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凶魔王とウソ
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ゴワドン侯爵ことマリオンが、激闘中に思い描いた事の多くは的を射ていた。
数カ月前、確かに王都の南側の森で異変があった。ここで詳しくは記さないが、魔界で起きた大きな事件がこちらの世界にも影響を及ぼした結果である。もし異変が収まっていなかったら、王都はもちろんの事、世界全体が崩壊する事態に発展していたかも知れない。
そのカギを握っていたのが「凶魔王」であった。彼は魔界においても異形の悪魔で、支配よりも滅亡を選んだ存在である。そこで人間界と魔界の利害が一致をし、二つの世界は一時的に共闘した。ネッドとリュランが、アリシアと知り合ったのもこの時である。
凶魔王は想像を絶する力を持っており、人間・悪魔連合軍でも歯が立たなかったが、ネッドとアリシアが最高位の主従契約を結ぶ事により、凶魔王を魂石に変換する作戦が成功したのであった。
しかし脅威が去った途端、その魂石の強力な力に魅せられた裏切り者が現れ、石を我が物にしようと皆を襲った。あわやそれが裏切り者の手に落ちようとした時、苦肉の策としてネッドは自らの身に「凶魔王の魂石」を練り込んだのである。
人間に魂石を、しかも世界を亡ぼせる強大な悪魔の魂石を練り込む事など、古今東西聞いた事のない話であった。だがネッドはこれまたアリシアの力を借り、見事成功させたのである。
「おい、何言ってんだ。しっかりしろ。全部終わったんだ」
ネッドの思わぬ言葉に、リュランは狼狽する。
「違う。違うよ。何も終わってない。今、僕がやった事を見たろ。そしてこの体を見ろよ。これで、終わったって言えるのか!」
ネッドは手を広げ、自らの姿をことさら曝け出す。
「もう嫌だ。僕は化け物だ。あいつの魂石を体に入れた時に、ネッド・ライザーは死んだんだ。今ここに居るのは、世界を滅ぼしかねない悪魔なんだよ!」
「違う。違うぞネッド。あの時だって、お前は乗り切った。ちゃんと、人間の姿に戻ったじゃないか」
かつて同じ状況に立ち会ったリュランが、必死に説得を試みる。
「あぁ、こんな事ならウソをつくんじゃなかった。本当の事を言えば良かったんだ!
凶魔王は、もう死んだって!」
ネッドはひざまづき、頭をかきむしった。
そうなのだ。リュランたちは、ウソをついた。その場にいたシャミーも巻き込んでのウソだった。
異変について事なきを得た後、ネッドやリュランを始め、事態に関わった者達は王宮の厳しい詮議を受けた。世界を救った者たちに対して、まるで罪人のような扱いである。
魔界からこちらへ戻る時、ネッド、リュラン、シャミーは口裏を合わせる事を誓いあう。それは「凶魔王は、死んではいない。ネッドが、体の中に封じ込めただけだ」というウソである。魂石に変換した時点で、凶魔王は死んでいる。復活の目はゼロであった。
だがそれは、ネッドにとって過酷な運命を意味している。
世界を亡ぼせるほどの力を持ったネッドを、果たして国はどう扱うだろうか?
もっと小さな力なら、それは兵器として使えるかも知れない。だが全てを亡ぼす力を持ってしまえば、それは恐怖しか与えない。事実が知られれば、世界の全てがネッドの敵となるだろう。
誰もかなわないのだから、それでいいじゃないかって? もし、力を得たのがネッドでなければそうかも知れない。だが彼は”ストーンゴーレムのネッド”である。世界を支配する気なぞ、サラサラない。世界がそれを知った時点で、彼は自らの命を絶つだろう。争いを起こさぬために。
だがリュランやシャミーは、それを許せなかった。世界を救った愛する者が、世界の為に死ぬなんて、そんな理不尽を許すわけには行かなかったのだ。そこで凶魔王は封じられただけという、虚偽の事実を押し通す決意をしたのである。
リュランは王に、次のように報告した。
「ネッドは悪魔の力を借りて、凶魔王をその身に封じ込めました。よって凶魔王は、死んではいません、ネッドの生命力で一時的に封じ込めただけです。ネッドが死んでしまったり、体や精神にある程度以上のダメージがあれば、凶魔王はその戒めから解き放たれ復活します。
何より凶魔王自身が、そう宣言いたしました」
リュランの狡猾さが、ここにあった。
もしネッドの力を恐れるあまり彼を殺そうとしたり、彼を投獄しようものならば、それは凶魔王復活の可能性を高める事になる。そうなれば、世界は終わってしまだろう。だから世界を守るには、ネッドに危害を加えてはならない事になる。
王たちに、そう思わせたのである。
幸いにもネッドが凶魔王の魂石をその身に練り込んだ時、傍に居たのは、リュランとシャミー、そしてアリシアと裏切り者のみであった。裏切り者がネッドに成敗された今、彼と親しい者以外、この事実を知る者はいない。
王や側近は何日も討議を重ねたが、万が一、リュランの言い分が本当ならば、この国が世界崩壊の引き金となろう。また当然、自身の国が一番先に滅びてしまう。
彼らは全てを信じたわけではないが、”様子を見る”という先延ばしの結論に至ったのであった。そして王都に置くわけにも行かず、かといって目の届かぬ遠方へ追放するわけにも行かず、ネッドの希望とも相まった、彼の生まれ故郷ポーナイザルに居を移す事を了承したのだった。
「僕はもう耐えられないよ。心がざわつく時、いつも声が響くんだ。どんなに酷い事でも”やりたいように、やっちまえ”って。
でもそれは、凶魔王や他の誰かが言ってるんじゃない。僕自身が言ってるんだ。取り込んだ凶魔王の力が、倫理観を壊してしまう。そうなれば、本当の自分がむき出しになるんだよ。
僕は怖いんだ。本当の自分を見る事が。本当の自分に従う事が!」
リュランは、返す言葉もなく、ネッドのいう事を聞いていた。
「だからお前が、殺してくれ。今すぐに!」
ネッドが、再び懇願する。
数カ月前、確かに王都の南側の森で異変があった。ここで詳しくは記さないが、魔界で起きた大きな事件がこちらの世界にも影響を及ぼした結果である。もし異変が収まっていなかったら、王都はもちろんの事、世界全体が崩壊する事態に発展していたかも知れない。
そのカギを握っていたのが「凶魔王」であった。彼は魔界においても異形の悪魔で、支配よりも滅亡を選んだ存在である。そこで人間界と魔界の利害が一致をし、二つの世界は一時的に共闘した。ネッドとリュランが、アリシアと知り合ったのもこの時である。
凶魔王は想像を絶する力を持っており、人間・悪魔連合軍でも歯が立たなかったが、ネッドとアリシアが最高位の主従契約を結ぶ事により、凶魔王を魂石に変換する作戦が成功したのであった。
しかし脅威が去った途端、その魂石の強力な力に魅せられた裏切り者が現れ、石を我が物にしようと皆を襲った。あわやそれが裏切り者の手に落ちようとした時、苦肉の策としてネッドは自らの身に「凶魔王の魂石」を練り込んだのである。
人間に魂石を、しかも世界を亡ぼせる強大な悪魔の魂石を練り込む事など、古今東西聞いた事のない話であった。だがネッドはこれまたアリシアの力を借り、見事成功させたのである。
「おい、何言ってんだ。しっかりしろ。全部終わったんだ」
ネッドの思わぬ言葉に、リュランは狼狽する。
「違う。違うよ。何も終わってない。今、僕がやった事を見たろ。そしてこの体を見ろよ。これで、終わったって言えるのか!」
ネッドは手を広げ、自らの姿をことさら曝け出す。
「もう嫌だ。僕は化け物だ。あいつの魂石を体に入れた時に、ネッド・ライザーは死んだんだ。今ここに居るのは、世界を滅ぼしかねない悪魔なんだよ!」
「違う。違うぞネッド。あの時だって、お前は乗り切った。ちゃんと、人間の姿に戻ったじゃないか」
かつて同じ状況に立ち会ったリュランが、必死に説得を試みる。
「あぁ、こんな事ならウソをつくんじゃなかった。本当の事を言えば良かったんだ!
凶魔王は、もう死んだって!」
ネッドはひざまづき、頭をかきむしった。
そうなのだ。リュランたちは、ウソをついた。その場にいたシャミーも巻き込んでのウソだった。
異変について事なきを得た後、ネッドやリュランを始め、事態に関わった者達は王宮の厳しい詮議を受けた。世界を救った者たちに対して、まるで罪人のような扱いである。
魔界からこちらへ戻る時、ネッド、リュラン、シャミーは口裏を合わせる事を誓いあう。それは「凶魔王は、死んではいない。ネッドが、体の中に封じ込めただけだ」というウソである。魂石に変換した時点で、凶魔王は死んでいる。復活の目はゼロであった。
だがそれは、ネッドにとって過酷な運命を意味している。
世界を亡ぼせるほどの力を持ったネッドを、果たして国はどう扱うだろうか?
もっと小さな力なら、それは兵器として使えるかも知れない。だが全てを亡ぼす力を持ってしまえば、それは恐怖しか与えない。事実が知られれば、世界の全てがネッドの敵となるだろう。
誰もかなわないのだから、それでいいじゃないかって? もし、力を得たのがネッドでなければそうかも知れない。だが彼は”ストーンゴーレムのネッド”である。世界を支配する気なぞ、サラサラない。世界がそれを知った時点で、彼は自らの命を絶つだろう。争いを起こさぬために。
だがリュランやシャミーは、それを許せなかった。世界を救った愛する者が、世界の為に死ぬなんて、そんな理不尽を許すわけには行かなかったのだ。そこで凶魔王は封じられただけという、虚偽の事実を押し通す決意をしたのである。
リュランは王に、次のように報告した。
「ネッドは悪魔の力を借りて、凶魔王をその身に封じ込めました。よって凶魔王は、死んではいません、ネッドの生命力で一時的に封じ込めただけです。ネッドが死んでしまったり、体や精神にある程度以上のダメージがあれば、凶魔王はその戒めから解き放たれ復活します。
何より凶魔王自身が、そう宣言いたしました」
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もしネッドの力を恐れるあまり彼を殺そうとしたり、彼を投獄しようものならば、それは凶魔王復活の可能性を高める事になる。そうなれば、世界は終わってしまだろう。だから世界を守るには、ネッドに危害を加えてはならない事になる。
王たちに、そう思わせたのである。
幸いにもネッドが凶魔王の魂石をその身に練り込んだ時、傍に居たのは、リュランとシャミー、そしてアリシアと裏切り者のみであった。裏切り者がネッドに成敗された今、彼と親しい者以外、この事実を知る者はいない。
王や側近は何日も討議を重ねたが、万が一、リュランの言い分が本当ならば、この国が世界崩壊の引き金となろう。また当然、自身の国が一番先に滅びてしまう。
彼らは全てを信じたわけではないが、”様子を見る”という先延ばしの結論に至ったのであった。そして王都に置くわけにも行かず、かといって目の届かぬ遠方へ追放するわけにも行かず、ネッドの希望とも相まった、彼の生まれ故郷ポーナイザルに居を移す事を了承したのだった。
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でもそれは、凶魔王や他の誰かが言ってるんじゃない。僕自身が言ってるんだ。取り込んだ凶魔王の力が、倫理観を壊してしまう。そうなれば、本当の自分がむき出しになるんだよ。
僕は怖いんだ。本当の自分を見る事が。本当の自分に従う事が!」
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