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扉の奥の秘宝 (11) 鍵開け勝負
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そして、一度宿舎に戻った二人。フューイは仕事道具を持って、ゾルウッドは音楽や朗読を聞ける、カード状の魔道具を持って宝物棟へ向かいます。ゾルウッドにしてみればフューイが仕事をしている時間、これはお昼を挟んで四時間ずつなのですが、約束通り見張りをしていなければなりません。
しかし、ただ漫然とライバルの仕事を離れた場所から見ているだけでは、とても間が持たないので、ボンシックに言いつかったスタッフのレネフィルが、この魔道具の用意をしたのでした。中年細工師が大好きな、オペラとホラー小説がたっぷり入った代物です。
二人は今、問題の扉がある宝物棟の前に立っています。地上四階、地下二階の大きな建物です。宝物要塞の中にある棟の中でも、一番の威厳を誇っていました。正面の門の前には、衛兵が立っています。いつもは二人で守っているのですが、ボンシックが言ったように兵隊の半分はお城の方に取られているので、今は一人しかいません。
「お勤め、ご苦労さんで」
ゾルウッドが、警備隊長から受け取った通行証を示します。衛兵はそれを一通り調べた後に、後の門扉を開けました。まぁ、一応二人はよそ者ですからね。これくらいは、当然でしょう。
今回の仕事場は、地下二階にありました。それも最深部となっています。
「昨日も見たけどさ、大したもんだよなぁ。壁ひとつとってみても、強力な魔法でガードされているのが分かるってもんだ。
これじゃぁ、盗賊どもが押し寄せて来ても、手ぶらで逃げ帰ざるを得ないのもうなずけるぜ」
昨日の下見の時は、周りを見る余裕などなかったゾルウッドが、しきりに感心します。でもフューイはそれに一言も答える事なく、どんどん先へ進んでいきました。
「なぁ、フューイさんよ。俺たちは確かに鍵開けを競うライバルだけどさ。もう少し、仲良くやらねぇか? これも何かの縁なだわけだし」
ゾルウッドが、たまらず言いました。
「すまん。オレは、鍵開けにしか興味がない」
自分がぶっきら棒だと分かっているフューイは、それでも最大限の謝意を示します。ただ余りにもドスの効いた言い方だったので、ゾルウッドは、けおされたようでした。
気まずい空気の漂う中(と言っても、フューイは気にしていないようですが)、この凸凹コンビは地下二階へと降り立ちます。
宝物棟の奥の奥、魔法ランプで照らされた最下層のメイン通路をまっすぐ行くと、右への曲がり角が見えてきます。二人は昨日もやって来ましたが、今日は下見ではなく本番です。普段は陽気なゾルウッドでさえ、緊張した面持ちを見せました。
曲がり角から二十メートルほど歩くと行き止まりで、その右側に問題の扉がありました。扉の前の廊下の上は吹き抜けになっており、外光が差し込みます。ただ、途中にはいくつもの鉄格子があり、上から直接ここへ侵入するのは不可能でした。
しかし、ただ漫然とライバルの仕事を離れた場所から見ているだけでは、とても間が持たないので、ボンシックに言いつかったスタッフのレネフィルが、この魔道具の用意をしたのでした。中年細工師が大好きな、オペラとホラー小説がたっぷり入った代物です。
二人は今、問題の扉がある宝物棟の前に立っています。地上四階、地下二階の大きな建物です。宝物要塞の中にある棟の中でも、一番の威厳を誇っていました。正面の門の前には、衛兵が立っています。いつもは二人で守っているのですが、ボンシックが言ったように兵隊の半分はお城の方に取られているので、今は一人しかいません。
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ゾルウッドが、警備隊長から受け取った通行証を示します。衛兵はそれを一通り調べた後に、後の門扉を開けました。まぁ、一応二人はよそ者ですからね。これくらいは、当然でしょう。
今回の仕事場は、地下二階にありました。それも最深部となっています。
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「なぁ、フューイさんよ。俺たちは確かに鍵開けを競うライバルだけどさ。もう少し、仲良くやらねぇか? これも何かの縁なだわけだし」
ゾルウッドが、たまらず言いました。
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