69 / 212
扉の奥の秘宝 (10) フューイの疑問
しおりを挟む
フューイは表情一つ変えずにドアを閉め、ソファーへ腰を下ろします。その目は、明日から挑戦する錠前を思い浮かべ爛々と輝くのと同時に、未だにぬぐい切れない疑惑も宿していました。
それから数時間後。再びフューイの部屋をレネフィルが訪れ、夕飯の支度が整った事を知らせます。規則により個室では食べられず、食堂まで来てほしいとの事でした。
フューイが階段を降りて一階の食堂へ赴くと、そこには先程とは違い、多くの兵士や宝物のメンテナンスを行う技術者たちが、既に食事を始めていました。とは言っても、一斉に食べ始めるわけではなく、決まった時間内であれば各々自由で良いようです。
ただボンシックが言ったように、兵の半分は王宮の方に取られているらしく、それなりに空席が目立ちます。フューイは、なるべく人のいない所を選んで座りました。それを見計らって、スタッフが彼の元へ食事を運んできます。
辺りを眺めると、向こうの方でゾルウッドと接客係のレネフィルが親し気に談笑しています。ゾルウッドって割とお調子者みたいですから、もう彼女と仲良くなっているようですね。セクハラなどして、騒ぎを起こさなければ良いのですが。
そのゾルウッド、フューイが食事をしている事に気がつき、軽く手を振りました。勿論、フューイは無視をします。小太りの中年細工師は、ヤレヤレといったポーズを見せ、再びレネフィルとのやりとりを楽しみました。
フューイは手早く食事を済ましたあと、頭の隅にこびりついている疑問を反芻しながら、食後のコーヒーをすすっています。
やはりおかしい。そもそもどうして、オレたちなんだ。あのゾルウッドという奴もそれなりの細工師のようだが、王宮にだって細工師はいるだろう。何故、そいつらを差し置いて、民間の技術者を使うのかがわからない。
みなさん、気がつきました? これはニールのパパが抱いた疑問と同じです。これから何百年も先、これから挑戦する宝物庫の扉の向こう側に存在する宝を前にして、自分と同じ事を考える人がいるなんて、フューイは思ってもいないでしょうね。それを考えると、ちょっと可笑しくなってきます。
辺りの兵士や技術者にこの疑問をぶつけても、有用な情報が得られるとは思えなかったフューイは、コーヒーカップを皿に戻すとすぐに自室へと帰っていきました。
さて翌日の朝。今日から本格的に鍵開け作業に入ります。先攻は、フューイです。彼とゾルウッドは、まずは詰め所に居る宝物警備隊長の元を訪ね、問題の宝物棟へ入る許可を得ます。これは、必ず経なければならない手続きです。彼らのような部外者ばかりではなく、宝物のメンテナンスをする技術者たちも同じです。相当に厳しいんです。
それから数時間後。再びフューイの部屋をレネフィルが訪れ、夕飯の支度が整った事を知らせます。規則により個室では食べられず、食堂まで来てほしいとの事でした。
フューイが階段を降りて一階の食堂へ赴くと、そこには先程とは違い、多くの兵士や宝物のメンテナンスを行う技術者たちが、既に食事を始めていました。とは言っても、一斉に食べ始めるわけではなく、決まった時間内であれば各々自由で良いようです。
ただボンシックが言ったように、兵の半分は王宮の方に取られているらしく、それなりに空席が目立ちます。フューイは、なるべく人のいない所を選んで座りました。それを見計らって、スタッフが彼の元へ食事を運んできます。
辺りを眺めると、向こうの方でゾルウッドと接客係のレネフィルが親し気に談笑しています。ゾルウッドって割とお調子者みたいですから、もう彼女と仲良くなっているようですね。セクハラなどして、騒ぎを起こさなければ良いのですが。
そのゾルウッド、フューイが食事をしている事に気がつき、軽く手を振りました。勿論、フューイは無視をします。小太りの中年細工師は、ヤレヤレといったポーズを見せ、再びレネフィルとのやりとりを楽しみました。
フューイは手早く食事を済ましたあと、頭の隅にこびりついている疑問を反芻しながら、食後のコーヒーをすすっています。
やはりおかしい。そもそもどうして、オレたちなんだ。あのゾルウッドという奴もそれなりの細工師のようだが、王宮にだって細工師はいるだろう。何故、そいつらを差し置いて、民間の技術者を使うのかがわからない。
みなさん、気がつきました? これはニールのパパが抱いた疑問と同じです。これから何百年も先、これから挑戦する宝物庫の扉の向こう側に存在する宝を前にして、自分と同じ事を考える人がいるなんて、フューイは思ってもいないでしょうね。それを考えると、ちょっと可笑しくなってきます。
辺りの兵士や技術者にこの疑問をぶつけても、有用な情報が得られるとは思えなかったフューイは、コーヒーカップを皿に戻すとすぐに自室へと帰っていきました。
さて翌日の朝。今日から本格的に鍵開け作業に入ります。先攻は、フューイです。彼とゾルウッドは、まずは詰め所に居る宝物警備隊長の元を訪ね、問題の宝物棟へ入る許可を得ます。これは、必ず経なければならない手続きです。彼らのような部外者ばかりではなく、宝物のメンテナンスをする技術者たちも同じです。相当に厳しいんです。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
ダレカノセカイ
MY
ファンタジー
新道千。高校2年生。
次に目を覚ますとそこは――。
この物語は俺が元いた居場所……いや元いた世界へ帰る為の戦いから始まる話である。
――――――――――――――――――
ご感想などありましたら、お待ちしております(^^)
by MY
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
魅了アイテムを使ったヒロインの末路
クラッベ
恋愛
乙女ゲームの世界に主人公として転生したのはいいものの、何故か問題を起こさない悪役令嬢にヤキモキする日々を送っているヒロイン。
何をやっても振り向いてくれない攻略対象達に、ついにヒロインは課金アイテムである「魅惑のコロン」に手を出して…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
対人恐怖症は異世界でも下を向きがち
こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。
そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。
そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。
人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。
容赦なく迫ってくるフラグさん。
康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。
なるべく間隔を空けず更新しようと思います!
よかったら、読んでください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる