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魔女と奇妙な男 (22) 意外な出来事
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ソファにグッタリと横たわったネリスは、それから何がどうなったのかわかりません。次に意識がハッキリしたのは、自分のベッドの上だったんですからね。カーテンの隙間から差し込む光は、もう朝が来た事を告げていました。
あれからフレディさんが、運んでくれたんだな。
身支度を整えながら、ネリスはぼんやりと考えます。そして恐る恐る部屋のドアを開きました。別にコソコソする理由はありませんでしたが、やっぱりバツが悪いと感じています。何せあれだけ大泣きをしたんですから、ちょっと恥ずかしい思いがありました。
もう、朝の掃除をする余裕はありません。またレアロンに嫌味を言われるのを覚悟して、ネリスは食堂へと向かいます。
あ、その前に、フレディさんにお礼を言わなきゃ。
こういった義理人情には、結構うるさいネリスです。彼女を男で一つで育てたお爺さんの影響でしょうか。
ネリスはとりえあず、台所へと向かいました。フレディは庭仕事や大工仕事など外での仕事が多いのですが、オリビアは大抵台所にいます。そして夫の行動を、逐一把握しているのでした。
台所へ続くドアを少し開け、隙間から中を伺うネリス。コンロの前ではオリビアがせっせと朝食の準備を進めています。コンソメスープのいい香りが、ネリスの鼻をくすぐりました。
ネリスは少しためらいましたが、ドアの
残りを開き切ります。
「あら、ネリスちゃん、おはよう。気分はどう?」
早速気のついたオリビアが、笑顔と共にネリスの具合を尋ねました。でも実の所、彼女は夕べから何度もネリスの部屋を訪れ、彼女が穏やかな寝息をたてているのを聞いて、安心していたのですけどね。
「もう大丈夫。心配かけました」
ネリスが、年相応の照れ笑いをします。
「すぐに朝食が出来ますからね。食堂の方へ行っていて」
オリビアが、料理の味見をしながら言いました。
「あの、フレディおじさんは? 部屋に運んでもらったお礼を言いたいんですけど……」
ネリスが、台所をキョロキョロと見回しました。
「お礼? それは見当違いだわ。だって、あなたを部屋まで運んだのは、フレディじゃないもの」
意外な答えに、ネリスはキョトンとします。
「え……、じゃぁ、まさか師匠とオリビアおばさんが?」
この屋の肝っ玉母さんオリビアが、ヤレヤレという顔をします。
「違うわよ。もう一人、誰かを忘れていない?」
少しイタズラっぽく笑いながら、オリビアが言いました。
「……? フレディおじさんでもオリビアおばさんでも、師匠でもない……。じゃぁ、他に誰が……」
ネリスには、全く思い当たるふしがありません。
「もう、そこまで言っちゃぁ、可哀そうよ。あとは、レアロンさんしかいないでしょ?」
オリビアが、棚から食器を出しながら笑います。
「え、えっえぇ!? レアロンが、何で!?」
ネリスの頭は、まだ半分寝ぼけているとはいえ、相当に混乱しました。
だって昨夜は、レアロンの奴、そうとう怒ってたわよね。それがまたどうして……。
あれからフレディさんが、運んでくれたんだな。
身支度を整えながら、ネリスはぼんやりと考えます。そして恐る恐る部屋のドアを開きました。別にコソコソする理由はありませんでしたが、やっぱりバツが悪いと感じています。何せあれだけ大泣きをしたんですから、ちょっと恥ずかしい思いがありました。
もう、朝の掃除をする余裕はありません。またレアロンに嫌味を言われるのを覚悟して、ネリスは食堂へと向かいます。
あ、その前に、フレディさんにお礼を言わなきゃ。
こういった義理人情には、結構うるさいネリスです。彼女を男で一つで育てたお爺さんの影響でしょうか。
ネリスはとりえあず、台所へと向かいました。フレディは庭仕事や大工仕事など外での仕事が多いのですが、オリビアは大抵台所にいます。そして夫の行動を、逐一把握しているのでした。
台所へ続くドアを少し開け、隙間から中を伺うネリス。コンロの前ではオリビアがせっせと朝食の準備を進めています。コンソメスープのいい香りが、ネリスの鼻をくすぐりました。
ネリスは少しためらいましたが、ドアの
残りを開き切ります。
「あら、ネリスちゃん、おはよう。気分はどう?」
早速気のついたオリビアが、笑顔と共にネリスの具合を尋ねました。でも実の所、彼女は夕べから何度もネリスの部屋を訪れ、彼女が穏やかな寝息をたてているのを聞いて、安心していたのですけどね。
「もう大丈夫。心配かけました」
ネリスが、年相応の照れ笑いをします。
「すぐに朝食が出来ますからね。食堂の方へ行っていて」
オリビアが、料理の味見をしながら言いました。
「あの、フレディおじさんは? 部屋に運んでもらったお礼を言いたいんですけど……」
ネリスが、台所をキョロキョロと見回しました。
「お礼? それは見当違いだわ。だって、あなたを部屋まで運んだのは、フレディじゃないもの」
意外な答えに、ネリスはキョトンとします。
「え……、じゃぁ、まさか師匠とオリビアおばさんが?」
この屋の肝っ玉母さんオリビアが、ヤレヤレという顔をします。
「違うわよ。もう一人、誰かを忘れていない?」
少しイタズラっぽく笑いながら、オリビアが言いました。
「……? フレディおじさんでもオリビアおばさんでも、師匠でもない……。じゃぁ、他に誰が……」
ネリスには、全く思い当たるふしがありません。
「もう、そこまで言っちゃぁ、可哀そうよ。あとは、レアロンさんしかいないでしょ?」
オリビアが、棚から食器を出しながら笑います。
「え、えっえぇ!? レアロンが、何で!?」
ネリスの頭は、まだ半分寝ぼけているとはいえ、相当に混乱しました。
だって昨夜は、レアロンの奴、そうとう怒ってたわよね。それがまたどうして……。
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