ヴォルノースの森の なんてことない毎日

パパの魔法 (６) パパ、女の子と再会す

え？ そんな職業で儲かるのかですって？

結論から言えば、割と儲かるのです。高い所で作業をする場合、大掛かりなものであれば足場を組みますが、コストがかかります。パパ一人の活躍で何とかなる規模であれば、足場を組まないで済む分、依頼主が払うお金は少なく収まります。

それにハシゴを使ったり足場を汲んだりすれば、時には事故が起こります。そうなると大変です。でも、パパなら大丈夫です。高いところから落っこちて怪我をする心配はありません。

パパは親方の指示の元、何度も何度も屋根の上と地上を行ったり来たりしました。

小一時間ほど、たった頃でしょうか。

「よっしゃ、完成」

親方が満足げに、そして自慢げに声をあげました。最初に思ったよりも雨漏りの箇所が多かった事、また割と大きな建物なので、屋根自体が広かった事もあって、それなりに時間が掛かったようです。

親方は階段を使って下に降り、依頼主からお金を貰います。早々に解決をしてお客さんも嬉しそうです。

「ご苦労さん。じゃぁ、これ支払いな」

親方は受け取ったお金の中から幾らかを取り出して、パパに渡しました。いつもニコニコ現金払いが基本です。

「ありがとうございます。またよろしくお願いします」

パパは親方にお礼を言って、最初の現場を後にしました。

さぁ、次の現場は橋の点検です。ヴォルノースの南の森には割と深い渓谷が幾つもあって、そこには橋が架かっています。ですが古いものもあり、安全を保つには定期的な点検が欠かせません。普通は命綱をつけた検査技師が、危険を顧みず橋の下へ潜り込んで検査するのですが、パパがいれば話は別でした。

パパは橋の二級検査技師の資格を持っていて、まずはパパがざっと調べて、怪しそうな所だけ、一級の資格を持つ技師が確認するのです。全てを普通の人が検査するよりも、遥かにリスクが低くなるのは言うまでもありません。

また橋の検査は役所のお仕事なので、何より取りっぱぐれがありません。パパにとっては、非常に安定した収入源なのでした。

それからも大工の手伝い、高いところのペンキ塗りなど幾つかの作業をこなし、午後四時ころには今日の仕事を全て終えました。

「あぁ、やっと終わった～。じゃぁ、いつもの古道具屋へ寄って、それから帰るとしようかな」

パパの自転車は、お気に入りの古道具屋への道筋を辿ります。パパはお酒をあまり飲めないので、仕事帰りの楽しみといえば、パパ好みのアンティークをたくさん置いてある店での憩いのひと時でした。もっともママに言わせれば、そういったものは”ガラクタ”と評されるわけですが。

心うきうきとしてペダルをこいでいると、朝、少女と出会った大樹のあたりに差し掛かりました。何の気なしにそちらへ目をやると、どうしたことでしょう。また、あの女の子がいるではありませんか。