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魔女の薬 (13) コリスの推理

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「私が町でかいだ臭いと、さっき調合室で感じた臭い、そして今ここに漂っている臭い。みんなわずかな臭いだけど、全部同じに思えるからよ。

つまりあなたが調合室で爆発させて飛散した薬が気化して、町へ流れ出たのは明らかだわ」

コリスは最高位の魔女です。ネリスはその判断を、受け入れるしかありませんでした。

「でも、でも、それでもおかしいわ。私が作っていたのは、気つけの薬です。それが漏れたって、皆が元気になるだけでしょう?」

ネリスは、疑問をぶつけます。

「いえ、それは違うわ、ネリス。この臭いは、気つけ薬のゲンキノールではありません。あなた、ちゃんと原料になる薬のラベルを確認したの?」

コリスが、詰問します。

「もちろんですよ。間違えるはずがありません。っていうか、それじゃあ師匠は、町にまかれた薬は何だっていうんですか」

勝手な事をして大失敗をしたのは認めつつも、納得がいかない様子のネリス。

「じゃぁ、保管庫に行ってみましょうか」

コリスは既に、真相へたどり着いているようです。

様々な薬の原料が貯蔵されている保管庫。それは調合室のある棟と、渡り廊下で繋がっている隣の棟にありました。

「さぁ、ネリス。あなたはどの棚の薬を使ったの?」

下手人を保管庫に引っ立てたコリスが言いました。

「えぇっと……、心に関する薬はあそこの棚だから……」

ネリスは左奥にある棚から、小分けされた瓶を一つ取り出しました。最初の大掛かりな器具に使った上に、失敗を隠す為の作業にも使ったので、結構な量が減っています。ネリスったら、こっちはどうやって誤魔化すつもりだったんでしょう。

「やっぱりね。これはゲンキノールではありません」

コリスが、ピシャリと言い放ちました。

「え? そんなはずは……?」

ネリスが、思わず叫びます。

一体これは、どういう事なのでしょうか?

「ほら、ゲンキノールはこっちです」

コリスは、弟子が手を伸ばした棚の隣にある薬びんを取り出しました。そして二つの薬瓶を並べます。ネリスは、目の前に置かれた薬びんのラベルを見比べました。

「あっ!」

どうやらネリスは、自分がとんでもない勘違いをした事に、ようやっと気がついたようです。

「これは……、ワスレノール」

新米魔女は、自らが使った薬が間違っていた事を悟りました。

じつはここで、ひとつ種明かしがあります。ゲンキノールとワスレノール。全然違う名前の薬を、いかにネリスが新米魔女とはいえ、間違えるはずがないと思っていらっしゃいませんか?

なるほど、普通ならば確かにそうです。間違うはずがありません。でもここに秘密があるのです。
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