アクアミネスの勇者~エロゲ―を作ったら異世界に転移してしまいました~

佐倉真稀

文字の大きさ
上 下
24 / 67
後発組集結

第23話 訓練の日々

しおりを挟む
 結局“坂上智樹”が炎の魔法で壊した訓練施設は、1ヶ月ほど修繕に時間がかかり、俺達、後発組の訓練施設を使うことになっていた。
 俺達は魔法訓練の施設を、魔術師団の合間に借り受けることになった。その他の時間は、王都の森での冒険者ギルドの依頼消化。戦闘訓練も兼ねての魔物討伐を行うことにした。

 実戦レベルの訓練は能力を伸ばす。レベルも上がる。“彷徨い人”の身体能力の向上は、この世界の人間とはケタが違った。
“勇者の卵”という称号は「レベル×2000」という値を、能力値に加算する。

 たとえばレベル10でHP1000であれば+20000。
 HP21000ということになる。それが全ステータスに加算される。
 多少の身体能力の差は、レベルによって解消されてしまう。
 だから後衛向きの人間も近接でもレベル差によっては、戦えてしまう結果になる。
 更に“創造神の加護”は、レベルが上がる時の経験値を倍加する。

 この経験値は誰にも見えないが存在する。
 俺が【神眼】を使って称号や加護の意味を調べた結果だ。
 この結果を他の人間には言ってはいない。俺の持つ能力も隠蔽後の能力を晒しただけだ。
 言っても混乱を招くだろうと思ったからだ。

 特に“坂上智樹”に知られてはいけないだろう。
 なんとなくだが、そう思った。
“炎の賢者”という称号は、“すべてを焼き尽くす炎を知りつくすもの”という意味だ。
 火魔法の上位魔法、炎の魔法なら全て習得でき、使うことができる。
 魔力もレベルが上がっていけば、彼が極大魔法まで使うことは可能だ。危険すぎる。
 現に今の彼の魔力でも訓練場を、破壊しつくしたということなのだから。

 ただ、“邪王”に対しては弱いかもしれない。
 水峰のシナリオのクライマックスで勇者が“邪王”に対抗しえた力は聖剣の力と、聖属性。
 女神の力に最も近い属性だったという記述があった。
 それが、全ての魔力を奪い尽くす“邪王”に対抗する切り札であったなら、聖属性を持つ者の方が、“勇者”に近いかもしれない。

 俺の能力は他の勇者と比べて桁違いだ。それくらいの自覚はある。だが、俺が勇者になるのかといえばそうではない気がする。

 俺の職業、“語り部”、物語を伝える者、紡ぐもの、読み取る者とあった。
 物に触れたり、人を視た・・りした時、その状況や過去の記憶、心象までも読み取ることができた。やばい能力なので隠している。

 下手をするとその人物の今まで生きてきた諸々の記憶をすべて覗くことができてしまうからだ。
 所謂、“サイコメトリ”の強化版だ。

 また、固有能力、“奇術師”、“トリックスター”ともある。人を驚かせる者、器用な者、幻想を操る者、ひっかきまわす者という意味だった。
 隠蔽、幻想の魔法、精神干渉系の魔法、器用さ、速さの能力値にプラス効果などが今判明している能力だ。
 ゲームで言う“斥候”や、“忍者”のスキルや能力の習得が容易いということだ。

 俺は”彷徨い人”の能力を“ 視て・・”なんとなく思ったのは、日本での生活で修得したものが能力として付加される傾向がある、ということ。

 たとえばガッキ―。彼は進学校に通い、偏差値が高い。INTの値が高かった。
 ハジメはサッカーをしていて走るのが速かった。頭より運動で元より脳筋。
 しんちゃんは、ダーツをやったことがあり、的を狙うことが得意だった。

 だから俺に“情報処理”という能力があるのだろうか。これは“分析”、“解析”、“並列思考”、“高速演算”という能力が判明している。

 これと“神眼”、全ての魔眼を使えるという全てを見抜く眼、という能力を組み合わせて、俺はマルティナの魔法を解析、使えるようにした、というわけだ。コピーとも少し違う。ただ、無から作るわけではないので改良はできても創造はできない。

“地図マップ”は“探索眼サーチアイ”の能力の一部だ。“索敵”・“気配探知”スキルと合わせると相当な情報を得ることができる。
 スキルが多すぎて使えるようになるまでが長かったし、まだ確認してない能力もあるけど。
 とりあえずは今の能力をあげる方向で俺自身の鍛錬をしている。最近ようやくカディスから5本に1本は勝ちを拾えるようになれたしな。

「ひー!!勘弁して下さい!!」
「死ぬー!!」
「まだまだ!悲鳴あげるなら余裕あるよなー。ハイあと100周。ダッシュで10分で終えろよー」
「ひいいいいいい」
「誰だ―文句言ったの!! とばっちりだー!!」

 ……などと俺が走りながら考え事してると、後ろが騒がしい。朝の訓練の基本、”走って体力をつける”の最中だった。
 100周追加ね。
 とりあえず一番最初に終えてストレッチから、素振りに入る。
 ただ俺はこれという得物が見つけられず、片手剣と短剣、ナイフ、を主に使っている。
 俺が素振りを一通り終えると息を切らした後発組が、座り込んでいてまたカディスに怒鳴られてた。

 それでも、最初に比べると、ずいぶんと力を付けたのは間違いない。

 そういや、先発組に早朝訓練で、出会ったことはないな。
 まさか、基本的な体力訓練してないってことないよな……。
 あ、田村さんに聞いてみよう。早朝訓練にいつも来ているし。

「早朝の走り込み?向こうはやってないですね。していたら私はこっちに参加してないですよ。」
 あ。そ、そうなんですね。おかしい、田村さんは市井に下りる一市民になるというのに、頼もしく見えるんですけど。俺、鍛えすぎちゃったかな。

「若い子が多かったし、いろいろと試行錯誤していたようでした。こっちの子たちは恵まれていますよ。私もですけどね。」
 何か含みのある眼差しで見られた。俺に期待はしないでくれ。アーリアの期待だけで、精一杯なんだから。

 結局、後発組は俺を含めて10人になった。
 パーティーは最初の3人、次に来た4人、最後に来た2人で組ませた。
 最後の合流組はやっと薬草採取を始めたばかりだ。
 この組はカディスに任せた。
 最初のガッキ―リーダー3人組は独立して、討伐依頼を受けさせている。一応俺が監視しているので危なくなったら、助けに行けるようにしている。
 4人組は俺が今引率している。魔法が得意なものが多いので、魔法特化部隊にしようと思う。

 そんな毎日を送り(もちろん諜報部の仕事も並行してこなしている)、あっという間に11月も頭の週が過ぎていた。

 そしてついに迷宮へ入る日がやってきた。

 調査が終わり、迷宮の階層は15層。バーダット魔法学院の側にある“緑の迷宮”と同じくらいの規模だ。
 調査隊はSランクパーティで行ったらしく、最終ボスは倒さず戻ったという。
 魔物分布は1~5までが王都の森に出没する魔物とほぼ同じ、6~10は植物、昆虫系、罠もある。
 11~15はアンデット系ということだった。

 5の数字の階はフロアボスがいる。
 フロアボスを倒すと転移陣がある場所に向かう扉が現れ、下の階層への道、戻るための転移陣に登録ができる。
 帰りの転移陣を抜けると迷宮の入口に戻る。
 その状態で再び迷宮の入口から中に入ると、入ってすぐの何もなかった場所に扉が出現し、以降そこを使えるようになるということだった。

 何それ、ゲームみたい。セーブポイントってことだろ?

 ただ、死んでも生き返るということはないらしく、死ぬ可能性があることは覚悟しなければならなかった。
 また発見されてない罠や強力な魔物のいる可能性もあるので、地上の編成とは変え、安全第一に挑戦することになった。
 チームを二つに分け、一日置きで交替し俺とカディスが付く。
 田村さんも数合わせに入ってもらい、回復役のいないチームに参加してもらう。5人パーティープラス2だ。
 挑戦しないチームは通常の訓練と冒険者活動だ。引率はフリネリアか、グレイナーになる。

 さて、装備は整えた。

 いよいよ迷宮に挑戦だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮
ファンタジー
妻に先立たれた 後藤 丈二(56)は、その年代に有りがちな、家事が全く出来ない中年男性。 独り身になって1年ほど経つ頃、不摂生で自分も亡くなってしまう。 が、気付けば『切り番当選者』などと言われ、半ば押しつけられる様に、別の世界で第二の人生を歩む事に。 再び妻に巡り合う為に、家族や仲間を増やしつつ、異世界で旅をしながら幸せを求める…………話のはず。 独自世界のゆるふわ設定です。 誤字脱字は再掲載時にチェックしていますけど、出てくるかもしれません、すみません。 毎日0時にアップしていきます。 タグに情報入れすぎで、逆に検索に引っかからないパターンなのでは?と思いつつ、ガッツリ書き込んでます。 よろしくお願いします。 ※この話は小説家になろうさんでアップした話を掲載しております。 ※なろうさんでは最後までアップしていますけど、こちらではハッピーエンド迄しか掲載しない予定です。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜

朝日 翔龍
ファンタジー
 それはある世界の、今よりずっと未来のこと。いくつもの分岐点が存在し、それによって分岐された世界線、いわゆるパラレルワールド。これは、そ無限と存在するパラレルワールドの中のひとつの物語。  その宇宙に危機を及ぼす脅威や魔族と呼ばれる存在が、何度も世界を消滅させようと襲撃した。そのたびに、最強無血と謳われるレジェンド世代と称されたデ・ロアーの8人集が全てを解決していった。やがては脅威や魔族を封印し、これ以上は世界の危機もないだろうと誰もが信じていた。  しかし、そんな彼らの伝説の幕を閉ざす事件が起き、封印されていたはずの脅威が蘇った。瞬く間に不安が見え隠れする世界。そこは、異世界線へと繋がるゲートが一般的に存在し、異世界人を流れ込ませたり、例の脅威をも出してしまう。  そんな世界の日本で、実験体としてとある施設にいた主人公ドンボ。ある日、施設から神の力を人工的に得られる薬を盗んだ上で脱走に成功し、外の世界へと飛び出した。  そして街中に出た彼は恐怖と寂しさを覆い隠すために不良となり、その日凌ぎの生き方をしていた。  そんな日々を過ごしていたら、世界から脅威を封印したファイター企業、“デ・ロアー”に属すると自称する男、フラットの強引な手段で険しい旅をすることに。  狭い視野となんの知識もないドンボは、道中でフラットに教えられた生きる意味を活かし、この世界から再び脅威を取り除くことができるのであろうか。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

処理中です...