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ネッドとリュラン
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「当然だね。解き放たれた以上、もうお前に用はない。僕の力には誰も敵わないんだから、遠慮する必要もない。まぁ、好きに生きて行くさ」
「シャミーは、シャミーはどうなるんだ。そんなお前を、絶対に認めないぞ」
リュランが、語気を強めた。
「あぁ、シャミーね。あいつともお別れさ。もう、うんざりしてたんだ。生意気で、兄を兄とも思わない。ロクな飯も食わせないくせに、朝から晩まで僕をこき使う。守銭奴っていう他ないね。最悪の妹だよ。
もっとも、商才はあるみたいだから、僕がいなくなってもズル賢く生き延びられるだろうな」
「なるほどね。じゃぁ、俺ともここでおさらばって事か」
「あぁ、ただしお前には、この世とおさらばしてもらう」
「なに?」
リュランの心臓の鼓動が、一気に早くなる。
「お前は、僕の秘密を知っている。しかも、諜報省の人間だ。生かしておくわけにはいかないんだよ。まぁ、シャミーの方は何を言おうが、子供の戯言で済まされるだろうから心配はしていないし、損得勘定で動くあいつが言うわけないさ」
ネッドが右手を前に出して人差し指を伸ばすと、その先にバチバチと光が輝き始めた。そしてすぐに、そこからミニサイズの雷が放たれる。ミニサイズとは言っても、人ひとり焼き殺すには十分すぎる威力である。
驚いたリュランだったが、素早く横へ飛んで雷をかわした。
「何をするんだ!」
「言ったろう? この世とおさらばしてもらうって」
ネッドは次々に雷を飛ばす。リュランは避けるのに精いっぱいで、近づく事すらかなわない。
「やめろ、ネッド!」
「やめないね」
ネッドは、相手を小ばかにしたように笑った。
「ふふっ。お前は、こう考えているんだろう。”何で、でかい雷で一気に殺さないんだ”ってね。それじゃぁ、面白くないじゃないか。今まで散々、偉そうにされた分、タップリお礼をしなくちゃなって事さ」
雷は、威力も数も段々と大きくなっていく。リュランは、次第に追い詰められていった。
気がつくとリュランは、大きな岩の前にいた。左右には背の高い木々が密生しており逃げ場はない。
「リュラン、そろそろお別れだ。僕は拳にメタルゴーレムの硬さと力を機能付加する。これで殴れば、間違いなくお前の頭は砕け散る。
断っておくが、アンチ魂石の力が通用するなんて思うなよ。左胸にもメタルゴーレムの硬さを機能付加するから、お前の拳が心臓に届く事はない。だが、まぁ無駄だとは思うが、せいぜい最後まであがいてみせろ。お前は本当に、諦めの悪い男だからな」
ネッドは、散々いたぶった小動物にとどめを刺すような笑みを浮かべ、リュランの方へ突進した。ネッドが走り抜けると周りの木々がその風圧で大きく揺らぎ、木の葉はまるで嵐が訪れたようにざわめいた。
右の拳を引き、防御の姿勢をとるリュラン。
「じゃぁな、リュラン!」
黄色く金属化したネッドの拳がリュランめがけて繰り出され、その風圧で周りの空気が異様に歪む。次の瞬間、木々のざわめきが最高潮に達したかと思うと、それまでの喧騒が嘘のように森は一気に静まりかえった。
穏やかな風が吹き始め、草は、そよそよと揺れている。月はただ煌々と輝き、普段と変わらぬ森をゆったりと見守っていた。逃げ出していた動物たちも、いつの間にか茂みや樹木の上へと舞い戻り、暗闇の中に映し出される二人のシルエットを興味深そうに眺めている。
フクロウが一声、ホーッと鳴いた。
柔らかな草の上、差し向かいで立ち尽くすネッドとリュラン。ネッドの左胸は金属化が解かれており、右拳はリュランの顔面数センチ手前で留まっていた。
「寸前で止めるって、わかってたのか?」
金色の目のネッドが問う。
「俺様を誰だと思っている。お前の詰まらぬ考えなんぞ、百万手さきまでお見通しだ」
リュランの右拳も、全く動いてはいなかった。
「食えない奴だ」
僅かにほほ笑んだネッドがそう言うと、彼は静かに目を閉じる。同時に、体は人間のそれへと返り、意識を失くしたネッドは、そのままリュランに体を預けた。
「お疲れさん」
リュランはネッドの背中をポンと叩き、戻って来た友をねぎらった。
「シャミーは、シャミーはどうなるんだ。そんなお前を、絶対に認めないぞ」
リュランが、語気を強めた。
「あぁ、シャミーね。あいつともお別れさ。もう、うんざりしてたんだ。生意気で、兄を兄とも思わない。ロクな飯も食わせないくせに、朝から晩まで僕をこき使う。守銭奴っていう他ないね。最悪の妹だよ。
もっとも、商才はあるみたいだから、僕がいなくなってもズル賢く生き延びられるだろうな」
「なるほどね。じゃぁ、俺ともここでおさらばって事か」
「あぁ、ただしお前には、この世とおさらばしてもらう」
「なに?」
リュランの心臓の鼓動が、一気に早くなる。
「お前は、僕の秘密を知っている。しかも、諜報省の人間だ。生かしておくわけにはいかないんだよ。まぁ、シャミーの方は何を言おうが、子供の戯言で済まされるだろうから心配はしていないし、損得勘定で動くあいつが言うわけないさ」
ネッドが右手を前に出して人差し指を伸ばすと、その先にバチバチと光が輝き始めた。そしてすぐに、そこからミニサイズの雷が放たれる。ミニサイズとは言っても、人ひとり焼き殺すには十分すぎる威力である。
驚いたリュランだったが、素早く横へ飛んで雷をかわした。
「何をするんだ!」
「言ったろう? この世とおさらばしてもらうって」
ネッドは次々に雷を飛ばす。リュランは避けるのに精いっぱいで、近づく事すらかなわない。
「やめろ、ネッド!」
「やめないね」
ネッドは、相手を小ばかにしたように笑った。
「ふふっ。お前は、こう考えているんだろう。”何で、でかい雷で一気に殺さないんだ”ってね。それじゃぁ、面白くないじゃないか。今まで散々、偉そうにされた分、タップリお礼をしなくちゃなって事さ」
雷は、威力も数も段々と大きくなっていく。リュランは、次第に追い詰められていった。
気がつくとリュランは、大きな岩の前にいた。左右には背の高い木々が密生しており逃げ場はない。
「リュラン、そろそろお別れだ。僕は拳にメタルゴーレムの硬さと力を機能付加する。これで殴れば、間違いなくお前の頭は砕け散る。
断っておくが、アンチ魂石の力が通用するなんて思うなよ。左胸にもメタルゴーレムの硬さを機能付加するから、お前の拳が心臓に届く事はない。だが、まぁ無駄だとは思うが、せいぜい最後まであがいてみせろ。お前は本当に、諦めの悪い男だからな」
ネッドは、散々いたぶった小動物にとどめを刺すような笑みを浮かべ、リュランの方へ突進した。ネッドが走り抜けると周りの木々がその風圧で大きく揺らぎ、木の葉はまるで嵐が訪れたようにざわめいた。
右の拳を引き、防御の姿勢をとるリュラン。
「じゃぁな、リュラン!」
黄色く金属化したネッドの拳がリュランめがけて繰り出され、その風圧で周りの空気が異様に歪む。次の瞬間、木々のざわめきが最高潮に達したかと思うと、それまでの喧騒が嘘のように森は一気に静まりかえった。
穏やかな風が吹き始め、草は、そよそよと揺れている。月はただ煌々と輝き、普段と変わらぬ森をゆったりと見守っていた。逃げ出していた動物たちも、いつの間にか茂みや樹木の上へと舞い戻り、暗闇の中に映し出される二人のシルエットを興味深そうに眺めている。
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リュランの右拳も、全く動いてはいなかった。
「食えない奴だ」
僅かにほほ笑んだネッドがそう言うと、彼は静かに目を閉じる。同時に、体は人間のそれへと返り、意識を失くしたネッドは、そのままリュランに体を預けた。
「お疲れさん」
リュランはネッドの背中をポンと叩き、戻って来た友をねぎらった。
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