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最初の晩餐
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「やはりお二人もそう考えていたわけですのね。まぁ、誰が見ても不自然に多くの未踏破部分がありますからね。何かの意図があると考えるのが普通ですわ。普通でない人も、いるみたいですけれど」
ボクとザレドスの話に、ポピッカが割って入ってきた。
「悪かったな。普通でなくて」
ゲルドーシュが、ヘソを曲げる。
「ただ、私たちが気づいているのですから、役所のほうでも当然気づいているはずです。それを何故放置しているのか……」
ザレドスが疑問を呈する。
「そうですねぇ。可能性としては、気づいてはいるものの大した事ではないと思っているのか、あえて放っているのか、まぁ色々と考える事は出来るけど」
前を歩きながら、ボクは中衛のザレドスに言った。
「お役人なんて自分の責任になる事は敢えて手を付けないものですわ。下手に言い出せばヤブ蛇という事になりかねませんものね」
うん、こうなってみるとボクもポピッカの意見に賛成だ。ただ責任逃れの放置であったとしても、それを見越して誰かが利用している可能性はあるのではないか。
「いづれにせよ、今それを論じても結論は出ないし、ザレドスの言う通り出来るだけ急いで未踏破部分を片付けてしまおう」
ボクはリーダーらしくメンバーに檄を飛ばし、一同がそれぞれに応じる。このパーティーもそれなりにまとまりを持ってきたようだ。呑んだくれ戦士と、気難しい僧侶の間はともかくとして。
その後も探索は相変わらず順調に続く。ダンジョンの遠くの方から何がしかの鳴き声のような音が聞こえてはきたが、その主がボクたちの前に現れる事はなく、パーティーは未踏破部分を次々と制覇していった。
事前に渡された資料によれば、このダンジョンは地上一階地下8階の比較的浅い迷宮である。時代的にもそれほど古いものではない。故に痛みも少なく探索もしやすい。おまけに敵が出現しないともなれば、これは大変楽な仕事となろう。
もちろん最深部の謎の一件はあるものの、少なくともそれまでは何の支障もなく過ごせそうである。未だ手掛かりになるようなものは何ひとつ得られていないのは気にかかるが、皆あえてその事には触れないようにしている。
地下2階を制覇し終えたところで表では夕闇迫る時刻となった。ボクたちは予定通り、結界を張った安全地帯であるベースキャンプへと入る。
そこはダンジョン内部にある大き目の袋小路を利用した一角で、約6メートル四方の空間だ。壁がない部分にはかなり強力な結界が張ってあり、外からの侵入者を妨げるようになっていた。
中へ入るには、呪文とアイテムの両方が必要となる。ザレドスが州兵の隊長から預かっていたカード型の魔使具のスイッチを入れ、教えられていた呪文を唱えると、結界の一部にゲートが現れて中へと入る事が出来た。
「おぉっ! こりゃ思っていたより快適そうだぞ」
ゲルドーシュが、子供のようにはしゃぐ。
結界の中には簡易ベッドが数台と食料の入った保存庫があり、もちろんそこには保存魔法が掛かっている。また少し離れた場所にはマジックエッセンスが詰め込まれたタンクも設置されていて、様々な魔使具に対応したアタッチメントが装備されていた。
他には折り畳みの机や椅子、食器の類にチョットしたゲーム等々、数人が一晩滞在するのに十分な環境が整っている。
「さぁて、まずは飯だ飯!」
ゲルドーシュが、保存庫のドアに手をかける。
「ちょーっと、待ったぁ!」
ボクは慌てて、食い気に走る戦士を引き留めた。あいつに食事の差配をさせたら、一人で保存庫のもの全部を食っちまう可能性が大である。
「食事の準備はボクとポピッカさんがするよ。ここまでは君とザレドスさんが、大いに仕事をしてくれたからね。まぁ、まかせておいてくれ」
ポピッカの同意を得る前に口走ってしまった事を少し後悔したが、フードを頭から外し背中へ下した僧侶は、何も言わず素直に従った。
ボクとポピッカは保存庫の中身を確認し、パーティー揃って初めてとる夕食の用意を始める。意外だったのは、彼女が実にテキパキと要領よく食事の準備をしていった事である。ボクはといえば、ポピッカの指示に従い簡易テーブルを用意したり食器を並べたりと、彼女の小間使いとして大いに”こき使われた”のだった。
これは一朝一夕で出来る事ではない。彼女は普段から、こういった事をしているのだろう。
でも、ちょっと不思議だよなぁ。フォラシム教について詳しいわけではないけれど、神父である彼女がこういった事をいつもしているとは思えない。神父は司祭としての役割をも担う、現場レベルでは最高位の役職だ。むしろこういった事が得意な下位の者たちに、かしずかれる立場にいるはずである。
そんな疑問を抱いている内に、記念すべき”最初の晩餐”が始まった。食料は圧縮魔法がかけられた上で保存庫に蓄えられているので、実際の量としてはかなりある事になる。そのため簡易的な食事といっても、テーブルには多くのごちそうが並ぶ事となった。
ボクとザレドスの話に、ポピッカが割って入ってきた。
「悪かったな。普通でなくて」
ゲルドーシュが、ヘソを曲げる。
「ただ、私たちが気づいているのですから、役所のほうでも当然気づいているはずです。それを何故放置しているのか……」
ザレドスが疑問を呈する。
「そうですねぇ。可能性としては、気づいてはいるものの大した事ではないと思っているのか、あえて放っているのか、まぁ色々と考える事は出来るけど」
前を歩きながら、ボクは中衛のザレドスに言った。
「お役人なんて自分の責任になる事は敢えて手を付けないものですわ。下手に言い出せばヤブ蛇という事になりかねませんものね」
うん、こうなってみるとボクもポピッカの意見に賛成だ。ただ責任逃れの放置であったとしても、それを見越して誰かが利用している可能性はあるのではないか。
「いづれにせよ、今それを論じても結論は出ないし、ザレドスの言う通り出来るだけ急いで未踏破部分を片付けてしまおう」
ボクはリーダーらしくメンバーに檄を飛ばし、一同がそれぞれに応じる。このパーティーもそれなりにまとまりを持ってきたようだ。呑んだくれ戦士と、気難しい僧侶の間はともかくとして。
その後も探索は相変わらず順調に続く。ダンジョンの遠くの方から何がしかの鳴き声のような音が聞こえてはきたが、その主がボクたちの前に現れる事はなく、パーティーは未踏破部分を次々と制覇していった。
事前に渡された資料によれば、このダンジョンは地上一階地下8階の比較的浅い迷宮である。時代的にもそれほど古いものではない。故に痛みも少なく探索もしやすい。おまけに敵が出現しないともなれば、これは大変楽な仕事となろう。
もちろん最深部の謎の一件はあるものの、少なくともそれまでは何の支障もなく過ごせそうである。未だ手掛かりになるようなものは何ひとつ得られていないのは気にかかるが、皆あえてその事には触れないようにしている。
地下2階を制覇し終えたところで表では夕闇迫る時刻となった。ボクたちは予定通り、結界を張った安全地帯であるベースキャンプへと入る。
そこはダンジョン内部にある大き目の袋小路を利用した一角で、約6メートル四方の空間だ。壁がない部分にはかなり強力な結界が張ってあり、外からの侵入者を妨げるようになっていた。
中へ入るには、呪文とアイテムの両方が必要となる。ザレドスが州兵の隊長から預かっていたカード型の魔使具のスイッチを入れ、教えられていた呪文を唱えると、結界の一部にゲートが現れて中へと入る事が出来た。
「おぉっ! こりゃ思っていたより快適そうだぞ」
ゲルドーシュが、子供のようにはしゃぐ。
結界の中には簡易ベッドが数台と食料の入った保存庫があり、もちろんそこには保存魔法が掛かっている。また少し離れた場所にはマジックエッセンスが詰め込まれたタンクも設置されていて、様々な魔使具に対応したアタッチメントが装備されていた。
他には折り畳みの机や椅子、食器の類にチョットしたゲーム等々、数人が一晩滞在するのに十分な環境が整っている。
「さぁて、まずは飯だ飯!」
ゲルドーシュが、保存庫のドアに手をかける。
「ちょーっと、待ったぁ!」
ボクは慌てて、食い気に走る戦士を引き留めた。あいつに食事の差配をさせたら、一人で保存庫のもの全部を食っちまう可能性が大である。
「食事の準備はボクとポピッカさんがするよ。ここまでは君とザレドスさんが、大いに仕事をしてくれたからね。まぁ、まかせておいてくれ」
ポピッカの同意を得る前に口走ってしまった事を少し後悔したが、フードを頭から外し背中へ下した僧侶は、何も言わず素直に従った。
ボクとポピッカは保存庫の中身を確認し、パーティー揃って初めてとる夕食の用意を始める。意外だったのは、彼女が実にテキパキと要領よく食事の準備をしていった事である。ボクはといえば、ポピッカの指示に従い簡易テーブルを用意したり食器を並べたりと、彼女の小間使いとして大いに”こき使われた”のだった。
これは一朝一夕で出来る事ではない。彼女は普段から、こういった事をしているのだろう。
でも、ちょっと不思議だよなぁ。フォラシム教について詳しいわけではないけれど、神父である彼女がこういった事をいつもしているとは思えない。神父は司祭としての役割をも担う、現場レベルでは最高位の役職だ。むしろこういった事が得意な下位の者たちに、かしずかれる立場にいるはずである。
そんな疑問を抱いている内に、記念すべき”最初の晩餐”が始まった。食料は圧縮魔法がかけられた上で保存庫に蓄えられているので、実際の量としてはかなりある事になる。そのため簡易的な食事といっても、テーブルには多くのごちそうが並ぶ事となった。
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