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パパの魔法 (13) パパへこむ

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「え!? 僕のお金って……」

最初はママが何を言っているのか全く分かりませんでしたが、パパの頭の中で色々な事が少しずつ繋がっていきます。

あの時、ママは”ヘソクリで買った”と言ったよな。ヘソクリとは”黙って貯めたお金”という意味だ。だから、ママがそう言うお金で僕の靴を……。

あっ!

ここでパパは、ある事に気がつきました。ママは「ヘソクリで買った」とは言いましたが「私のヘソクリで買った」とは、一言も言ってはいませんでした。つまり「パパのヘソクリで買った」という意味だったのです。

パパは、体から一気に力が抜けました。

しかしこの考えだと、秘密の場所からお金を抜き出したのは、ママという事になります。

「で、でもどうやって。あの場所は秘密だし、たとえ分かったとしても、君に銀色のケースを取る事は出来ないだろう?」

ヘソクリを諦めたパパが、今度は疑問を一気にママへとぶつけます。

「あぁ、それは簡単な話よ。パパがあそこにお金を運んだ時、たまたま屋根裏部屋で、収納している季節ものの整理をしていたの。

で、いきなり窓の外にパパの姿が見えたから、窓の下の方にへばりついて、何をしているのか覗いていたのよね。はっきりとは見えなかったけど、何か上の方でゴソゴソしているのは分かったわ」

パパは”そんな事、気づきもしなかった”と、言わんばかりの顔をしています。

「それでパパが仕事に行った後、風の精に頼んで、パパが何かをしていた場所を調べてもらったの」

風の精とはママが魔法で呼び出せる精霊の一つで、普段はお掃除の時にゴミを集めるのを手伝ってもらっています。なるほど、これで納得です。風の精に銀色の貯金箱を持って来させて、中身を抜き取ったんですね。

「そ、そんなぁ」

パパの情けない声が、沸々と立ち昇っているヤカンの湯気に溶け込みました。

これだけ聞くと、ママがトンデモナイ悪妻みたいに感じるかも知れません。でも、違うんです。子供が出来たと分かった時、その子に手が掛からなくなるまでは、どちらかが働いて、どちらかが家にいる事を決めたと、この物語の途中でお話ししましたよね。

その際、家計は家にいる方が取り仕切るのだから、働く方は決して稼いだお金を隠したりしない。包み隠さず報告するように硬く約束をしたのです。パパはきちんとお小遣いをもらっているのに、約束を破っていたのですから、これは仕方のない事ですよね。

それにパパがヘソクリで買って来る物といったら、おかしなものばかりなんです。大抵は常連になっている古道具屋から仕入れてくるのですが、ママに言わせれば、それはガラクタという他ありません。おかげで地下の物置がいっぱいいっぱいになってしまっていると、ママはいつも嘆いていました。

この前も、こんな事がありました。
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