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扉の奥の秘宝 (10) フューイの疑問

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フューイは表情一つ変えずにドアを閉め、ソファーへ腰を下ろします。その目は、明日から挑戦する錠前を思い浮かべ爛々と輝くのと同時に、未だにぬぐい切れない疑惑も宿していました。

それから数時間後。再びフューイの部屋をレネフィルが訪れ、夕飯の支度が整った事を知らせます。規則により個室では食べられず、食堂まで来てほしいとの事でした。

フューイが階段を降りて一階の食堂へ赴くと、そこには先程とは違い、多くの兵士や宝物のメンテナンスを行う技術者たちが、既に食事を始めていました。とは言っても、一斉に食べ始めるわけではなく、決まった時間内であれば各々自由で良いようです。

ただボンシックが言ったように、兵の半分は王宮の方に取られているらしく、それなりに空席が目立ちます。フューイは、なるべく人のいない所を選んで座りました。それを見計らって、スタッフが彼の元へ食事を運んできます。

辺りを眺めると、向こうの方でゾルウッドと接客係のレネフィルが親し気に談笑しています。ゾルウッドって割とお調子者みたいですから、もう彼女と仲良くなっているようですね。セクハラなどして、騒ぎを起こさなければ良いのですが。

そのゾルウッド、フューイが食事をしている事に気がつき、軽く手を振りました。勿論、フューイは無視をします。小太りの中年細工師は、ヤレヤレといったポーズを見せ、再びレネフィルとのやりとりを楽しみました。

フューイは手早く食事を済ましたあと、頭の隅にこびりついている疑問を反芻しながら、食後のコーヒーをすすっています。

やはりおかしい。そもそもどうして、オレたちなんだ。あのゾルウッドという奴もそれなりの細工師のようだが、王宮にだって細工師はいるだろう。何故、そいつらを差し置いて、民間の技術者を使うのかがわからない。

みなさん、気がつきました? これはニールのパパが抱いた疑問と同じです。これから何百年も先、これから挑戦する宝物庫の扉の向こう側に存在する宝を前にして、自分と同じ事を考える人がいるなんて、フューイは思ってもいないでしょうね。それを考えると、ちょっと可笑しくなってきます。

辺りの兵士や技術者にこの疑問をぶつけても、有用な情報が得られるとは思えなかったフューイは、コーヒーカップを皿に戻すとすぐに自室へと帰っていきました。

さて翌日の朝。今日から本格的に鍵開け作業に入ります。先攻は、フューイです。彼とゾルウッドは、まずは詰め所に居る宝物警備隊長の元を訪ね、問題の宝物棟へ入る許可を得ます。これは、必ず経なければならない手続きです。彼らのような部外者ばかりではなく、宝物のメンテナンスをする技術者たちも同じです。相当に厳しいんです。
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