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パパの魔法 (14) パパしてやられる

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パパが抜き足差し足で物置に向かうのを、ママが見とがめて問いただすと、パパは、

「いや、ママ。今度は、本当にすごいんだ。かくかくしかじか……」

と、興奮気味に古道具屋から仕入れたものを自慢し始めます。でもやっぱりママから見れば、とんだインチキ臭い品なのです。

「はぁ? 何ですって? ”癒しの剣”? そんなもの、偽物に決まってるでしょう!」

ママは、パパの戦利品を取り上げて、しげしげと観察します。確かに古い品のようですし、細工も綺麗です。だけど錆だらけだし、とても価値のある物とは思えません。

「そんな事ないぞ。その造り、ただ者の仕業じゃない。これは、昔々に王家の秘宝とされていたものに間違いないんだよ」

パパは、力説します。

でもママは、

「切ったり突いたりしたら、その部分のケガや病気が治るですって? そんなウソみたいな貴重品が、パパの買える値段で古道具屋に置いてあるもんですか」

と言って、パパに剣を押しつけました。

「だから、掘り出しものなんだよ……」

「じゃぁ、パパ。今日の仕事で、腕をすりむいて来たわよね。その剣で切ってみたら? 即座に治るはずだわよね」

ママが、理路整然と詰問します。ママには、そういう”きらい”があるんです。

「えぇ~? でも、もしそれで腕が切れちゃったら、どうするんだよ?」

「……あぁ、もういいわ。早いとこ、それを物置に仕舞ってちょうだい。それから向こう三カ月、お小遣いを三割減にするからそのつもりで」

「そ、そんな! 」

漫才みたいなオチがついたところで、ママは道楽夫に判決を言い渡します。でも、ママには逆らえません。パパは渋々、剣を物置の奥の棚に丁寧にしまい、ママの後について、一階へと戻りました。

さて、話を今に戻します。

パパとママが食堂へ行くと、ニールが食卓の椅子に座ってプンプン怒ってます。

「もう、二人でどこへ行ってたの? ボク、もうお腹ペコペコだよ!」

パパとママが話している間に、いつもの朝ごはんの時間は、とっくに過ぎてしまったようです。

「ごめん、ごめん。今すぐに作るわね。あ、そうそうお詫びにパパが、何かオモチャを買ってくれるって。あ、もちろん、パパのお小遣いの中からね」

ママが、ニールをなだめます。

「お、おい。そりゃどういう……」

突然の事に、パパは唖然としてしまいました。稼ぎは全部差し出す、という約束を破られたママからのお仕置きです。パパはますます、経済的にもママに頭が上がらなくなってしまったようですね。

パパは我が身の不幸をかみしめながら、ふと

「昨日の女の子も、大人になったらママみたいになるのかな」

と考えて、キッチンで料理を作るママの後姿を少しの間、じっと見つめているのでした。


【パパの魔法・終】
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