92 / 115
救出者
しおりを挟む
ボクの心の中では今、複雑怪奇な波が寄せては返している。一体どういう事なんだろうか。これから、どんな結末に到るんだろうか。現在の状況が、妨害者の罠である可能性は極めて低い。そう考えた場合、ボクたちは"助かった"事になる。
だが、そこに到る経緯が明かされない限り、完全に大丈夫とは言い切れない。ゼットツ州にとって、もちろん妨害者は"敵"であろうが、ボクたちだって味方とは言い難い"よそ者"なのだから。
軍靴の響きが次第に大きくなり、彼らが通路の曲がり角へ刻一刻と近づいて来るのが分かる。あと数秒でボクたちの運命が決まるのだ。パーティーの皆もそれは承知しているようで、不安と期待の入り混じった表情を見せていた。
そして隊列の先頭者が曲がり角の向こう側から姿を現す瞬間、ボクたちの緊張は最大限の高まりをみせる。果たして一同が目にしたもの、それはザレドスの予想通り、州兵の隊長その人であった。
ボクたちの緊張した顔と中途半端な臨戦態勢を見た隊長はすぐさま状況を理解したらしく、努めて穏やかな声でボクたちに語りかけてくる。
「パーティーの方々、まず言わせて頂こう。皆無事で本当に良かった。そしてここに宣言する。あなた方の敵は捕縛した。危機は去ったんだ」
そう言いながら中年の髭面男は、ボクたちの目の前までやって来た。こちらの警戒心を察してか、残りの兵隊たちはまだ数メートル後ろに待機している。
「捕縛? 妨害者を捕まえたってのか?」
ゲルドーシュが、たまらず声をあげる。
「妨害者?」
「あぁ、州付きの魔法使いの事ですよ。我々はそう呼んでいました。その男を捕縛したんですよね?」
隊長の疑問にザレドスが言葉を添えた。
「その通り。なるほど妨害者か、適切な表現だ、ザレドスさん」
隊長が、あご髭を撫でつける。
「それでなんだが……」
「あ、ちょっと待って」
隊長が話を続けようとするのをザレドスが遮った。
「これはダンジョンに入ってから決まったた事なのですが、このパーティーのリーダーはスタン・リンシードです。話の続きは彼とお願いします」
「なるほど、それは道理だ」
大人の礼節を示したザレドスに、隊長もすぐさま承服する
「ではリンシードさん。いっぺんに話す事は出来ないので、まずあなた方が知りたい事を幾つか言って下さい。ただ、未だこちらも混乱している状態でして、言える事と言えない事があります」
リーダー同士の話し合いの始まりにふさわしい、筋目を通したもの言いだ。ボクは皆の方を振り返る。メンバー誰しもが、ボクにまかせると目で合図をよこした。
だが、そこに到る経緯が明かされない限り、完全に大丈夫とは言い切れない。ゼットツ州にとって、もちろん妨害者は"敵"であろうが、ボクたちだって味方とは言い難い"よそ者"なのだから。
軍靴の響きが次第に大きくなり、彼らが通路の曲がり角へ刻一刻と近づいて来るのが分かる。あと数秒でボクたちの運命が決まるのだ。パーティーの皆もそれは承知しているようで、不安と期待の入り混じった表情を見せていた。
そして隊列の先頭者が曲がり角の向こう側から姿を現す瞬間、ボクたちの緊張は最大限の高まりをみせる。果たして一同が目にしたもの、それはザレドスの予想通り、州兵の隊長その人であった。
ボクたちの緊張した顔と中途半端な臨戦態勢を見た隊長はすぐさま状況を理解したらしく、努めて穏やかな声でボクたちに語りかけてくる。
「パーティーの方々、まず言わせて頂こう。皆無事で本当に良かった。そしてここに宣言する。あなた方の敵は捕縛した。危機は去ったんだ」
そう言いながら中年の髭面男は、ボクたちの目の前までやって来た。こちらの警戒心を察してか、残りの兵隊たちはまだ数メートル後ろに待機している。
「捕縛? 妨害者を捕まえたってのか?」
ゲルドーシュが、たまらず声をあげる。
「妨害者?」
「あぁ、州付きの魔法使いの事ですよ。我々はそう呼んでいました。その男を捕縛したんですよね?」
隊長の疑問にザレドスが言葉を添えた。
「その通り。なるほど妨害者か、適切な表現だ、ザレドスさん」
隊長が、あご髭を撫でつける。
「それでなんだが……」
「あ、ちょっと待って」
隊長が話を続けようとするのをザレドスが遮った。
「これはダンジョンに入ってから決まったた事なのですが、このパーティーのリーダーはスタン・リンシードです。話の続きは彼とお願いします」
「なるほど、それは道理だ」
大人の礼節を示したザレドスに、隊長もすぐさま承服する
「ではリンシードさん。いっぺんに話す事は出来ないので、まずあなた方が知りたい事を幾つか言って下さい。ただ、未だこちらも混乱している状態でして、言える事と言えない事があります」
リーダー同士の話し合いの始まりにふさわしい、筋目を通したもの言いだ。ボクは皆の方を振り返る。メンバー誰しもが、ボクにまかせると目で合図をよこした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
毒の微笑
チャイムン
恋愛
人は誰も毒を持つもの。
ギリアン子爵家の人々、当主キース、妻ヨランダ、長女アーシア、長男カッツェ、次女シンシア。
それぞれの毒。
全八話
19時更新
※2022年に書いたものです。
「恋愛」カテゴリーですが、恋愛要素はほぼありません。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
魔王がやって来たので
もち雪
ファンタジー
ある日、僕の元に現れた魔王ヤーグは、魔王としては変わり者、魔王の部下は、女の子フィーナ!←好きです。だから僕は、異世界にも行きます。
異世界へ行っても、僕は冒険行かずに、魔法学校へ行ったり、フィッシュアンドチップスを食べてたりちょっとアレな執事のルイスの提案で大豆畑を作ってます。(それで生活が楽になる事やまったり感もなくただ作ってます。もうルイスの趣味に付き合うのはもう慣れました。遠い目)
※本編始まる前に、前日譚があり主人公が別の人物です。
そんな話ですが、よろしくお願いします!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる