98 / 115
答え合わせ
しおりを挟む
メンバーが見取り図と格闘し始めて、三十分くらいが経ったろうか。平穏な顔に戻った隊長がやって来た。
「お待たせしました。これから抜け穴を通って、外へご案内します。ついて来てください」
「おう、ようやっとか。待ちくたびれたぜ」
ゲルドーシュが、ヨッコラショと腰をあげる。皆もそれに続く。それぞれ予想した抜け穴の場所が、果たして当たっているかどうかわかるとあって、三人の顔は期待に満ちていた。
最下階から地下7階、6階とボクたちは来た道を戻っていく。つい先日の出来事が、もう何週間も以前のように感じられた。
「おい、まだなのかよ。抜け穴は」
地下5階まで来たところで、しびれを切らしたゲルドーシュが文句を垂れ始める。
「もう少しですよ」
隊長が穏やかに応える。そして地下4階への階段を上り、暫く行ったところで隊長の足が止まった。
「さぁ、ここです。ここに抜け穴があります」
隊長の言葉に、ボク、ポピッカ、ザレドスは納得顔であったが、ゲルドーシュだけがキョトンとした表情をしている。
「は? ここが抜け穴? 本気かよ。だってここは、この階の”安全地帯”じゃないか」
「やっぱり、ここでしたのね」
「やはりね」
不満たらたらのゲルドーシュを尻目に、僧侶と細工師が頷いた。
「おぉ、さすがですな。ここだと予測していましたか」
隊長は、もう何が起きても驚かないぞ、とばかりにニコやかに笑う。
「あぁ、案の定、壊されてますね」
ザレドスが、床に落ちている何かの破片を見て呟いた。
「壊されてるって、何が?」
ゲルドーシュが、ザレドスの視線の先を追う。
「安全地帯の前に設置した、ダミーの魔使具ですよ。妨害者をけん制する為に、各階の安全地帯の前に設置したでしょ」
「あれ? でも、それはおかしいですわね。ダミーとは言っても、誰かが近づけばザレドスが持っている受信機からアラームが鳴る仕掛けなのでは?」
ポピッカの指摘に、ボクも頷いた。
「それなんですがね。さっき確認したら受信機が壊れているようなんですよ。多分、あの時……。ほら、魔獣戦の際にゲルが私を思いっ切り投げ飛ばしたでしょう?」
ザレドスの解説に皆、納得する。
なるほど。だから妨害者がこの安全地帯を通った時に、何も反応がなかったわけだ。まぁ、妨害者にしてもボクたちの死は確実だと思っていただろうから、遠慮なくダミー魔使具を壊したって事だろう。
「それで兵隊たちが外から来て、ここを通っても、アラームが鳴らなかったんだな」
ゲルドーシュが、すかさず考えを巡らした。
皆の会話をひとしきり聞いた後、隊長が安全地帯へのゲートを開き、全員がその中へと入っていく。
そうすると、どうだろう。部屋の一番奥にある戸棚がどかされており、その後ろの石壁が、扉のように開いていた。恐らく扉を閉めれば壁の一部の様に見えるに違いないし、再び開ける為には何らかの仕掛けがあるとみえる。
「さぁ、どうぞ。少し暗いので足元に気を付けて」
注意を促す隊長の後に続き扉を通り抜けると、そこには薄暗い空間が広がり、少し先には上へと昇る階段が設置されていた。
「はぁ~、こんなものが……」
細工師の性が頭をもたげたかのように、ザレドスの目はキラキラと輝いている。きっと後で隊長に頼み込み、詳しく調べさせてもらうんだろうな。
階段室には幾つかの照明用の魔使具が設置されており、それは青白い灯火を放っていた。ボクたちは階段を踏み外さないよう、慎重に地上への通路をひたすら昇る。
「ところでよ。みんなは抜け穴の場所を分かってたようだけど、なんでわかったんだ?」
自分だけ抜け穴の場所を見抜けなかったゲルドーシュが、素直な疑問をぶつけてきた。
「まだわかりませんの? 相変わらずノンビリとした脳みそを持っていらっしゃるわね」
「おいこら、ふざけた事を言ってんじゃねぇぞ。ならどうしてお前にはわかったのか、納得のいく説明をしてもらおうじゃねぇか?」
ポピッカの悪態に、戦士がさっそく応戦する。
「お待たせしました。これから抜け穴を通って、外へご案内します。ついて来てください」
「おう、ようやっとか。待ちくたびれたぜ」
ゲルドーシュが、ヨッコラショと腰をあげる。皆もそれに続く。それぞれ予想した抜け穴の場所が、果たして当たっているかどうかわかるとあって、三人の顔は期待に満ちていた。
最下階から地下7階、6階とボクたちは来た道を戻っていく。つい先日の出来事が、もう何週間も以前のように感じられた。
「おい、まだなのかよ。抜け穴は」
地下5階まで来たところで、しびれを切らしたゲルドーシュが文句を垂れ始める。
「もう少しですよ」
隊長が穏やかに応える。そして地下4階への階段を上り、暫く行ったところで隊長の足が止まった。
「さぁ、ここです。ここに抜け穴があります」
隊長の言葉に、ボク、ポピッカ、ザレドスは納得顔であったが、ゲルドーシュだけがキョトンとした表情をしている。
「は? ここが抜け穴? 本気かよ。だってここは、この階の”安全地帯”じゃないか」
「やっぱり、ここでしたのね」
「やはりね」
不満たらたらのゲルドーシュを尻目に、僧侶と細工師が頷いた。
「おぉ、さすがですな。ここだと予測していましたか」
隊長は、もう何が起きても驚かないぞ、とばかりにニコやかに笑う。
「あぁ、案の定、壊されてますね」
ザレドスが、床に落ちている何かの破片を見て呟いた。
「壊されてるって、何が?」
ゲルドーシュが、ザレドスの視線の先を追う。
「安全地帯の前に設置した、ダミーの魔使具ですよ。妨害者をけん制する為に、各階の安全地帯の前に設置したでしょ」
「あれ? でも、それはおかしいですわね。ダミーとは言っても、誰かが近づけばザレドスが持っている受信機からアラームが鳴る仕掛けなのでは?」
ポピッカの指摘に、ボクも頷いた。
「それなんですがね。さっき確認したら受信機が壊れているようなんですよ。多分、あの時……。ほら、魔獣戦の際にゲルが私を思いっ切り投げ飛ばしたでしょう?」
ザレドスの解説に皆、納得する。
なるほど。だから妨害者がこの安全地帯を通った時に、何も反応がなかったわけだ。まぁ、妨害者にしてもボクたちの死は確実だと思っていただろうから、遠慮なくダミー魔使具を壊したって事だろう。
「それで兵隊たちが外から来て、ここを通っても、アラームが鳴らなかったんだな」
ゲルドーシュが、すかさず考えを巡らした。
皆の会話をひとしきり聞いた後、隊長が安全地帯へのゲートを開き、全員がその中へと入っていく。
そうすると、どうだろう。部屋の一番奥にある戸棚がどかされており、その後ろの石壁が、扉のように開いていた。恐らく扉を閉めれば壁の一部の様に見えるに違いないし、再び開ける為には何らかの仕掛けがあるとみえる。
「さぁ、どうぞ。少し暗いので足元に気を付けて」
注意を促す隊長の後に続き扉を通り抜けると、そこには薄暗い空間が広がり、少し先には上へと昇る階段が設置されていた。
「はぁ~、こんなものが……」
細工師の性が頭をもたげたかのように、ザレドスの目はキラキラと輝いている。きっと後で隊長に頼み込み、詳しく調べさせてもらうんだろうな。
階段室には幾つかの照明用の魔使具が設置されており、それは青白い灯火を放っていた。ボクたちは階段を踏み外さないよう、慎重に地上への通路をひたすら昇る。
「ところでよ。みんなは抜け穴の場所を分かってたようだけど、なんでわかったんだ?」
自分だけ抜け穴の場所を見抜けなかったゲルドーシュが、素直な疑問をぶつけてきた。
「まだわかりませんの? 相変わらずノンビリとした脳みそを持っていらっしゃるわね」
「おいこら、ふざけた事を言ってんじゃねぇぞ。ならどうしてお前にはわかったのか、納得のいく説明をしてもらおうじゃねぇか?」
ポピッカの悪態に、戦士がさっそく応戦する。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

嫌われ者の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
両親に似ていないから、と母親からも、兄たち姉たちから嫌われたシーアは、歳の近い皇族の子どもたちにいじめられ、使用人からも蔑まれ、と酷い扱いをうけていました。それも、叔父である皇帝シオンによって、環境は整えられ、最低限の皇族並の扱いをされるようになったが、まだ、皇族の儀式を通過していないシーアは、使用人の子どもと取り換えられたのでは、と影で悪く言われていた。
家族からも、同じ皇族からも蔑まされたシーアは、皇族の儀式を受けた時、その運命は動き出すこととなります。
なろう、では、皇族姫という話の一つとして更新しています。設定が、なろうで出たものが多いので、初読みではわかりにくいところがあります。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

愛しくない、あなた
野村にれ
恋愛
結婚式を八日後に控えたアイルーンは、婚約者に番が見付かり、
結婚式はおろか、婚約も白紙になった。
行き場のなくした思いを抱えたまま、
今度はアイルーンが竜帝国のディオエル皇帝の番だと言われ、
妃になって欲しいと願われることに。
周りは落ち込むアイルーンを愛してくれる人が見付かった、
これが運命だったのだと喜んでいたが、
竜帝国にアイルーンの居場所などなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる