よろず魔法使いの日記帳 【第一部 ダンジョンの謎】

藻ノかたり

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根拠の披露

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「もちろんですわ。スタンは、迷宮の見取り図にヒントがあるって言ってましたわよね。それでつぶさに確認したところ、地下4階の安全地帯の位置に違和感を覚えましたの」

「おぉ、あなたもそうでしたか。実は私も、そこに目が留まりました」

「だ、だから、それが何だってんだよ」

僧侶と細工師の連合軍に、戦士がはかない抵抗を試みる。

「見取り図を確認すると、地下8階の大広間を覗いては、各階の構造はかなり似通っていますよね。まぁ、比較的近代に作られたダンジョンのようですから、侵入者を迷わせるという意図はなく、権力者の力の象徴といったモニュメンタル的な傾向が強いダンジョンだと思うので、それは当然なのですがね」

「で、それがどうしたわけさ」

ザレドスの適格だが、ややまわりくどい説明に戦士はイラつき始める。

「明るい所に出たら見取り図を確認するといいけどさ、地下4階だけ安全地帯の場所が他の階とは明らかに違う所にあるんだよ。階の構造が同じなのに安全地帯の位置が違うのってチョット不自然だろ?」

ボクは戦士をなだめるように、真相に近づけようと腐心した。

「つまりですね。抜け穴の位置に合わせて安全地帯を作ったって事だと思うんですよ」

ザレドスが、締めくくる。

「しかしここだけ違うって事なら”何か怪しいぞ”って気づかれるんじゃないのか?」

怪しさに、全く気付かなかったゲルドーシュが食い下がる。

「まぁ、抜け穴があると、最初からわかっていたらそうだろうね。だけどそんな事を夢にも思わなかったら、わからないかもよ。

隊長さん、安全地帯をどこに作るかは誰が決めたですか?」

ボクの問いに、一瞬押し黙った隊長が応える。

「それがですね。実質的にはあの男、ガスラムといって良いと思うんですよ」

八割方わかっていた答えが返って来た。

「権限を持っているのは技師だったり現場監督なんですが、とにかく奴は人に取り入るのがうまい。何だかんだ言って、自分の思い通りにさせていたようです」

妨害者は、人の心理を巧みにつく術を持っている。それは皆も知る所なので、隊長の話もすんなりと受け入れる事が出来た。

「それにさ、当たり前の話だけど、安全地帯は、あくまで安全な場所だとみんなが思ってるだろ? だからその場所の中を、疑いを持って調べるなんて事ありはしない。

ザレドスが探知できなかったのもその為だよ。技術的な問題でなく、心理的な問題だったってわけさ」

ボクの言葉に、多少なりとも面目を取り戻した細工師が苦笑いをする。

「あと、じゃぁ何で抜け穴のある地下4階の安全地帯に合わせて、他の階のそれも作らなかったのかっていう疑問なんだけどさ。地下4階の安全地帯って他より狭いんだよね。ダンジョンの構造的にそうならざるを得ないんだ。

だから幾ら何でも全部の階の安全地帯を同じ位置にする事には無理がある。まぁ、技師さんには上手いこと言って、地下4階だけ他とは違う場所に作ったんだろうね」

ボクの解説が終るとすぐに、隊長が口を開いた。

「さぁ、みなさん。そろそろ出口です」
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