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魔女と奇妙な男 (15) 秘密の屋上
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ネリスは悪い意味で騒動になるのを恐れましたが、それは全く心配いりませんでした。彼の行く先々では人だかりが出来て、まるでチョットしたアイドル並みの扱いです。その度に、コリスが魔女たちを散らさなければ、仕事にならないほどでした。
何故でしょう。それはですね、南の森の薬工場には、比較的若い魔女が多いというのが一つの理由です。男の魔女を忌み嫌う高齢魔女は殆どいない上に、なんせ責任者自身が、まだまだ若いコリスです。他の工場よりも、時代を先取りしていたわけですね。
そういった土台がありますから、物珍しさに加え、彼の人たらしとも言える笑顔と話術をもってすれば、このような状況になるのはむしろ当たり前であったと言えるでしょう。
ただコリスの眉間には、どんどんシワが増えて行きましたけどね。でもまぁ、事情が事情だけに、彼女も忍の一字です。
そして表向きは「魔女運営工場の定期監査」という事になっていましたから、彼がコリス邸に寝泊まりをしていると分かるや否や、今度はネリスが先輩魔女たちから質問攻めにあいました。彼女にとっては大迷惑な話です。
さて、時はお昼休み。
他の魔女からあれやこれやと聞かれるわずらわしさから逃れるため、ネリスは誰も知らない場所へとやって来ました。そこは古い棟の屋上で、眼下には街が一望できる素敵なスポットです。出入口は厳重に封鎖されているのですが、他の棟の地下から行ける、秘密の通路をネリスは知っていました。旺盛な好奇心のなせる業ですね。
お気に入りの場所で、オリビアが作ってくれたお弁当を広げるネリス。
「へぇ、ここは僕も知らなかったなぁ」
後から、急に声がしました。
「あ、クレオンさん!もう……、つけてきたんですか? 」
振り向いたネリスがほっぺたを膨らませて、不満をあらわにします。お昼ご飯くらい、ゆっくり食べたいですからね。
「そりゃ、そうさ。だって、これが仕事だもん」
悪びれる様子もないクレオン。
そしてカバンからもぞもぞと、これまたオリビア特製のお弁当を取り出します。
監視する者とされる者が、誰も知らない場所で一緒にお弁当を食べる。そんな不思議な時間が過ぎて行きました。
「ねぇ、クレオンさん。あなたはコリス師匠やレアロンと、凄く親しいみたいだけど……」
ネリスが、おずおずと尋ねます。個人情報というか、プライバシーに踏み込むのですから、やっぱり遠慮する気持ちがありました。
「気になる?」
クレオンが、微笑みながら逆に聞き返します。この笑顔が曲者なんですよね。男の魔女に不信感を抱いている人たちも、この笑顔を向けられると、一発で心を許しちゃうんです。それこそ魔法みたいに。
でも、こういう特技でもなければ、彼がここまでの地位を築くのは不可能だったでしょう。それが今の、魔女社会の現実です。
「師匠とは、元恋人とか……」
気になっていた一番の事を、ネリスはしょっぱなに尋ねました。
「えぇ? 恋人ぉ。ハハッ、ないない。あいつとは、そういう関係じゃないよ」
クレオンが、大笑いをします。
「じゃぁ、只の友だちですか?」
ネリスが更に、突っ込んだ質問をしました。
「そう、友だち。っていうよりも”戦友”かなぁ。お互いに背中を預けられるって感じの。もっともあいつの方じゃ、ヒヤヒヤしながら預けてたんだろうけどさ」
クレオンが思い出したように、クククっと笑います。
「それからレアロンもだよ。三人で背中を預け合ってた時期があったんだよね、若い頃の話だけど」
そう言うと、クレオンは遠くを見つめているような顔になりました。ネリスは、一瞬、彼が別人のように感じられました。
何故でしょう。それはですね、南の森の薬工場には、比較的若い魔女が多いというのが一つの理由です。男の魔女を忌み嫌う高齢魔女は殆どいない上に、なんせ責任者自身が、まだまだ若いコリスです。他の工場よりも、時代を先取りしていたわけですね。
そういった土台がありますから、物珍しさに加え、彼の人たらしとも言える笑顔と話術をもってすれば、このような状況になるのはむしろ当たり前であったと言えるでしょう。
ただコリスの眉間には、どんどんシワが増えて行きましたけどね。でもまぁ、事情が事情だけに、彼女も忍の一字です。
そして表向きは「魔女運営工場の定期監査」という事になっていましたから、彼がコリス邸に寝泊まりをしていると分かるや否や、今度はネリスが先輩魔女たちから質問攻めにあいました。彼女にとっては大迷惑な話です。
さて、時はお昼休み。
他の魔女からあれやこれやと聞かれるわずらわしさから逃れるため、ネリスは誰も知らない場所へとやって来ました。そこは古い棟の屋上で、眼下には街が一望できる素敵なスポットです。出入口は厳重に封鎖されているのですが、他の棟の地下から行ける、秘密の通路をネリスは知っていました。旺盛な好奇心のなせる業ですね。
お気に入りの場所で、オリビアが作ってくれたお弁当を広げるネリス。
「へぇ、ここは僕も知らなかったなぁ」
後から、急に声がしました。
「あ、クレオンさん!もう……、つけてきたんですか? 」
振り向いたネリスがほっぺたを膨らませて、不満をあらわにします。お昼ご飯くらい、ゆっくり食べたいですからね。
「そりゃ、そうさ。だって、これが仕事だもん」
悪びれる様子もないクレオン。
そしてカバンからもぞもぞと、これまたオリビア特製のお弁当を取り出します。
監視する者とされる者が、誰も知らない場所で一緒にお弁当を食べる。そんな不思議な時間が過ぎて行きました。
「ねぇ、クレオンさん。あなたはコリス師匠やレアロンと、凄く親しいみたいだけど……」
ネリスが、おずおずと尋ねます。個人情報というか、プライバシーに踏み込むのですから、やっぱり遠慮する気持ちがありました。
「気になる?」
クレオンが、微笑みながら逆に聞き返します。この笑顔が曲者なんですよね。男の魔女に不信感を抱いている人たちも、この笑顔を向けられると、一発で心を許しちゃうんです。それこそ魔法みたいに。
でも、こういう特技でもなければ、彼がここまでの地位を築くのは不可能だったでしょう。それが今の、魔女社会の現実です。
「師匠とは、元恋人とか……」
気になっていた一番の事を、ネリスはしょっぱなに尋ねました。
「えぇ? 恋人ぉ。ハハッ、ないない。あいつとは、そういう関係じゃないよ」
クレオンが、大笑いをします。
「じゃぁ、只の友だちですか?」
ネリスが更に、突っ込んだ質問をしました。
「そう、友だち。っていうよりも”戦友”かなぁ。お互いに背中を預けられるって感じの。もっともあいつの方じゃ、ヒヤヒヤしながら預けてたんだろうけどさ」
クレオンが思い出したように、クククっと笑います。
「それからレアロンもだよ。三人で背中を預け合ってた時期があったんだよね、若い頃の話だけど」
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