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魔女と奇妙な男 (54) 第二ラウンド
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でも彼に、勝算はあるのでしょうか? 見た目だけで判断するわけにはいきませんが、普通に考えればメサイトのパワーアップは確実です。それに薬の制限時間も未だ不明なのですから、これはクレオンに取って相当不利な状況だと言えます。
「ネリス君。僕はこれから気乗りしないが本気になる。必ず君が逃げられる隙を作るから、ビビッてそこから動けないなんて話はナシにしてくれよ」
立ち上がったクレオンが、ローブを脱ぎすてます。黒づくめな事に変わりありませんが、戦闘服というイメージに一変しました。これは彼が”戦闘要員”でもある証です。一つ異様なのは、腰へと巻いたベルトには、正体不明の容器が幾つも装填されている事でした。
クレオンの全身から立ち昇る闘気を、ネリスも感じ取ります。これはどうやらハッタリではなく、彼が勝負に出る事を意味していると彼女は悟りました。ならば自分も”ビビッて”なんかいられないと、ネリスは覚悟を決めます。
「お前はバカか? お前の力、まぁ、全力は出していないんだろう。だが、さっきまでのオレと互角か少し上と見た。だとしたら、今のオレに勝てる見込みは万に一つもないぞ」
絶対的な自信が、メサイトを饒舌にします。
「いや、それは違うな。さっきまでの君ならば、余裕で倒せたよ。ただ、ネリス君に万が一の事があるとウルサイおばさんがいるんでね。安全策として薬の時間切れを待ってたんだ。
仕事とはいえ、疲れるの嫌いだしさ」
クレオンが、進化した化け物の前で言い放ちました。でも疲れるのが嫌だなんて、コリスが聞いたら顔を真っ赤にして怒りそうですね。
「フン、大した自惚れ屋だな。ローブを脱いで身を軽くしたつもりなんだろうが、今のオレにはそんなもの関係ないな。
まぁ、論より証拠だ。せいぜい楽しませてくれ」
メサイトは、余裕の笑みを浮かべて膝をグッと曲げました。絶大な瞬発力を生かし、一気に間合いを詰めようとしているのです。
それを見たクレオンは、再びステップを刻み始めました。しかし先ほど見せたものとは微妙に違う、なにか”本気”をうかがわせる緊張感がありました。
「ダァッ!」
メサイトの頬まで避けた口が大きく開かれ、彼は今までの倍はあるかという勢いでクレオンへ突進します。当たっただけでも命が危ない代物です。
化け物のタックルが、クレオンの眼前に迫った時、彼はステップのリズムを大きく変えました。すると先ほどメサイトの横にいきなり張り付いた時よりも素早く、攻撃をかわせるギリギリの位置へと、目にも止まらぬスピードで移動します。
これにはメサイトも驚いたようで、進路を急転回させる事が出来ません。怪物をやり過ごした次の瞬間、今度はクレオンが猛ダッシュをしてメサイトの背中に強力な蹴りを打ち込みます。
化け物は自分の勢いも手伝って、ホールの奥の方へすっ飛んで行きました。ところがメサイトは右腕を後ろに引いたかと思うと、それを床に向かって振り降ろします。腕は床にめり込み、化け物はそこで急停止しました。正に、化け物ならではの芸当でしょう。
クレオンの顔が、少し不機嫌になりました。彼の計画では一気にメサイトをボールの端まで移動させ、その間にネリスを脱出させるつもりだったのです。しかし現在メサイトのいる場所では、まだネリスは走り出す事が出来ません。
「少しはマシなようだが、そんなもんで吹っ飛ばされるようなオレじゃないぜ」
床より腕を引き抜きながら、メサイトが笑います。
「あ~ぁ、やっぱりだめか」
クレオンが、残念そうに鼻から息を吐きました。
「同じ手はもう通用しないぞ。さぁ、次はどうする?」
すっかり立ち上がったメサイトは、クレオンへ挑戦的な口調で語りかけます。
「しょうがないな。とっておきを出すとするか」
「ネリス君。僕はこれから気乗りしないが本気になる。必ず君が逃げられる隙を作るから、ビビッてそこから動けないなんて話はナシにしてくれよ」
立ち上がったクレオンが、ローブを脱ぎすてます。黒づくめな事に変わりありませんが、戦闘服というイメージに一変しました。これは彼が”戦闘要員”でもある証です。一つ異様なのは、腰へと巻いたベルトには、正体不明の容器が幾つも装填されている事でした。
クレオンの全身から立ち昇る闘気を、ネリスも感じ取ります。これはどうやらハッタリではなく、彼が勝負に出る事を意味していると彼女は悟りました。ならば自分も”ビビッて”なんかいられないと、ネリスは覚悟を決めます。
「お前はバカか? お前の力、まぁ、全力は出していないんだろう。だが、さっきまでのオレと互角か少し上と見た。だとしたら、今のオレに勝てる見込みは万に一つもないぞ」
絶対的な自信が、メサイトを饒舌にします。
「いや、それは違うな。さっきまでの君ならば、余裕で倒せたよ。ただ、ネリス君に万が一の事があるとウルサイおばさんがいるんでね。安全策として薬の時間切れを待ってたんだ。
仕事とはいえ、疲れるの嫌いだしさ」
クレオンが、進化した化け物の前で言い放ちました。でも疲れるのが嫌だなんて、コリスが聞いたら顔を真っ赤にして怒りそうですね。
「フン、大した自惚れ屋だな。ローブを脱いで身を軽くしたつもりなんだろうが、今のオレにはそんなもの関係ないな。
まぁ、論より証拠だ。せいぜい楽しませてくれ」
メサイトは、余裕の笑みを浮かべて膝をグッと曲げました。絶大な瞬発力を生かし、一気に間合いを詰めようとしているのです。
それを見たクレオンは、再びステップを刻み始めました。しかし先ほど見せたものとは微妙に違う、なにか”本気”をうかがわせる緊張感がありました。
「ダァッ!」
メサイトの頬まで避けた口が大きく開かれ、彼は今までの倍はあるかという勢いでクレオンへ突進します。当たっただけでも命が危ない代物です。
化け物のタックルが、クレオンの眼前に迫った時、彼はステップのリズムを大きく変えました。すると先ほどメサイトの横にいきなり張り付いた時よりも素早く、攻撃をかわせるギリギリの位置へと、目にも止まらぬスピードで移動します。
これにはメサイトも驚いたようで、進路を急転回させる事が出来ません。怪物をやり過ごした次の瞬間、今度はクレオンが猛ダッシュをしてメサイトの背中に強力な蹴りを打ち込みます。
化け物は自分の勢いも手伝って、ホールの奥の方へすっ飛んで行きました。ところがメサイトは右腕を後ろに引いたかと思うと、それを床に向かって振り降ろします。腕は床にめり込み、化け物はそこで急停止しました。正に、化け物ならではの芸当でしょう。
クレオンの顔が、少し不機嫌になりました。彼の計画では一気にメサイトをボールの端まで移動させ、その間にネリスを脱出させるつもりだったのです。しかし現在メサイトのいる場所では、まだネリスは走り出す事が出来ません。
「少しはマシなようだが、そんなもんで吹っ飛ばされるようなオレじゃないぜ」
床より腕を引き抜きながら、メサイトが笑います。
「あ~ぁ、やっぱりだめか」
クレオンが、残念そうに鼻から息を吐きました。
「同じ手はもう通用しないぞ。さぁ、次はどうする?」
すっかり立ち上がったメサイトは、クレオンへ挑戦的な口調で語りかけます。
「しょうがないな。とっておきを出すとするか」
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