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勝どき
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おぼつかない足取りながらも、魔獣ガノザイラはボクたちに近づいてくる。奴の前に立ちはだかるのは瀕死の戦士のみだ。
「ったく、まだ倒れねぇのか! 往生際の悪い……」
ゲルドーシュが限界点を越えた体に鞭うって、剣を振るおうとしたその時。
「ピーッッッ……!」
恐ろしい魔獣とは思えぬ甲高い最後の呻き声を残し、悪魔の使者はその場にひざまずき、後へとドッと倒れた。
皆、まんじりとしてその場を動かない。奴が本当にこと切れたのかどうか、誰もが疑っているからだ。思い出したかのように、ザレドスが解析魔使具を指先で操作する。
「……せい…のう…せん」
かぼそい声が伝わったが、何を言っているのかわからない。
「なんだ!? 聞こえねぇぞ!」
ゲルドーシュが、目の前の肉塊を睨みながらがなり立てる。
「……生命反応ありません。死にました。奴は死にました!!」
魔使具の数値を読み取る細工師の声が、だんだんと自信を得たものに変わっていった。
「間違いないのか、ザレドス」
ボクは彼の肩を掴んで確かめる。
「ないです。間違いないです!」
ザレドスが、歓喜の声をあげる。
その言葉を聞くやいなや、ポピッカはその場に座り込み、ボクは後ろの壁にどっかともたれかかった。ゲルドーシュはと言えば、床石に膝をつき、すぐに大の字に寝転がる。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
皆を守り切るという役目を果たし切った戦士の咆哮を、誰もが心地よいものとして感じ取ったに違いない。
「やりましたわね」
僧侶が、自信に満ちた声をあげる。
「あぁ、ボクたち、やったんだ!」
「そうだ、やったんだ。軍の精鋭一個小隊で勝てるかどうかの相手を、俺たち4人だけで!」
ボクに続いて、ゲルドーシュが確認するように勝利をかみしめる。
「皆さん、ちょっと古めかしいかも知れませんが、勝どきを上げませんか?」
ザレドスが、やや遠慮深そうに提案した。
「そうさな。いつもならダサくて、とてもじゃないがやる気にならねぇが、今回は特別だ」
「ふっ、オヤジ言葉連発のあなたが言うセリフじゃありませんわね」
いつも通り、僧侶が戦士に茶々を入れる。
「んだとぉ! いつ俺がオヤジ言葉を使ったよ!?」
「ほら、またケンカをしない。ボクは賛成だよ。だってこんな事、一生に一度あるかないかじゃないか。……これはリーダーとしての命令です」
ボクは、フンと鼻を鳴らす。
「ったく、リーダー風吹かしちゃってよ。でも旦那が言うなら、ポピッカも言う事を聞けよな」
「誰も嫌だなんて言っていませんわ」
僧侶の了解も取れたところで、ボクは勝どきの音頭を取る。
「じゃぁ、いくよ。エイエイオーッ!」
魔獣を退けた勝利者たちは、腕や剣を高く突き上げ声をそろえた。誰もが満足のいく笑顔をしている。
「さてと、じゃぁ、妨害者の張った結界を解除しますか……」
広間の出口に続く長い通路。そこにはボクたちと魔獣を閉じ込めるために妨害者が施した結界が今も残っている。ザレドスはそういうと出口の方へと歩き出した。
「ちょっと、待って!」
ボクはザレドスを制止する。
「ったく、まだ倒れねぇのか! 往生際の悪い……」
ゲルドーシュが限界点を越えた体に鞭うって、剣を振るおうとしたその時。
「ピーッッッ……!」
恐ろしい魔獣とは思えぬ甲高い最後の呻き声を残し、悪魔の使者はその場にひざまずき、後へとドッと倒れた。
皆、まんじりとしてその場を動かない。奴が本当にこと切れたのかどうか、誰もが疑っているからだ。思い出したかのように、ザレドスが解析魔使具を指先で操作する。
「……せい…のう…せん」
かぼそい声が伝わったが、何を言っているのかわからない。
「なんだ!? 聞こえねぇぞ!」
ゲルドーシュが、目の前の肉塊を睨みながらがなり立てる。
「……生命反応ありません。死にました。奴は死にました!!」
魔使具の数値を読み取る細工師の声が、だんだんと自信を得たものに変わっていった。
「間違いないのか、ザレドス」
ボクは彼の肩を掴んで確かめる。
「ないです。間違いないです!」
ザレドスが、歓喜の声をあげる。
その言葉を聞くやいなや、ポピッカはその場に座り込み、ボクは後ろの壁にどっかともたれかかった。ゲルドーシュはと言えば、床石に膝をつき、すぐに大の字に寝転がる。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
皆を守り切るという役目を果たし切った戦士の咆哮を、誰もが心地よいものとして感じ取ったに違いない。
「やりましたわね」
僧侶が、自信に満ちた声をあげる。
「あぁ、ボクたち、やったんだ!」
「そうだ、やったんだ。軍の精鋭一個小隊で勝てるかどうかの相手を、俺たち4人だけで!」
ボクに続いて、ゲルドーシュが確認するように勝利をかみしめる。
「皆さん、ちょっと古めかしいかも知れませんが、勝どきを上げませんか?」
ザレドスが、やや遠慮深そうに提案した。
「そうさな。いつもならダサくて、とてもじゃないがやる気にならねぇが、今回は特別だ」
「ふっ、オヤジ言葉連発のあなたが言うセリフじゃありませんわね」
いつも通り、僧侶が戦士に茶々を入れる。
「んだとぉ! いつ俺がオヤジ言葉を使ったよ!?」
「ほら、またケンカをしない。ボクは賛成だよ。だってこんな事、一生に一度あるかないかじゃないか。……これはリーダーとしての命令です」
ボクは、フンと鼻を鳴らす。
「ったく、リーダー風吹かしちゃってよ。でも旦那が言うなら、ポピッカも言う事を聞けよな」
「誰も嫌だなんて言っていませんわ」
僧侶の了解も取れたところで、ボクは勝どきの音頭を取る。
「じゃぁ、いくよ。エイエイオーッ!」
魔獣を退けた勝利者たちは、腕や剣を高く突き上げ声をそろえた。誰もが満足のいく笑顔をしている。
「さてと、じゃぁ、妨害者の張った結界を解除しますか……」
広間の出口に続く長い通路。そこにはボクたちと魔獣を閉じ込めるために妨害者が施した結界が今も残っている。ザレドスはそういうと出口の方へと歩き出した。
「ちょっと、待って!」
ボクはザレドスを制止する。
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