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扉の奥の秘宝 (3) お得意さま

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もう、おわかりですね。ここエンシャント・ケイブは骨董屋なんです。しかも家具とか皿とか、そういう類の商品は殆ど扱っておりません。かつての英雄が使用したとされる剣、世界を滅ぼそうとした魔法使いの水晶玉、等々。少年の心を持った大人たちが、血沸き肉躍るような品で一杯のお店なんです。つまり、お客の殆どは男性なんですね。

そして会員制の名の通り、この店に出入りする為には試験が必要でした。まぁ、店主と二言三言話すだけで、大抵はパスできるんですけどね。

さて、お店の中にはカウンター形式のカフェがあって、今もお客たちが骨董店のオーナーが淹れたコーヒーを楽しんでいます。

「なぁ、セディ。今日は家族と一緒に上の店に来たんだろ? こんな所で、油を売っていていいのかい」

七十近いオーナーが、ニールのパパにコーヒーを差し出しました(セディというのは、パパの名前です)。

「そうなんですけどね。最近、妻がうるさくて中々に来られなかったでしょう。もう、ちょっと我慢ができなくて……」

パパが、バツの悪そうな顔をして答えます。パパは、このお店の熱心な顧客なのでした。

「奥さんとの仲が上手く行かなくなったって、ワシのせいにしないでくれよ」

オーナーのゼペックが、冗談めかしに笑います。実はこの老人、数年前までは地上に建っているショップのオーナーだったのですが、息子夫婦にそちらの経営権を譲り、自分は趣味と実益を兼ねたこの店を新たに開店させたのでした。

「セディーも大変だねぇ。ま、そこんところ、ウチの奥さんは物分かりがいいんで助かってるけどさ」

パパの横に鎮座した、これまた過去の遺物にドップリとつかっている三十半ばの少年マルロンが、カフェオレをすすります。

「もう、マルロンまでそんな事。でも羨ましいなぁ。そういうところは、ウチの妻にも見習ってほしいよ」

パパが値段に見合わない、上等のコーヒーを口に含みました。

「ところでお二人さん。実は当店を大変ごひいきにして頂いているお礼に、耳寄りな情報があるんだけど聞くかい?」

ゼペックが、短く白いあごひげを撫でながら言いました。

「耳寄りな情報? また掘り出し物ですか?」

早速、マルロンが食いつきました。実はこのぽっちゃりとした体形の男、目玉商品だった「癒しの剣」の購入に関して、パパに後れを取っていたのです。悩みに悩んだ末、意を決してお店に来たのですが、時すでに遅し、パパがタッチの差で買い求めていたのでした。

「あぁ、その通り。実は今、ポケットの中に入ってるんだ」

店主がイタズラっぽく笑い、上着のポケットからある品を取り出します。
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