モブの俺が巻き込まれた乙女ゲームはBL仕様になっていた!

佐倉真稀

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ヘリスウィル・エステレラの章(第二王子殿下視点)

ヘリスウィル・エステレラ~冒険者活動と野営訓練~

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 ロシュから冒険者同好会に入るという報告を受けた。
 フローラが「面白そうね!私も入りたい!」と言うので私も入ることになった。
 セイアッドとノクス、シムオン、フィエーヤにアナトレー帝国のリールもいた。
 リールはセイアッド達と仲が良い。どうせならとお茶会に呼んだ。
 フローラのことを紹介して親睦を深めるためだ。
 セイアッドがリーダーで、その場にいたメンバーで、パーティーを組むこととなった。ありがたい。王族に遠慮があって、私からお願いすると強制になってしまうから。
 このメンバーだったら、私への害意は気にしなくていいはずだ。
 野営訓練のパーティーも同じメンバーで決まった。
 セイアッドとノクスはすでに冒険者活動をしていて野営にも慣れていると聞いた。
 任せてしまっていいだろう。

 そのセイアッドが招集をかけて野営訓練前にギルドの依頼を受けた。
 学院内にある冒険者ギルドで集合の後、王都近くの森での薬草採取で、基本中の基本の依頼だ。
 何故かフローラが興奮していた。

 フローラが活躍した。今回はセイアッドがパーティーの連携を経験させたくて連れてきたようだった。無事終わり報酬を全員で分けた。
 自分の手で稼いだ報酬は初めてで感慨深いものがあった。
 国民の税からではないお金。
 きっと使えない。
 そのお金はそっと宝箱にしまった。

 セイアッドのリーダーぶりは優秀で、指揮も問題なかった。ノクスの腕はずいぶんと上がっていたし、他の面々も最初はまごついていたが慣れるにしたがって動きが良くなっていた。フローラは魔法でも弓でも活躍した。
 ロシュも、索敵ができるようになっていた。
 そしてそれは何回か行われて、野営訓練の日になった。

 セイアッドが指示を出して粛々と野営地を探して森を歩いた。

『月の神の神子は優秀だ』

 ご満悦のようだった。

 ロシュは斥候の役目を務めた。ハンドサインを使うのはセイアッドの指示だ。森で声を出したら獲物が逃げると真顔で言って覚えるまで寮に帰らせてはくれなかった。
 セイアッドとノクスは森歩きに相当慣れていた。
 音のしない防具を身に着けていて、足音もさせない。
 邪魔になる枝葉を払うのも音を最小限にして行っていた。10歳になった途端冒険者登録をしたのなら5年近く経験があるということだ。

 現れる魔物を討伐しつつ、野営予定の場所まで来た。私はほっと息を吐いて周囲を見た。
「順調だったな。まだ昼前だ」
 気を抜いた私がそう言うと、セイアッドが緊張を解かない口調で指示を出した。
 まずテントを設置した。煮炊きを行う竈を素早く作り、セイアッドが料理をした。
 美味しかった。
 ノクスの器が空になっているのに気付いてセイアッドはお代わりを入れる。その様子に二人の間には余人の入れない繋がりがあるのだろうと感じた。
 好きな人に美味しいものを食べさせるのが甲斐性か。
 思わずセイアッドを見る。
 そう言えばロシュも美味しいものを食べるときは幸せそうな顔をしていた。

「私も料理ができるように頑張ろうと思う。帰ったら料理長に相談してみる」
 とりあえずもう一杯食べたい。
 そうしたらみんなお代わりを要求してセイアッドの顔が引きつっていた。
 フローラは楽しそうに笑っていた。
「私も手伝ったのに。やっぱりセイアッド君はもてるのね」
 とぼそっと呟いていた。
 夕飯は有言実行のノクスが頑張った。どんなものができるのかと思ったら普通だった。そう、普通だった。もう少し、何か驚きが欲しかった。

 夜は順番で見張りをする。
 ロシュに起こされて、シムオンと一緒に見張りだった。火が消えないよう乾いた枝を足した。
「殿下はセイアッドが好きなのか?」
 急に聞かれてびくりとした。好き、と言えば好きだ。

「それともロシュか?」
「急にどうしたんだ?」
「いや。その、俺はあいつらがいない時も殿下のお茶会行ってただろ? その時は殿下はロシュが好きなんだろうって思っていたんだよ」
「は?」
「違うの? ロシュは殿下とカフェに行ったとき、物凄く喜んで俺にいろいろ話してくれたけど、それはただ単に友人としてだった?」
「……」
「ああ、俺の気のせいならいいよ。ただ、俺もロシュと親しいから、ロシュが悲しむのは嫌だなと思っただけだよ。忘れてくれるか」
「……ああ」

『赤毛より、月の神の神子のほうが大切に決まってる』

 決まってない。そんなはずない。

 それからは黙って見張りに専念した。

 翌日は順調だったはずが、学生に対処できない魔物と遭遇した。
 だが、セイアッドとノクスの活躍で事なきを得た。
 皆の連携もよかった。

 倒したマーダーベアは騎士団に回収され、素材も何も手元に残らなかったため、皆が不満げだった。
 リールが腕をくすねていたのがわかり、私は慌てて回収した。
 父に頼んで倒した皆に何か褒美をいただきたいと願った。

 ダメかと思われたが後日、討伐の褒美のメダルと素材を使った武器が下賜された。
 研究に使わない分からだということで、真に価値ある部位ではないらしいが、何もないよりはよかった。

 みんな喜んでくれてよかった。
 私は代わりに公務(書類仕事)が増えたが仕方がない。


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