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要塞
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車窓から見える街並みは、明らかに最初に訪れた場所とは違う。何かこう、物々しいというか、カッチリしているのだ。華やかさとはまるで縁がない。また逆に寂れているというわけでもない。
とある建物の前に停車した大型ビークルから、役人たち、ボクたち、軍人たちと続いて降車した。空には夕日が妖しく揺らめいている。
「おう、なんだい。ここは前に来たところとは違うなぁ」
今頃気が付いたゲルドーシュが、不思議そうな顔をした。それを見て苦笑するザレドス、いかにも機嫌の悪そうなポピッカ、まぁいつもの事だよという顔をするボクがいる。
「さぁ、どうぞこちらです」
一層他人行儀な役人の先導のもと、ボクたちは”如何にも”といった建物に入った。何故、如何にもという感じがしたかというと、見るからに防御の硬い、要塞とまでは言わないが、明らかに要人が逗留するような建造物なのである。
「おっ、こりゃまるで要塞だ。外から何が来てもビクともしねぇぞ」
ゲルドーシュが、辺りをキョロキョロと見回す。だがゲルドーシュよ、気づいているかい? それは中からも、脱出しづらい構造だという事を。
「もう、ゲルったら、子供みたいな事をするもんじゃありませんわ」
既にどこか、口うるさい姉になったような口調で弟をたしなめるポピッカ。
「よう、ポピッカ。おめぇ、いつから俺の母親になったんだ?」
「永遠になるつもりなんてありませんわよ!」
ダンジョンを出て、初の漫才披露ってところのようだ。
建物に入るとロビーらしい広間に出たが、明らかに通常の宿泊施設とは違う。侵入者に対応するためと思しき設備が、其処此処にある。
「やぁ、冒険者の皆さん。今回は本当にお疲れさまでした。そして皆さんを苦しめたのが、州の関係者だった事を心からお詫びします」
ロビーの中央付近で待っていた、背の高い中年の紳士がボクたちを出迎えた。
「私の名は、ラジュファム。この施設の責任者を務めております。まずはお部屋の方にお越しいただいて、ゆっくりと体を休めて下さい。これからの話は、明日になってからと致しましょう」
隙のない礼節をもって、ボクたちを歓待するこの男。眼鏡の奥に光る鋭い目つきは、明らかに他の小役人とは違う、全くもって、気を許す事の出来ない人物のようだ。
「君は、もういいから」
ラジュファムが、ボクたちを連れて来た役人を一瞥すると、彼は半ば怯えた様子で一目散に何処かへ消えていった。
「さぁ、皆さんをお部屋へ」
ボクたちは州兵の隊長に軽く挨拶をしたあと、彼の命を受けたスタッフに大人しくついていく。この従業員も一癖程度はあるように見えた。単なる宿泊施設のスタッフではあるまい。
やがてボクたちは、豪華な、しかしとても頑丈そうな造りのドアの前へと案内された。
「こちらが、皆さんにお使いいただくお部屋となります。中には続き部屋へのドアがありますので、ポピッカさまはそちらでお休みください」
ただ者ではないスタッフは、部屋の設備の一応を解説してドアの外へ姿を消した。
「さあってと、これからだな」
ボクが呟くと、ゲルドーシュ以外の二人が緊張した面持ちを取り戻す。
とある建物の前に停車した大型ビークルから、役人たち、ボクたち、軍人たちと続いて降車した。空には夕日が妖しく揺らめいている。
「おう、なんだい。ここは前に来たところとは違うなぁ」
今頃気が付いたゲルドーシュが、不思議そうな顔をした。それを見て苦笑するザレドス、いかにも機嫌の悪そうなポピッカ、まぁいつもの事だよという顔をするボクがいる。
「さぁ、どうぞこちらです」
一層他人行儀な役人の先導のもと、ボクたちは”如何にも”といった建物に入った。何故、如何にもという感じがしたかというと、見るからに防御の硬い、要塞とまでは言わないが、明らかに要人が逗留するような建造物なのである。
「おっ、こりゃまるで要塞だ。外から何が来てもビクともしねぇぞ」
ゲルドーシュが、辺りをキョロキョロと見回す。だがゲルドーシュよ、気づいているかい? それは中からも、脱出しづらい構造だという事を。
「もう、ゲルったら、子供みたいな事をするもんじゃありませんわ」
既にどこか、口うるさい姉になったような口調で弟をたしなめるポピッカ。
「よう、ポピッカ。おめぇ、いつから俺の母親になったんだ?」
「永遠になるつもりなんてありませんわよ!」
ダンジョンを出て、初の漫才披露ってところのようだ。
建物に入るとロビーらしい広間に出たが、明らかに通常の宿泊施設とは違う。侵入者に対応するためと思しき設備が、其処此処にある。
「やぁ、冒険者の皆さん。今回は本当にお疲れさまでした。そして皆さんを苦しめたのが、州の関係者だった事を心からお詫びします」
ロビーの中央付近で待っていた、背の高い中年の紳士がボクたちを出迎えた。
「私の名は、ラジュファム。この施設の責任者を務めております。まずはお部屋の方にお越しいただいて、ゆっくりと体を休めて下さい。これからの話は、明日になってからと致しましょう」
隙のない礼節をもって、ボクたちを歓待するこの男。眼鏡の奥に光る鋭い目つきは、明らかに他の小役人とは違う、全くもって、気を許す事の出来ない人物のようだ。
「君は、もういいから」
ラジュファムが、ボクたちを連れて来た役人を一瞥すると、彼は半ば怯えた様子で一目散に何処かへ消えていった。
「さぁ、皆さんをお部屋へ」
ボクたちは州兵の隊長に軽く挨拶をしたあと、彼の命を受けたスタッフに大人しくついていく。この従業員も一癖程度はあるように見えた。単なる宿泊施設のスタッフではあるまい。
やがてボクたちは、豪華な、しかしとても頑丈そうな造りのドアの前へと案内された。
「こちらが、皆さんにお使いいただくお部屋となります。中には続き部屋へのドアがありますので、ポピッカさまはそちらでお休みください」
ただ者ではないスタッフは、部屋の設備の一応を解説してドアの外へ姿を消した。
「さあってと、これからだな」
ボクが呟くと、ゲルドーシュ以外の二人が緊張した面持ちを取り戻す。
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