剣先が首筋めがけて打ちおろされる。
転がって逃げた。起き上がると目の前にヒューが立っていた。
打ちおろされる剣を受け止める。重い!
何とか返してやや斜めから打ちおろす。何度か打ち合って鍔迫り合いになる。
俺は必死になっているのに、対するヒューは涼しい顔をしていた。
手加減されている、と感じた。
それはそうだ。俺よりずっと格上なのだから。きっと稽古を付けるつもりで、この模擬戦を提案したんだろう。
ならば俺は、ヒューをよく観察して、技を盗む。視線の先、身体の使い方。技の出し方。呼吸。
ヒューは魔術師なのに、何でこんなに凄い剣士なんだろう。俺も同期になら、強いと言われるほうなのに。敵わない。力も技量も。経験が多分全然違う。
ヒューは俺にとどめは刺さず、長く打ち合いをしてくれた。そうして俺の体力の限界まで付き合ってくれたのだった。
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