アクアミネスの勇者~エロゲ―を作ったら異世界に転移してしまいました~

佐倉真稀

文字の大きさ
上 下
62 / 67
本格始動

第61話 魔法の授業②

しおりを挟む
 30分くらいのインターバルを取って、訓練所に一同が揃う。問題児達もちゃんとやってきていた。
 ふふ、欲しかろう。アイテムボックス!

「さてー。自分の適性属性がわからない人はいるか?…いないようだな。で、さっきのテキストに全属性の初級魔法の発動の仕方が書いてあったけど、持ってきた?」
 皆しぶしぶテキストを出す。

 なんでかな。わかりやすく書いたのに。
「では―今から見本を見せるから。真似して発動練習。魔力は加減しろよ。」
 そう言って俺は属性ごとの初級魔法を見せる。全属性を見せ終わったあとは皆がぽかんとしていた。
「おい。余りの見事な魔法に見惚れるのはわかるが練習しないとアイテムボックスは……」

「やっぱりラビちゃん先輩、全属性だった!?」
「すげーよ。さすがラビちゃん先輩!! 勇者がいるぞー!」
「おい、こら、詰め寄るな!!」
 しばらく後半組にもみくちゃにされた。

 落ち着いた後、訓練再開。俺は見回っているだけだ。田村さんが薬師……瀬川有希にいろいろ教えてるようだ。
 中々うまく発動しない田中哲夫さんと鈴木啓太さんが、脳筋の中学生に教わってる様子はなんか、ゲームを教え合う子供と親に見えなくも…さすがに可哀想か。
 女子組は上手くやっているようだ。
 意外なのはガッキ―チームと坂上智樹抜きの3人。楽しそうに話しているじゃないか。

 訓練しろよ。やらないぞ。

 そして、坂上智樹は仕方なく、一人で炎魔法の初級魔法を発現させていた。威力はある。だが細かい制御が効いていない。

「もうちょっとイメージを固めて放ってみるといいよ。ラノベによくあるだろう? ゲームのエフェクトみたいにさ。炎と火がどう違うか、考えるといい。」

 俺はアドバイスをしたのだが、面白くなさそうな顔していた。まあ、仕方ない。同じ日本人なのに俺は偉そうだもんな。

「……ああ。」
 ぼそっと聞こえるか聞こえないかの、呟きが聞こえた。地面を睨みつけて、そこに炎の魔法陣が展開する。さっきよりは綺麗な歪みのない魔法陣だった。
 俺は少し感心した。
 もしかしたら意外と更生するんじゃないか?

 そして魔法の授業はどちらかというと、楽しいレクリエーションのような雰囲気になっていた。
 皆魔力量が底上げされてる関係で、すぐに尽きるということはないから時間いっぱい魔法を使っていた。

 ちゃんと参加して俺の言うこと聞いて頑張ったようなので、全員にアイテムボックスは配りましたとも!!

「これがその……アイテムボックス、ですか?」

 アーリアには特別版をプレゼントした。指輪型と腕輪型。腕輪型には大きめの魔石を付けてあるから指輪の十倍は収納できる。時間経過もオンオフつき。家一軒くらい入ります。後悔はしていない。装飾も凝った物にした。

 ああ、でも王女が荷物持って歩きまわることはないから、いらなかったかな……。
「そう。いっぱい入るよ。素材集めの時に凄く重宝すると思う。手ぶらで旅行にいけるよ。それに魔力を流して。アーリアしか取り出せないようにするから。」
 アーリアは言われたとおりに魔力を流した。
「これでいいんですね。嬉しい。アキラ様の手作りの腕輪と指輪なんて…」
 あ、感極まってる。照れるな。
「気に入ってくれて何よりだよ。ドロップ品の魔法袋なんだけれど、やっぱり国に渡した方がいいかな?世界に一つしかないんだったら俺が持ってても仕方ないしな。」
 アーリアはしばらく考えていたようだったが頷いた。
「わかりました。その方が安全といえば安全ですね。早速明日にでもお父様に報告いたします。」
 にこにこと指輪と腕輪を装備するアーリアは眼福だった。
「それで、今日一日いかがでしたか? 私が見たところ初日で、お互い遠慮があるような感じでした。皆さん仲良くなってくれますでしょうか?」
 俺はアーリアの心配そうな顔に笑みを返す。
「大丈夫。午後は意外と仲良くやっていたよ。明日からちょっと密度を高めるから、喧嘩とか起きないと思うし。」
 アーリアが一瞬固まったように見えた。
「そう、ですか。皆さん頑張って……くださるといいですね。」
 俺は頷いた。
「うん。頑張らせるから大丈夫。」
 アーリアは少し口元が引きつったような笑みで頷いた。

 そして、段々負荷を重くして体づくり、基礎能力の底上げを行って、3日が過ぎた。
 事あるごとに文句を言う坂上智樹の言葉は受け流した。
 それでも、やることはやっているから俺はまだ問題はないと判断した。
 そして、バーダットから最後の一人、藤宮かのんが戻ってきた。
 戻って翌日から訓練に駆りだす。始めは目を白黒にしていたが、それでも何とか付いてきた。

 さて、彼女は精霊眼を持っているから使いこなせるようにしないといけない。
 午後、彼女の前に俺は立った。

「やっほー。ラビちゃん先輩って呼んでね。精霊眼はね、魔力切れば普通の視界になるよ。だって眩しいでしょ。キラキラしすぎちゃって。」
 あ、彼女の顔が鳩に豆鉄砲な感じになっている。
「あ、初めまして? ……藤宮かのんです。……ラビちゃん先輩? ……あの、その……何で銀髪じゃないんですか? 目も金色でしたよ、ね?」

 あ。
 ばれた?

「え、何のことかなー??」

 後ろからブーイングが聞こえた。お前ら訓練に集中しろよ。
「ラビちゃん先輩! ばらしてなかったのかよ!?」
「えー、そりゃあ……ひでーよな?」
「厨二病がひどくなってるって言わなきゃ!!」
 よーしわかった! おまえら訓練所の裏に来い!

「あー。こっちちゅうもーく。一言謝ることができた。これ、機密事項だから一般のこの世界の人には言わないでくださーい。」
 俺は手を叩いて皆の注意を引く。アイテムボックスから銀色の鬘を出して被り、目に魔力を込めた。多分、金色になってるはず。

「調査に行った、ラビです。俺はアーリア様の護衛と時々諜報部の仕事もしているから、時々消えるかもしれないけど、一か月は時間もらったから集中的に鍛えるから、覚悟よろしく。」
 前半組の面々があっけにとられた顔をしている。いや、顔の造作とか弄ってないんで気付くかなって思ってたんだけど。まじかー。ラビちゃん先輩って呼ばせてたのに。
「ま、現地の人に紛れようそのいち的な変装なんで、気にしないでくれると嬉しいなー。」
 鬘をアイテムボックスに入れて魔眼を精霊眼に変える。

「かのんちゃん、本名は宇佐見明良。よろしく。君は初日にいなかったけど、魔力制御の練習方法はタツト君から教わってるよね? それを毎日して欲しい。それと、精霊魔法の使い方、教えるからね。」

 かのんちゃんはまだ呆然としていたけど、こくりと頷いた。そして精霊に魔力を流して魔法を顕現させる方法を教えた。”眼”を使うやり方はタツト君から教わっているから助かった。

 だが一つ問題があった。皆には適性がない精霊魔法を教えているので、注目の的になったことだ。
「集中しろ。気を逸らすと魔法制御しくじることになるんだからな? そうしたら暴発、事故につながる。気を引き締めてくれ。」
 後半組はとたんに真剣になった。引きずられて他のメンツも集中し始める。
「……ラビさん……凄いですね。タツト君と同じくらい、眩しいです。」
 ん?? 何のことかな?
「眩しいって……俺にはタツト君ほど才能はないよ。」
 かのんちゃんは一瞬怪訝な顔をしたが、その後にこっと笑って魔法の練習に集中した。
「がんばります。私強くなりたいんです。」

 ああ、きっと彼女は目的を持ったのだ。この世界での生きる目的、やりがい。
 そう、前半組にはこの世界でどういうふうに生きるのか。その覚悟も、当面の目的さえない。
 “多少、力を貸してみるか。出来る範囲で。”
 そんな軽い感じでもいい。そういう思いがなければ、この世界にいることは苦痛でしかないかもしれない。

 まあ、後半組は俺が洗脳したかもしれないけれど。

 それでも生き生きとクエストをこなして、レベルアップしてくれている。感謝しかない。
 俺の勇者への思いとアーリアへの思いに協力してもらっている。

 そうして2週間が過ぎた。体力の底上げの済んだ者は冒険者ギルドに登録しに行かせた。
 王都“彷徨い人”達の冒険者生活が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜

朝日 翔龍
ファンタジー
 それはある世界の、今よりずっと未来のこと。いくつもの分岐点が存在し、それによって分岐された世界線、いわゆるパラレルワールド。これは、そ無限と存在するパラレルワールドの中のひとつの物語。  その宇宙に危機を及ぼす脅威や魔族と呼ばれる存在が、何度も世界を消滅させようと襲撃した。そのたびに、最強無血と謳われるレジェンド世代と称されたデ・ロアーの8人集が全てを解決していった。やがては脅威や魔族を封印し、これ以上は世界の危機もないだろうと誰もが信じていた。  しかし、そんな彼らの伝説の幕を閉ざす事件が起き、封印されていたはずの脅威が蘇った。瞬く間に不安が見え隠れする世界。そこは、異世界線へと繋がるゲートが一般的に存在し、異世界人を流れ込ませたり、例の脅威をも出してしまう。  そんな世界の日本で、実験体としてとある施設にいた主人公ドンボ。ある日、施設から神の力を人工的に得られる薬を盗んだ上で脱走に成功し、外の世界へと飛び出した。  そして街中に出た彼は恐怖と寂しさを覆い隠すために不良となり、その日凌ぎの生き方をしていた。  そんな日々を過ごしていたら、世界から脅威を封印したファイター企業、“デ・ロアー”に属すると自称する男、フラットの強引な手段で険しい旅をすることに。  狭い視野となんの知識もないドンボは、道中でフラットに教えられた生きる意味を活かし、この世界から再び脅威を取り除くことができるのであろうか。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...