よろず魔法使いの日記帳 【第一部 ダンジョンの謎】

藻ノかたり

文字の大きさ
上 下
90 / 115

予期せぬ来訪者

しおりを挟む
魔獣を倒し、妨害者との延長戦にも自信を得ていたパーティー全員に、新たな絶望が襲い掛かる。

「二十体? 間違いねぇのか!?」

剛腕の戦士ゲルドーシュですら、悲壮な声をあげた。

ボクの心は激しく狼狽する。二十体とはどういう事だ。妨害者にはまだそれだけのモンスターを召喚するだけの魔使具があり、魔獣戦での敗北を知った後にまとめて呼び出したという事なのか?

「そ、そんな」

ポピッカの顔面がみるみる青白くなっていくのが分かる。

「間違いありません!……ただ、サイズは人間大でみな殆ど同じ大きさです。それに魔力を全く感知できません。こ、これは一体!?」

ゲルドーシュの問いに、ザレドスが混乱する心情を露呈する。

人間サイズで魔力がないとは、どういう事なのか? 魔力がないという事は、魔物ではないという事だ。しかし魔獣のあとに、単なる獣やオークのような亜人を送ってくるとは思えない。いや、切り札の魔獣を出した後なので、ロクなモンスターが残っていないという可能性もある。

だが体力・魔力の回復はある程度なしたものの、二十体のモンスターを相手にするなどまず不可能だ。100パーセントの敗北、すなわち確実な死が待っている戦いに臨まなくてはならぬといって良い。

最後の最後で、やはりダメなのか。妨害者の勝利なのか……。不思議な事に激しい動揺はない。もうボクの心は、絶望という感覚に対して麻痺をしているのだろうか。

「あぁ、そうかい!じゃぁ、しょうがねぇな。こうなりゃ、斬って斬って斬りまくって、一匹でも多く道連れにするしかねぇや。

まぁ、魔獣を倒したっていう冥土への土産話もあるこったし、こちとら戦士として本望だぜ!!」

間もなく死を迎える覚悟をしたゲルドーシュの、戦士としての最後の意地を示す台詞である。

ボクはもちろんの事、ポピッカとザレドスも、ゲルドーシュの一言をレクイエムとして受け入れるのに、さして時間は掛からなかった。少しでも有利に戦いを進める為、ボクたちは広場に通じる一本道の出口付近に待機する。

ここでひとしきり暴れたのち、敵に押されて来たら一本道を後退し広場の入り口で待ち構えるのだ。そうすれば道幅の狭さゆえ、敵が一気になだれ込んでくる事を阻止できる。

もうこの先、回復する事のない体力と魔力を振り絞り、名誉ある最後の抵抗を試みようとした瞬間、迫りくる敵の影から意外過ぎる一言があった。

「おぉい、誰かいるかぁ――?」

余りに突拍子もない出来事に、一同はたとえようのない混沌へと陥った。確実な死を前にした凄まじい緊張感が一気に消失し、自らの心の前後すら全く理解する事が出来ない。

まさかこれも妨害者の作戦という事はないだろう。全く意味のない行為としか言いようがない。

「あぁ、まさか、まさか……。本当にこんな事があるのだろうか!?」

ザレドスが混乱の渦から、僅かに一人抜け出した。

「ザレドス、どうしたんだ。何が起こったんだ」

ボクは根拠のない一縷の望みを携えて、すぐ前にいる細工師に詰め寄った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちともふもふ無双する

大福金
ファンタジー
次世代ファンタジーカップ【ユニークキャラクター賞】受賞作 《あらすじ》 この世界では12歳になると、自分に合ったジョブが決まる。これは神からのギフトとされこの時に人生が決まる。 皆、華やかなジョブを希望するが何に成るかは神次第なのだ。 そんな中俺はジョブを決める12歳の洗礼式で【魔物使い】テイマーになった。 花形のジョブではないが動物は好きだし俺は魔物使いと言うジョブを気にいっていた。 ジョブが決まれば12歳から修行にでる。15歳になるとこのジョブでお金を稼ぐ事もできるし。冒険者登録をして世界を旅しながらお金を稼ぐ事もできる。 この時俺はまだ見ぬ未来に期待していた。 だが俺は……一年たっても二年たっても一匹もテイム出来なかった。 犬や猫、底辺魔物のスライムやゴブリンでさえテイム出来ない。 俺のジョブは本当に魔物使いなのか疑うほどに。 こんな俺でも同郷のデュークが冒険者パーティー【深緑の牙】に仲間に入れてくれた。 俺はメンバーの為に必死に頑張った。 なのに……あんな形で俺を追放なんて‼︎ そんな無能な俺が後に…… SSSランクのフェンリルをテイム(使役)し無双する 主人公ティーゴの活躍とは裏腹に 深緑の牙はどんどん転落して行く…… 基本ほのぼのです。可愛いもふもふフェンリルを愛でます。 たまに人の為にもふもふ無双します。 ざまぁ後は可愛いもふもふ達とのんびり旅をして行きます。 もふもふ仲間はどんどん増えて行きます。可愛いもふもふ仲間達をティーゴはドンドン無自覚にタラシこんでいきます。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

追放魔族のまったり生活

未羊
ファンタジー
魔族の屋敷で働いていたメイド魔族は、突如として屋敷を追い出される。 途方に暮れてさまよっていた森の中で、不思議な屋敷を見つけた魔族の少女。 それまでのつらい過去を振り払うように、その屋敷を拠点としてのんびりとした生活を始めたのだった。 ※毎日22時更新を予定しております

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...