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救世主の帰還
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ところ変わって、ここはネッドの自宅。
居間でシャミー、メル、アリシアがくつろいでいた。
「あ~、ほんと疲れたわね」
メルが、ドーナツを頬張る。
「でも、あの連中、あそこに放置しておいて良かったの?」
こちらは、クッキーをほっぺたに含んだシャミー。つい先ほどまで、悪党一味の人質になっていたとは思えない立ち直りぶりだ。
「大丈夫ですわよ。全員、私が念入りに、イバラの戒めを施しておきましたから」
アリシアが、紅茶をすする。これで三杯目である。
「あぁ、トゲトゲのついたロープね。でもあれって、かなりエゲツないわよね」
シャミーが”おぉ、ヤダヤダ”と言わんばかりに、自分の体を抱きしめた。
「でしょ? 私も、そう言ったのよ」
いとこ同士が、共鳴する。
「エゲツないって、あなた方……」
アリシアが反論しようとした時、玄関ドアが開く音がした。
「お兄ちゃんが、帰って来たのかしら」
兄が助けに来てくれなかったのを、未だに根に持っていたシャミーが手ぐすねを引く。
「よぉ、三人娘、お揃いだな」
ネッドを肩に担いだリュランが現れた。
「ちょっと、ネッド大丈夫なの?」
まずアリシアが、帰宅した主に駆け寄る。残る二人もそれに続いた。
「あぁ、大丈夫だ。かなり疲れているけど、命に別状はない」
リュランはとりあえず、眠っているネッドをソファーに寝かせる。
「……もしかして”あれ”が出ちゃったの?」
シャミーが、心配そうにリュランに尋ねた。
「あぁ。だけど、ちゃんと戻って来てくれたよ」
リュランが、横になったネッドの肩に手をかける。アリシアも、安堵の表情を見せた。
「ちょっと、えぇっと……リュラン・ホーネットさんですよね、王都から来た。これは、どういう事なんですか? ネッドは、何で気を失ってるです? それに”あれ”って……」
一人だけ事情を知らないメルが、不満そうに尋ねる。
「メル・ライザー。申し訳ないが、俺の口からは話せない」
リュランが、メルと目を合わせた。
「話せないって、何で? 私はネッドの従姉で、ギルドの第三主幹よ。親戚であり、冒険者としてのネッドを管理する立場の私に、話せないってどういう事? シャミー、アリシア、あなた達だって……」
二人に助けを求めるが、彼女たちは視線をそらし黙して語らない。
「ちょっと!」
メルが、思わず語気を強めた。
「あんたを信用して、少しだけ話す。もちろん、これは一切他言無用だ」
リュランは、メルと向き合った。
「ここに居るあんた以外の者とネッドは、凄く大きな秘密を共有している。魔界の住人であるアリシアは別として、他は秘密がばれれば反逆罪として死刑だってあり得る身だ。
だからネッドを差しおいて、俺の口からそれをあんたに言うわけにはいかない」
メルがシャミーとアリシアに目をうつすと、彼女達は、それまでとは打って変わった真剣な表情でメルを見つめる。
部屋は、重苦しい空気で包まれた。
「……わかったわ、今は帰る」
”反逆罪”、”死刑”と聞いて、それでも腰が引けたわけではないと言ったらウソになる。だが、それを彼らに問いただせば、きっとネッドに迷惑をかける事になるだろう。そう思ったメルは、素直にその場を後にした。
「さてと、じゃぁ、救世主様をベッドまでお運びするか」
テーブルにあるお菓子を二つ三つ頬張ったリュランは、ネッドを再び担いで二階の寝室へと向かう。アリシアも、それを手伝った。
居間に一人残り、階段の上を見つめるシャミー。
「ゆっくり休んで、お兄ちゃん」
彼女が、静かに呟いた。
居間でシャミー、メル、アリシアがくつろいでいた。
「あ~、ほんと疲れたわね」
メルが、ドーナツを頬張る。
「でも、あの連中、あそこに放置しておいて良かったの?」
こちらは、クッキーをほっぺたに含んだシャミー。つい先ほどまで、悪党一味の人質になっていたとは思えない立ち直りぶりだ。
「大丈夫ですわよ。全員、私が念入りに、イバラの戒めを施しておきましたから」
アリシアが、紅茶をすする。これで三杯目である。
「あぁ、トゲトゲのついたロープね。でもあれって、かなりエゲツないわよね」
シャミーが”おぉ、ヤダヤダ”と言わんばかりに、自分の体を抱きしめた。
「でしょ? 私も、そう言ったのよ」
いとこ同士が、共鳴する。
「エゲツないって、あなた方……」
アリシアが反論しようとした時、玄関ドアが開く音がした。
「お兄ちゃんが、帰って来たのかしら」
兄が助けに来てくれなかったのを、未だに根に持っていたシャミーが手ぐすねを引く。
「よぉ、三人娘、お揃いだな」
ネッドを肩に担いだリュランが現れた。
「ちょっと、ネッド大丈夫なの?」
まずアリシアが、帰宅した主に駆け寄る。残る二人もそれに続いた。
「あぁ、大丈夫だ。かなり疲れているけど、命に別状はない」
リュランはとりあえず、眠っているネッドをソファーに寝かせる。
「……もしかして”あれ”が出ちゃったの?」
シャミーが、心配そうにリュランに尋ねた。
「あぁ。だけど、ちゃんと戻って来てくれたよ」
リュランが、横になったネッドの肩に手をかける。アリシアも、安堵の表情を見せた。
「ちょっと、えぇっと……リュラン・ホーネットさんですよね、王都から来た。これは、どういう事なんですか? ネッドは、何で気を失ってるです? それに”あれ”って……」
一人だけ事情を知らないメルが、不満そうに尋ねる。
「メル・ライザー。申し訳ないが、俺の口からは話せない」
リュランが、メルと目を合わせた。
「話せないって、何で? 私はネッドの従姉で、ギルドの第三主幹よ。親戚であり、冒険者としてのネッドを管理する立場の私に、話せないってどういう事? シャミー、アリシア、あなた達だって……」
二人に助けを求めるが、彼女たちは視線をそらし黙して語らない。
「ちょっと!」
メルが、思わず語気を強めた。
「あんたを信用して、少しだけ話す。もちろん、これは一切他言無用だ」
リュランは、メルと向き合った。
「ここに居るあんた以外の者とネッドは、凄く大きな秘密を共有している。魔界の住人であるアリシアは別として、他は秘密がばれれば反逆罪として死刑だってあり得る身だ。
だからネッドを差しおいて、俺の口からそれをあんたに言うわけにはいかない」
メルがシャミーとアリシアに目をうつすと、彼女達は、それまでとは打って変わった真剣な表情でメルを見つめる。
部屋は、重苦しい空気で包まれた。
「……わかったわ、今は帰る」
”反逆罪”、”死刑”と聞いて、それでも腰が引けたわけではないと言ったらウソになる。だが、それを彼らに問いただせば、きっとネッドに迷惑をかける事になるだろう。そう思ったメルは、素直にその場を後にした。
「さてと、じゃぁ、救世主様をベッドまでお運びするか」
テーブルにあるお菓子を二つ三つ頬張ったリュランは、ネッドを再び担いで二階の寝室へと向かう。アリシアも、それを手伝った。
居間に一人残り、階段の上を見つめるシャミー。
「ゆっくり休んで、お兄ちゃん」
彼女が、静かに呟いた。
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