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注文した魔使具
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翌日はガドゼラン魔使具店で、完成した魔使具の調整である。ダンジョン探索の依頼が近かったので、重要性の低い魔使具はボンゼラン商会との契約時に購入したものを使う事とし、命にかかわりそうな魔使具だけを先行注文していた。
具体的には「魔奏スティック」「魔盾環」「ナビゲーター」「スピードローダー付きモバイラー」「魔句呂コーラー」の五つである。
魔奏スティックは直径3cm、長さ20cmほどの棒で、片方にストラップがついている。今回は、これに火炎、雷、光の術式を封印してもらった。この魔使具、一般人が使う場合は基本的に一つの術式しか封印しない。スイッチによってしか発動する事が出来ないからだ。中には切り替えスイッチが付いていて、3つ程度まで術式を封印する事が出来るものも売られているが、非常に高価であり、性能と値段が釣り合うないとの評判である。
ちなみにボクが注文した魔法使い専用の魔奏スティックには、スイッチ類は一切ついていない。魔力によって発動させる仕組みであり、機能の切り替えも同じく魔力で行う。また封印されているのは単純術式ではなく応用術式である。これによって同じ火炎の魔法でも、発動状態を何種類かに変更できる。
たとえばスティックの先から小型のファイヤーボール状のものを出す事が出来る一方、棒状の火炎を維持して、あたかも炎の剣のように使う事も出来る。もっとも元来は一種類の魔法なので、単純術式の場合と比べて威力は劣る。
ただし、ストラップは術者の体に蓄えられているマジックエッセンスを吸収する事が出来、一時的にではあるが威力を倍増させるブースト機能を使う事も可能となるので、これにより応用術式であっても単純術式と同等の威力を得られるのだ。
こういった機能を有する事から、以前は「魔”装”スティック」と呼ばれていたものが、魔法を奏でるかのような棒という意味で「魔”奏”スティック」と表記されるようになったとも聞く。ただし指揮者のように魔法を奏でるには、魔法操作力がそれなりに要求されるので、魔法使いのレベルによってバリエーションの数は様々だ。
魔盾環(まじゅんかん)は、直径12cmの平たい円環に持ち手の四角いリングがついたものである。円環部分に防御魔法の術式が施されており、発動すると盾状の魔方陣シールドが展開される。シールドの大きさや形は魔力で調整する事が可能だ。
とりあえず、対物理攻撃全般と対魔法攻撃全般の二種類を施してもらった。両方とも広く浅くというコンセプトなので、それほど防御力は高くないが、今回のダンジョン探索では余り強力な魔物は出ないようなので、これで十分だろう。
ナビゲーターは3cm四方ある板状のペンダントで、文字通り自分の居場所を示すのと、それまで辿ったルートを記憶する機能を有しており、ある意味、探索任務で最も重要なアイテムと言って良い。ボンゼラン商会のものは、どうも記録方式に癖があり、ボクには使いにくかったので今回新たに注文した。
スピードローダー付きモバイラーは、ベルトに付ける事が出来る8cm×5cm×1.5cmの箱で、マジックエッセンスを濃縮して封入する事が可能だ。
通常は専用のローダーを別に接続して魔使具に燃料であるマジックエッセンスを注入するのだが、本製品はモバイラーにローダーが組み込まれている上に、普及品の5倍のスピードでチャージが出来るスグレモノである。おまけに調整をしておけば、使用者自身にもマジックエッセンスをチャージできる。
最後の魔句呂コーラーは少し特殊な魔使具であり、完全な魔法使い専用品である。
魔法を使う時には詠唱をしなくてはならないが、それには時間が掛かってしまう。魔使具は元来、魔法の元であるマジックエッセンスと魔法を発動させるための詠唱そのものを封じ込めたアイテムであり、それゆえ長い詠唱時間をかけなくても一瞬で魔法を発動する事が出来るのだ。
そして魔句呂コーラーは、いわば”魔法使い自身を魔使具と化させる”アイテムである。
たとえば、魔法使いが魔使具を使用せず、直にファイヤーボールを使う時に詠唱する呪文がある。ふつうに唱えれば5~6秒はかかる代物だ。その呪文を魔句呂コーラーに登録しておくのである。またその際に、発動キーワードも一緒に登録しておく。
たとえば「ファイヤーボール」とキーワードを登録しておいた場合、術者が”ファイヤーボール”と叫ぶと、一瞬にして魔句呂コーラーに登録しておいたファイヤーボールの詠唱が済んだ事になり、術者の手のひらから火の玉が飛んでいく。もちろんその際には、魔法使いが自分の体の中に蓄えてあるマジックエッセンスを消費する事になるのだが……。
魔使具が故障したり魔使具のマジックエッセンスが切れた場合などは、自分自身が魔法を使わねばならないが、詠唱時間が問題となる。特に戦闘になった場合などは悠長に詠唱していると、その間にやられてしまう可能性が高まるので、出来るだけ素早く魔法を発動させる必要性にせまられるわけだ。魔句呂コーラーはそこを補ってくれる。
ただし発動には予め登録しておいた所持者の声紋と、発動時に使われる魔力波が一致する事が必須である。魔力波とは個人の魔力の流れをあらわすもので、魔法使い個人々々でそれぞれ違い、指紋同様に一致する事は通常あり得ない。
また発動キーワードは自由に決められる。ファイヤーボールを発動する時、バカ正直に”ファイヤーボール”と叫ぶ必要はない。たとえば”ゾラン”といったファイヤーボールと全く関係ない言葉で登録しておけば、少なくとも最初の一回に限っては、敵がこちらの発動魔法の正体を知るのに一瞬の遅れが出てしまい、戦いが有利に運ぶ事もある。
あと魔句呂コーラーには本来別の魔法を連続、または同時に発動させる機能もある。
たとえばファイヤーボールとライトニングプラズマの詠唱をあらかじめ登録しておき、それを一つのキーワードで連続、もしくは同時に発動させる事が出来る。また肉体強化の魔法を使う場合、従来であれば「筋力増加」「俊敏性増加」「動体視力増強」「感覚鋭敏化」などの魔法を一つずつかけねばならないが、それを一言で発動させる事も出来るのだ。
言うまでもなく、これらは戦闘の際に絶大な威力を発揮する。ただし、この機能を装備するには熟練の魔使具職人の腕が必要で、おいそれと実装できるものではない。もちろんガドゼラン魔使具店の主人、ヴァロンゼには問題なく出来るだろう。
魔句呂コーラーの形状としては、ペンダントや指輪、髪飾りなど身につけられるものが原則となる。今回は指輪型を注文した。
具体的には「魔奏スティック」「魔盾環」「ナビゲーター」「スピードローダー付きモバイラー」「魔句呂コーラー」の五つである。
魔奏スティックは直径3cm、長さ20cmほどの棒で、片方にストラップがついている。今回は、これに火炎、雷、光の術式を封印してもらった。この魔使具、一般人が使う場合は基本的に一つの術式しか封印しない。スイッチによってしか発動する事が出来ないからだ。中には切り替えスイッチが付いていて、3つ程度まで術式を封印する事が出来るものも売られているが、非常に高価であり、性能と値段が釣り合うないとの評判である。
ちなみにボクが注文した魔法使い専用の魔奏スティックには、スイッチ類は一切ついていない。魔力によって発動させる仕組みであり、機能の切り替えも同じく魔力で行う。また封印されているのは単純術式ではなく応用術式である。これによって同じ火炎の魔法でも、発動状態を何種類かに変更できる。
たとえばスティックの先から小型のファイヤーボール状のものを出す事が出来る一方、棒状の火炎を維持して、あたかも炎の剣のように使う事も出来る。もっとも元来は一種類の魔法なので、単純術式の場合と比べて威力は劣る。
ただし、ストラップは術者の体に蓄えられているマジックエッセンスを吸収する事が出来、一時的にではあるが威力を倍増させるブースト機能を使う事も可能となるので、これにより応用術式であっても単純術式と同等の威力を得られるのだ。
こういった機能を有する事から、以前は「魔”装”スティック」と呼ばれていたものが、魔法を奏でるかのような棒という意味で「魔”奏”スティック」と表記されるようになったとも聞く。ただし指揮者のように魔法を奏でるには、魔法操作力がそれなりに要求されるので、魔法使いのレベルによってバリエーションの数は様々だ。
魔盾環(まじゅんかん)は、直径12cmの平たい円環に持ち手の四角いリングがついたものである。円環部分に防御魔法の術式が施されており、発動すると盾状の魔方陣シールドが展開される。シールドの大きさや形は魔力で調整する事が可能だ。
とりあえず、対物理攻撃全般と対魔法攻撃全般の二種類を施してもらった。両方とも広く浅くというコンセプトなので、それほど防御力は高くないが、今回のダンジョン探索では余り強力な魔物は出ないようなので、これで十分だろう。
ナビゲーターは3cm四方ある板状のペンダントで、文字通り自分の居場所を示すのと、それまで辿ったルートを記憶する機能を有しており、ある意味、探索任務で最も重要なアイテムと言って良い。ボンゼラン商会のものは、どうも記録方式に癖があり、ボクには使いにくかったので今回新たに注文した。
スピードローダー付きモバイラーは、ベルトに付ける事が出来る8cm×5cm×1.5cmの箱で、マジックエッセンスを濃縮して封入する事が可能だ。
通常は専用のローダーを別に接続して魔使具に燃料であるマジックエッセンスを注入するのだが、本製品はモバイラーにローダーが組み込まれている上に、普及品の5倍のスピードでチャージが出来るスグレモノである。おまけに調整をしておけば、使用者自身にもマジックエッセンスをチャージできる。
最後の魔句呂コーラーは少し特殊な魔使具であり、完全な魔法使い専用品である。
魔法を使う時には詠唱をしなくてはならないが、それには時間が掛かってしまう。魔使具は元来、魔法の元であるマジックエッセンスと魔法を発動させるための詠唱そのものを封じ込めたアイテムであり、それゆえ長い詠唱時間をかけなくても一瞬で魔法を発動する事が出来るのだ。
そして魔句呂コーラーは、いわば”魔法使い自身を魔使具と化させる”アイテムである。
たとえば、魔法使いが魔使具を使用せず、直にファイヤーボールを使う時に詠唱する呪文がある。ふつうに唱えれば5~6秒はかかる代物だ。その呪文を魔句呂コーラーに登録しておくのである。またその際に、発動キーワードも一緒に登録しておく。
たとえば「ファイヤーボール」とキーワードを登録しておいた場合、術者が”ファイヤーボール”と叫ぶと、一瞬にして魔句呂コーラーに登録しておいたファイヤーボールの詠唱が済んだ事になり、術者の手のひらから火の玉が飛んでいく。もちろんその際には、魔法使いが自分の体の中に蓄えてあるマジックエッセンスを消費する事になるのだが……。
魔使具が故障したり魔使具のマジックエッセンスが切れた場合などは、自分自身が魔法を使わねばならないが、詠唱時間が問題となる。特に戦闘になった場合などは悠長に詠唱していると、その間にやられてしまう可能性が高まるので、出来るだけ素早く魔法を発動させる必要性にせまられるわけだ。魔句呂コーラーはそこを補ってくれる。
ただし発動には予め登録しておいた所持者の声紋と、発動時に使われる魔力波が一致する事が必須である。魔力波とは個人の魔力の流れをあらわすもので、魔法使い個人々々でそれぞれ違い、指紋同様に一致する事は通常あり得ない。
また発動キーワードは自由に決められる。ファイヤーボールを発動する時、バカ正直に”ファイヤーボール”と叫ぶ必要はない。たとえば”ゾラン”といったファイヤーボールと全く関係ない言葉で登録しておけば、少なくとも最初の一回に限っては、敵がこちらの発動魔法の正体を知るのに一瞬の遅れが出てしまい、戦いが有利に運ぶ事もある。
あと魔句呂コーラーには本来別の魔法を連続、または同時に発動させる機能もある。
たとえばファイヤーボールとライトニングプラズマの詠唱をあらかじめ登録しておき、それを一つのキーワードで連続、もしくは同時に発動させる事が出来る。また肉体強化の魔法を使う場合、従来であれば「筋力増加」「俊敏性増加」「動体視力増強」「感覚鋭敏化」などの魔法を一つずつかけねばならないが、それを一言で発動させる事も出来るのだ。
言うまでもなく、これらは戦闘の際に絶大な威力を発揮する。ただし、この機能を装備するには熟練の魔使具職人の腕が必要で、おいそれと実装できるものではない。もちろんガドゼラン魔使具店の主人、ヴァロンゼには問題なく出来るだろう。
魔句呂コーラーの形状としては、ペンダントや指輪、髪飾りなど身につけられるものが原則となる。今回は指輪型を注文した。
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