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お髭(ひげ)のニール (24) 宝の鍵
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マルロンとネリスは、年は離れていましたが、常連さんという事でもう友だちのような関係でした。そこで本当は規則に反するのですが、ニールの母親には内緒で治療する運びとなったのです。
ネリスがニールのアゴに数滴の薬を塗ると、それこそ魔法のように彼のアゴにしっかりとくっついていたお髭が、ポロリと外れました。これまでの苦労が、ウソのようです。
そして相談所を出た後は、お待ちかねのご褒美の時間。
四人は近くのお菓子屋さんが経営している喫茶店に入り、至福の時を過ごします。ドッジは。ケーキを二回もおかわりしました。
「さてと、ニール。さっき薬屋さんでも話した通り、君のママには黙っているわけなんだが、大人の責任上、パパの方には一応伝えておくよ。実は今晩、また例の骨董屋で会う約束があるんだ」
ロールケーキを頬張りながら、マルロンが言いました。
「えっ、でもそれじゃぁ、ニールのパパからママへ伝わっちゃうんじゃ……」
マリアが、いち早く心配します。
「いや、大丈夫だよ。だって今回の事は、元々セディー(ニールのパパの名前)の不始末が原因だろ? もしママに言ったら、パパもママにこっぴどく叱られちゃうだろうよ。それにさ。ニールたちのお手柄に、水を差すような事はしない男だよ、彼は」
骨董友達であり、またそのライバルでもあるマルロンは、自信を持って言いました。
さて、三人が大きな満足感とご褒美を賜った後、彼らはそれぞれの家に帰ります。今日の出来事は三人にとって、一生の思い出になるでしょう。
その日の夜、パパと一緒にお風呂に入ったニールは、居間へ戻る前、パパに呼び止められました。
なんだろう……。
実はニールとしても、マルロンがパパになんて言ったのか、そしてパパはどう感じているのか、とても気になっていました。
「ニール、ちょっと来なさい」
パパの声が、心なしか厳しめに聞こえます。やっぱりお説教されるのかな、とニールは思いました。
二人は一階のお風呂から、地下にある倉庫の前にやって来ました。
「ニール、話はマルロンに聞いたよ」
さぁ、お説教が始まります……と思いきや
「ごめんな、パパがあんな薬を買って、しかも適当に放ってしまったばっかりに、苦労をかけちゃって」
あれ? お説教じゃないのかな?
「それに、子犬の件、良くやった。マルロンに何度も頭を下げられて、パパは鼻が高かったよ」
パパが満面の笑みでニールに話します。意外な展開に、ニールはキョトンとしました。
「そこでだ。パパからも、ご褒美をあげようと思ってさ」
パパはポケットから、鍵を一つ取り出しまし。
「この鍵は、この倉庫の合鍵だ。これをお前に預けよう」
そう言うとパパは、キラキラと光る鍵をニールに手渡しました。マルロンから話を聞いたパパが、骨董屋の帰りに合鍵を作って来たのです。
「じゃぁ、ボクがパパのコレクションを見てもいいの?」
今まで立ち入りを許されなかった、宝の部屋への鍵を与えられるなんて、とても信じられないという心持ちでした。
「でもな、お前が自由に出入り出来る事や、中に何があるかは、ママには内緒だぞ」
パパもしっかりと、くぎを刺しておきます。これがママにばれたなら「息子を自分の趣味に引き入れようとしている」と散々文句を言われるのは目に見えてますからね。
喜ぶ息子の顔を見て、パパは嬉しくなりました。子供というのは母親になつくものです。ニールもまた、例外ではありません。パパとしては、それが少し寂しかったのでした。でも今回の出来事で、父子の絆というか、男同士の友情というか、そんなものが芽生えた気がしたのです。
ニールはその晩、もらった宝の鍵をしっかりと抱いてベッドに入りました。そして夢の中で、ドッジ、マリア、子犬と飼い主の男の子、みんなで遊ぶ夢を見ます。
そして、こんな日々がずっと続けばいいのになと思いました。
【お髭(ひげ)のニール・終】
ネリスがニールのアゴに数滴の薬を塗ると、それこそ魔法のように彼のアゴにしっかりとくっついていたお髭が、ポロリと外れました。これまでの苦労が、ウソのようです。
そして相談所を出た後は、お待ちかねのご褒美の時間。
四人は近くのお菓子屋さんが経営している喫茶店に入り、至福の時を過ごします。ドッジは。ケーキを二回もおかわりしました。
「さてと、ニール。さっき薬屋さんでも話した通り、君のママには黙っているわけなんだが、大人の責任上、パパの方には一応伝えておくよ。実は今晩、また例の骨董屋で会う約束があるんだ」
ロールケーキを頬張りながら、マルロンが言いました。
「えっ、でもそれじゃぁ、ニールのパパからママへ伝わっちゃうんじゃ……」
マリアが、いち早く心配します。
「いや、大丈夫だよ。だって今回の事は、元々セディー(ニールのパパの名前)の不始末が原因だろ? もしママに言ったら、パパもママにこっぴどく叱られちゃうだろうよ。それにさ。ニールたちのお手柄に、水を差すような事はしない男だよ、彼は」
骨董友達であり、またそのライバルでもあるマルロンは、自信を持って言いました。
さて、三人が大きな満足感とご褒美を賜った後、彼らはそれぞれの家に帰ります。今日の出来事は三人にとって、一生の思い出になるでしょう。
その日の夜、パパと一緒にお風呂に入ったニールは、居間へ戻る前、パパに呼び止められました。
なんだろう……。
実はニールとしても、マルロンがパパになんて言ったのか、そしてパパはどう感じているのか、とても気になっていました。
「ニール、ちょっと来なさい」
パパの声が、心なしか厳しめに聞こえます。やっぱりお説教されるのかな、とニールは思いました。
二人は一階のお風呂から、地下にある倉庫の前にやって来ました。
「ニール、話はマルロンに聞いたよ」
さぁ、お説教が始まります……と思いきや
「ごめんな、パパがあんな薬を買って、しかも適当に放ってしまったばっかりに、苦労をかけちゃって」
あれ? お説教じゃないのかな?
「それに、子犬の件、良くやった。マルロンに何度も頭を下げられて、パパは鼻が高かったよ」
パパが満面の笑みでニールに話します。意外な展開に、ニールはキョトンとしました。
「そこでだ。パパからも、ご褒美をあげようと思ってさ」
パパはポケットから、鍵を一つ取り出しまし。
「この鍵は、この倉庫の合鍵だ。これをお前に預けよう」
そう言うとパパは、キラキラと光る鍵をニールに手渡しました。マルロンから話を聞いたパパが、骨董屋の帰りに合鍵を作って来たのです。
「じゃぁ、ボクがパパのコレクションを見てもいいの?」
今まで立ち入りを許されなかった、宝の部屋への鍵を与えられるなんて、とても信じられないという心持ちでした。
「でもな、お前が自由に出入り出来る事や、中に何があるかは、ママには内緒だぞ」
パパもしっかりと、くぎを刺しておきます。これがママにばれたなら「息子を自分の趣味に引き入れようとしている」と散々文句を言われるのは目に見えてますからね。
喜ぶ息子の顔を見て、パパは嬉しくなりました。子供というのは母親になつくものです。ニールもまた、例外ではありません。パパとしては、それが少し寂しかったのでした。でも今回の出来事で、父子の絆というか、男同士の友情というか、そんなものが芽生えた気がしたのです。
ニールはその晩、もらった宝の鍵をしっかりと抱いてベッドに入りました。そして夢の中で、ドッジ、マリア、子犬と飼い主の男の子、みんなで遊ぶ夢を見ます。
そして、こんな日々がずっと続けばいいのになと思いました。
【お髭(ひげ)のニール・終】
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