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爆裂の秘密
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「ゲル! もう、いいんじゃないのか」
目的の最深部まで距離としてはさほど遠くないものの、無駄に時間をかけている余裕はない。ボクは戦いの享楽にふけるゲルドーシュに釘をさした。
「そうだな、ここらが潮時か」
不満げな戦士であったが、拳熊を足で突き飛ばし敵との距離を取る。
「ザレドス、どうせ俺の戦いを魔使具でスキャンしてるんだろ?これからちょっと面白い技を使うんで、しっかり見といてくれよ!」
ゲルドーシュに見透かされていた事を知り、ちょっと決まりが悪そうなザレドス。
拳熊の方も業を煮やしたのか、全力でゲルドーシュへと驀進する。体当たりを食らえば屈強な成人男子といえど、十数メートルは飛ばされ大けがは間違いない勢いだ。
「ゲル!よけなさい!」
ポピッカが不安まじりの声をあげる。
「いらぬお世話だ。よっく見てな!」
中段に大剣を構え、仁王立ちで猛進してくる敵を見据えるゲルドーシュ。
拳熊は硬質化した右手を斜め後ろに引き、次の瞬間それを凄まじいスピードで振りおろす。ポピッカに心配いらぬと説いたボクだったが、ゲルドーシュが一向に動かないのを見て心臓の鼓動がドンドン早くなるのを感じる。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
ゲルドーシュが獣のような咆哮をあげた。戦士の叫びと同時に彼の大剣が細かな振動を帯び、次の瞬間、凄まじい爆発音が鳴り響き、辺りが暫し閃光に包まれた。
そしてあと一歩でゲルドーシュを叩きのめすはずだった拳熊の動きは、爆発に阻まれピタリと止まった。
「こ、これは!」
ザレドスが思わず口走る。
「じゃぁな。遊んでくれて有難うよ!」
ゲルドーシュは大剣をかつぐように斜め上に振り上げ、間髪を入れず拳熊を袈裟懸けに斬り捨てた。抵抗する間もなく、むろん避ける間もなく、魔熊の体は剣の軌跡通りに切断される。
肉が切り離される音と共に、拳熊の左肩から右わき腹にかけての塊が本体から滑り落ちた。ほどなく残りの胴体も、轟音と共に地べたへ崩れ落ちる。
「ふう、いい運動になったぜ」
初めてのまともな戦いを終え、ゲルドーシュは満足げに息を吐いた。
「やぁ、何だい今の技は? あんなの初めて見たぞ」
何が起こったのか今一つ理解が及ばす、ボクは逸る気持ちを押さえつつもゲルドーシュに種明かしを迫る。
「へへん、どうだい。驚いたかよ旦那」
ゲルドーシュが得意げに鼻を鳴らした。
「実はな……」
「剣を通じて闘気を爆発させたんですね!」
ザレドスが戦士の自慢話を遮った。
「ちょ、ちょっとザレドスよ。それは俺がこれから言おうと……」
大威張りで先ほどのカラクリを披露しようとしたゲルドーシュが、機先を制されドギマギしている。
「しかし不思議ですね。私の見たところ、その剣は魔使具ではない。もちろん魔道具でもない。業物ではありますが、魔法とは一切関係のない武器にしか見えません。それなのに何故、先ほどのような魔法を使わなくては出来ない芸当が可能なのでしょう……」
知的興味心が先に立ち、一人でドンドン話を先に進めるザレドス。しかし彼にもわからぬ事があると知り、ゲルドーシュの機嫌が多少なりとも回復する。
「おぅっ、さすがのアンタにもわからねぇか。じゃぁ、これから俺が言う事をとくと聞いてくんな。実はな、こいつはテュラフィーの手によるものなんだ」
自慢話の腰を折られ、先ほどまでしょげかえっていた戦士が意外な事実を語り出す。
「前にも話したように俺の婚約者テュラフィーは魔使具職人なんだが、今回の仕事のために、剣に魔法をかけてくれたんだよ。内容はさっきザレドスが言ったように、俺の闘気を剣に宿らせて爆発させるもんだ」
「いや、それはおかしいですわね。その剣が魔使具や魔道具でない以上、魔法を使う事は出来ないはずですが」
今度はポピッカが疑念を示す。
「俺もそう思ってたんだけどさ、なんでも単純な魔法だったら、普通の武器にも付与できるらしいんだ。もっとも、かけた魔法を使い切ったらそれまでなんだがな」
「あぁ、もしかして……」
魔使具マニアのザレドスが何か気が付いたようだ。
「テュラフィーさんって、準魔法使いなんでしょうか? それだったら、思いつく事があります」
「あぁ、何かそういう事、言ってたような気もするなぁ…」
ゲルドーシュが頼りなげに返答をする。
「準魔法使いというのはですね、魔法使いと呼べるほどの魔力はないものの、少しは魔法を使える人たちの事なんですよ。混乱を招くという理由で、黙殺されて来たんですけどね」
ザレドスが、ウンチクを披露し始めた。
「魔法使いにはなれないので、他の職業を選ぶしかないのですが、ごく少量の魔力なんて使い道がない。ですから本人たちも殊更それをひけらかそうとはしません。そんな事をしたら、むしろ”落ちこぼれ魔法使い”みたいな偏見を持たれてしまいますからね」
「おい、ちょっと待て。落ちこぼれたぁ、どういうこったい、落ちこぼれたぁ。事と次第によっちゃぁ容赦しねぇぞ!」
婚約者をバカにされていると思ったのか、ゲルドーシュの顔がみるみる内に赤くなっていく。
「違いますわよ。ザレドスがそう思っているのではなくて、世間一般がそういう評価をしているって事ですわ」
ポピッカの取りなしが入る。
「あっ、あぁ、そうか。すまねぇ、つい」
ゲルドーシュは、魔法電信の存在を失念したザレドスを心ならずも叱責してしまった件もあり、ここは大人しく引き下がる。
「あぁ、誤解を与える表現でしたね。すいません。では話を続けます」
一瞬どうなる事かと思ったが、ゲルドーシュも少しは成長しているようだ。
目的の最深部まで距離としてはさほど遠くないものの、無駄に時間をかけている余裕はない。ボクは戦いの享楽にふけるゲルドーシュに釘をさした。
「そうだな、ここらが潮時か」
不満げな戦士であったが、拳熊を足で突き飛ばし敵との距離を取る。
「ザレドス、どうせ俺の戦いを魔使具でスキャンしてるんだろ?これからちょっと面白い技を使うんで、しっかり見といてくれよ!」
ゲルドーシュに見透かされていた事を知り、ちょっと決まりが悪そうなザレドス。
拳熊の方も業を煮やしたのか、全力でゲルドーシュへと驀進する。体当たりを食らえば屈強な成人男子といえど、十数メートルは飛ばされ大けがは間違いない勢いだ。
「ゲル!よけなさい!」
ポピッカが不安まじりの声をあげる。
「いらぬお世話だ。よっく見てな!」
中段に大剣を構え、仁王立ちで猛進してくる敵を見据えるゲルドーシュ。
拳熊は硬質化した右手を斜め後ろに引き、次の瞬間それを凄まじいスピードで振りおろす。ポピッカに心配いらぬと説いたボクだったが、ゲルドーシュが一向に動かないのを見て心臓の鼓動がドンドン早くなるのを感じる。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
ゲルドーシュが獣のような咆哮をあげた。戦士の叫びと同時に彼の大剣が細かな振動を帯び、次の瞬間、凄まじい爆発音が鳴り響き、辺りが暫し閃光に包まれた。
そしてあと一歩でゲルドーシュを叩きのめすはずだった拳熊の動きは、爆発に阻まれピタリと止まった。
「こ、これは!」
ザレドスが思わず口走る。
「じゃぁな。遊んでくれて有難うよ!」
ゲルドーシュは大剣をかつぐように斜め上に振り上げ、間髪を入れず拳熊を袈裟懸けに斬り捨てた。抵抗する間もなく、むろん避ける間もなく、魔熊の体は剣の軌跡通りに切断される。
肉が切り離される音と共に、拳熊の左肩から右わき腹にかけての塊が本体から滑り落ちた。ほどなく残りの胴体も、轟音と共に地べたへ崩れ落ちる。
「ふう、いい運動になったぜ」
初めてのまともな戦いを終え、ゲルドーシュは満足げに息を吐いた。
「やぁ、何だい今の技は? あんなの初めて見たぞ」
何が起こったのか今一つ理解が及ばす、ボクは逸る気持ちを押さえつつもゲルドーシュに種明かしを迫る。
「へへん、どうだい。驚いたかよ旦那」
ゲルドーシュが得意げに鼻を鳴らした。
「実はな……」
「剣を通じて闘気を爆発させたんですね!」
ザレドスが戦士の自慢話を遮った。
「ちょ、ちょっとザレドスよ。それは俺がこれから言おうと……」
大威張りで先ほどのカラクリを披露しようとしたゲルドーシュが、機先を制されドギマギしている。
「しかし不思議ですね。私の見たところ、その剣は魔使具ではない。もちろん魔道具でもない。業物ではありますが、魔法とは一切関係のない武器にしか見えません。それなのに何故、先ほどのような魔法を使わなくては出来ない芸当が可能なのでしょう……」
知的興味心が先に立ち、一人でドンドン話を先に進めるザレドス。しかし彼にもわからぬ事があると知り、ゲルドーシュの機嫌が多少なりとも回復する。
「おぅっ、さすがのアンタにもわからねぇか。じゃぁ、これから俺が言う事をとくと聞いてくんな。実はな、こいつはテュラフィーの手によるものなんだ」
自慢話の腰を折られ、先ほどまでしょげかえっていた戦士が意外な事実を語り出す。
「前にも話したように俺の婚約者テュラフィーは魔使具職人なんだが、今回の仕事のために、剣に魔法をかけてくれたんだよ。内容はさっきザレドスが言ったように、俺の闘気を剣に宿らせて爆発させるもんだ」
「いや、それはおかしいですわね。その剣が魔使具や魔道具でない以上、魔法を使う事は出来ないはずですが」
今度はポピッカが疑念を示す。
「俺もそう思ってたんだけどさ、なんでも単純な魔法だったら、普通の武器にも付与できるらしいんだ。もっとも、かけた魔法を使い切ったらそれまでなんだがな」
「あぁ、もしかして……」
魔使具マニアのザレドスが何か気が付いたようだ。
「テュラフィーさんって、準魔法使いなんでしょうか? それだったら、思いつく事があります」
「あぁ、何かそういう事、言ってたような気もするなぁ…」
ゲルドーシュが頼りなげに返答をする。
「準魔法使いというのはですね、魔法使いと呼べるほどの魔力はないものの、少しは魔法を使える人たちの事なんですよ。混乱を招くという理由で、黙殺されて来たんですけどね」
ザレドスが、ウンチクを披露し始めた。
「魔法使いにはなれないので、他の職業を選ぶしかないのですが、ごく少量の魔力なんて使い道がない。ですから本人たちも殊更それをひけらかそうとはしません。そんな事をしたら、むしろ”落ちこぼれ魔法使い”みたいな偏見を持たれてしまいますからね」
「おい、ちょっと待て。落ちこぼれたぁ、どういうこったい、落ちこぼれたぁ。事と次第によっちゃぁ容赦しねぇぞ!」
婚約者をバカにされていると思ったのか、ゲルドーシュの顔がみるみる内に赤くなっていく。
「違いますわよ。ザレドスがそう思っているのではなくて、世間一般がそういう評価をしているって事ですわ」
ポピッカの取りなしが入る。
「あっ、あぁ、そうか。すまねぇ、つい」
ゲルドーシュは、魔法電信の存在を失念したザレドスを心ならずも叱責してしまった件もあり、ここは大人しく引き下がる。
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