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密談
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通された部屋はひときわ豪華で、本当に要人を持て成すかのような造りであった。ゲルドーシュがはしゃぎまわり、ポピッカが苦言を呈したのはいつもの事なので、詳しい話は割愛する。
皆は備え付けのお茶のセットを利用して、暫しの歓談を楽しんだ。その後、ボクはザレドスに耳打ちする。
「どうですか? 何か気になる点は」
「今のところは大丈夫です。ただ残念ながら、保証は出来ません」
ザレドスも、声を落として応対した。
「よぉ、何だよ、内緒話かい?」
ゲルドーシュが、割って入ってくる。
「じゃぁ、念のため……」
戦士の問いには答えず、ボクは最小限のジェスチャーで結界を張った。透明に近いとばりが、ソファーに身を委ねた四人の周りへと降りて来る。
「ん、何だよ。何が起こったんだ」
ゲルドーシュが、怪訝な顔をした。
「遮音結界をはったんだよ。ただし、中の音は外へ漏れないけど、外の音はちゃんと聞こえるように調整した」
「どうして?」
「外に聞こえちゃ、まずいからに決まってますわ」
ポピッカの答えにゲルドーシュは、ますます混乱をきたしたようだ。
「なんだ?また俺だけ仲間外れってか?ちゃんと説明しないと、この結界ぶっこわしちまうぞ」
それが本気でない事は分かっていたが、ボクは無垢な戦士に説明を始める。
「なぁ、ゲルドーシュ。今、ボクたちは凄く微妙な立場にいるんだよ。ゼットツ州の連中にしたって、混乱しきりだろうしさ。事態がどう動くかはわからない」
「まぁ、さすがに暗殺って事はないでしょうがね」
ザレドスが、物騒な話を付け加える。
「……って、おい!意味が全然わかんねぇぞ」
細工師の答えに、事の重大性を少しずつ認識し始めるゲルドーシュ。
「まず、結界を張った理由を話そう。ポピッカさんが言ったように、結果的には、こちらの話を聞かれないようにする為なんだ」
「ん~……。って事は、誰かがドアの外で聞き耳を立てていたり、盗聴する魔使具が仕掛けられてるって事なのか?」
「それは一応調べましたが、完全に無いとは言い切れないんですよ。何せ分析する為のデータが余りにも不足していますし、大っぴらにアッチコッチひっくり返して探すのも気が引けますしね」
ボクの答えをザレドスが引き継ぐ。
「いやまて、そもそも何でゼットツ州の連中が、俺たちの話を盗聴する可能性があるんだよ?俺たちは、しっかり依頼をこなしたはずじゃんか」
戦士の疑問は、"普通の状況"なら至極当然である。
「普通はね。だけど今回の探索、予想外の事が幾つもあったろう。州付きの魔法使いが犯人だった事。最深部の奥には結局は何もなかった事、魔獣が出た事、抜け穴があった事」
ボクは自ら復習するかのように、ゲルドーシュへ話して聞かす。
「まぁ、確かにそうだな」
一応の理解を示すゲルドーシュ。
「その事はさ、ゼットツ州にとっては凄く”マズい事”だとは思わないかい?」
皆は備え付けのお茶のセットを利用して、暫しの歓談を楽しんだ。その後、ボクはザレドスに耳打ちする。
「どうですか? 何か気になる点は」
「今のところは大丈夫です。ただ残念ながら、保証は出来ません」
ザレドスも、声を落として応対した。
「よぉ、何だよ、内緒話かい?」
ゲルドーシュが、割って入ってくる。
「じゃぁ、念のため……」
戦士の問いには答えず、ボクは最小限のジェスチャーで結界を張った。透明に近いとばりが、ソファーに身を委ねた四人の周りへと降りて来る。
「ん、何だよ。何が起こったんだ」
ゲルドーシュが、怪訝な顔をした。
「遮音結界をはったんだよ。ただし、中の音は外へ漏れないけど、外の音はちゃんと聞こえるように調整した」
「どうして?」
「外に聞こえちゃ、まずいからに決まってますわ」
ポピッカの答えにゲルドーシュは、ますます混乱をきたしたようだ。
「なんだ?また俺だけ仲間外れってか?ちゃんと説明しないと、この結界ぶっこわしちまうぞ」
それが本気でない事は分かっていたが、ボクは無垢な戦士に説明を始める。
「なぁ、ゲルドーシュ。今、ボクたちは凄く微妙な立場にいるんだよ。ゼットツ州の連中にしたって、混乱しきりだろうしさ。事態がどう動くかはわからない」
「まぁ、さすがに暗殺って事はないでしょうがね」
ザレドスが、物騒な話を付け加える。
「……って、おい!意味が全然わかんねぇぞ」
細工師の答えに、事の重大性を少しずつ認識し始めるゲルドーシュ。
「まず、結界を張った理由を話そう。ポピッカさんが言ったように、結果的には、こちらの話を聞かれないようにする為なんだ」
「ん~……。って事は、誰かがドアの外で聞き耳を立てていたり、盗聴する魔使具が仕掛けられてるって事なのか?」
「それは一応調べましたが、完全に無いとは言い切れないんですよ。何せ分析する為のデータが余りにも不足していますし、大っぴらにアッチコッチひっくり返して探すのも気が引けますしね」
ボクの答えをザレドスが引き継ぐ。
「いやまて、そもそも何でゼットツ州の連中が、俺たちの話を盗聴する可能性があるんだよ?俺たちは、しっかり依頼をこなしたはずじゃんか」
戦士の疑問は、"普通の状況"なら至極当然である。
「普通はね。だけど今回の探索、予想外の事が幾つもあったろう。州付きの魔法使いが犯人だった事。最深部の奥には結局は何もなかった事、魔獣が出た事、抜け穴があった事」
ボクは自ら復習するかのように、ゲルドーシュへ話して聞かす。
「まぁ、確かにそうだな」
一応の理解を示すゲルドーシュ。
「その事はさ、ゼットツ州にとっては凄く”マズい事”だとは思わないかい?」
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