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冥土の土産
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「まぁ、諜報省である君としても、真相を知らない内は、黄泉の国へ旅立てないだろう。化けて出られても迷惑だから、冥土への土産話をしようじゃないか」
ゴワドンが薄ら笑いを浮かべると、彼の姿が少しずつ暗闇に溶け出していった。
「それは、ご親切な事で」
リュランも、自らが携える剣に意識を集中させる。
「君たちが調べ上げたものは、おおむねについて当たっているよ。ただ、これは反乱ではない。革命なんだ。貴族にとっては甚だ迷惑だろうがね」
「革命ね。定番の言い訳だな」
本人の口から目論見が明かされたのを確認したリュランは、相手を罪人と見なした対応に切り替えた。
「調査したのなら、知っているだろう。私はこの国の弱者を救おうと、様々な行動をしてきた。平和的に行うため、あくまで自分は裏に隠れてね。大ぴらにやってしまえば、王宮内は混乱しただろうよ」
「じゃぁ、なぜそれを続けなかったんだ。立派な行動だったのに」
リュランが、疑問をぶつける。
「変わらなかったからだよ。いくらやっても変わらなかった。私とて、ドンドン年を取って行く。もう、今しかないんだ」
ゴワドンに掛かる影は、彼の半分ほどを既に覆い隠している。ただ異様にギラギラとした目が闇夜に光っているだけた。
「だから、魔人を軍隊に仕立ててクーデター、いや革命ってわけか」
「その通り。ただ、一つ都合の悪い事が起きたんだ。今回の探索のきっかけである、この森周辺で起こった惨殺事件だよ」
ゴワドンが、事の始まりを語り始める。
「やはり、あれもお前の仕業だったのか」
「少し違うな。私たちは研究の末、魔人を四体作り上げた。ただ、出来が悪い者も含まれていてね。その中の一体が勝手に動いて、旅人たちを殺してしまったんだ。全く困ったもんだよ」
リュランの頭の中で、色々なものが繋がっていく。
「なるほどね。そのまま噂が広がれば、大規模な捜索が行われ、お前たちの野望が露見する恐れが高かった。だから、お前自らが出張って来て、ウソの解決をデッチ上げたってわけだ。
一度解決してしまえば、二度と森を探索しようなんて事にはならないからな」
「全くその通り。いや、君の洞察力は素晴らしい。ただね、それが私にとっては恐ろしいのだよ。今回は上手くいったが、いつまた君が事態を暴こうとするか気が気ではない。
今回の探索、私が大人しく君の同行を許した理由が分かるかい? 」
ゴワドンの姿の殆どが、闇に混ざって行く。
「つまり厄介者の俺を葬るのが、今回の第二の目的であったって事か。いや、光栄だね。侯爵様に、ここまで手腕を認めらたんだから」
「わかりが早くて助かるよ、ホーネット君。全く関係のない所で君を暗殺すれば、かえって疑いの目は私に向くだろう。
だが事件が解決した後、祝賀会で泥酔した君が、不良魔石で狂暴化した魔物に殺されたとなれば話は別だ。そのためには、君が今回の探索に参加する必要があったってわけさ」
既にリュランに見えるものは、恐ろしい光を放つ反逆者の両眼だけしかなくなった。
「じゃぁ、冥土の土産とやらのために、一つ教えてもらおうか。どうして、リルゴットの森なんだ?」
リュランが、刀の柄に手をかける。
「そうだな。ここは、王都から近からず遠からずの距離にある。私が行き来するのに都合が良いんだよ。魔物も沢山いるしね。隠れ蓑には丁度いい。
君も既に知っているだろうが、ミミックの面で代役を仕立てれば、一週間程度は全く問題なくここへ来られる。
それに……」
「それに?」
リュランが、問い返した。
「ここは、全ての始まりの地だからさ!」
闇の中から再び現れ出たゴワドンは、その全身を深紅の鎧に包まれていた。
ゴワドンが薄ら笑いを浮かべると、彼の姿が少しずつ暗闇に溶け出していった。
「それは、ご親切な事で」
リュランも、自らが携える剣に意識を集中させる。
「君たちが調べ上げたものは、おおむねについて当たっているよ。ただ、これは反乱ではない。革命なんだ。貴族にとっては甚だ迷惑だろうがね」
「革命ね。定番の言い訳だな」
本人の口から目論見が明かされたのを確認したリュランは、相手を罪人と見なした対応に切り替えた。
「調査したのなら、知っているだろう。私はこの国の弱者を救おうと、様々な行動をしてきた。平和的に行うため、あくまで自分は裏に隠れてね。大ぴらにやってしまえば、王宮内は混乱しただろうよ」
「じゃぁ、なぜそれを続けなかったんだ。立派な行動だったのに」
リュランが、疑問をぶつける。
「変わらなかったからだよ。いくらやっても変わらなかった。私とて、ドンドン年を取って行く。もう、今しかないんだ」
ゴワドンに掛かる影は、彼の半分ほどを既に覆い隠している。ただ異様にギラギラとした目が闇夜に光っているだけた。
「だから、魔人を軍隊に仕立ててクーデター、いや革命ってわけか」
「その通り。ただ、一つ都合の悪い事が起きたんだ。今回の探索のきっかけである、この森周辺で起こった惨殺事件だよ」
ゴワドンが、事の始まりを語り始める。
「やはり、あれもお前の仕業だったのか」
「少し違うな。私たちは研究の末、魔人を四体作り上げた。ただ、出来が悪い者も含まれていてね。その中の一体が勝手に動いて、旅人たちを殺してしまったんだ。全く困ったもんだよ」
リュランの頭の中で、色々なものが繋がっていく。
「なるほどね。そのまま噂が広がれば、大規模な捜索が行われ、お前たちの野望が露見する恐れが高かった。だから、お前自らが出張って来て、ウソの解決をデッチ上げたってわけだ。
一度解決してしまえば、二度と森を探索しようなんて事にはならないからな」
「全くその通り。いや、君の洞察力は素晴らしい。ただね、それが私にとっては恐ろしいのだよ。今回は上手くいったが、いつまた君が事態を暴こうとするか気が気ではない。
今回の探索、私が大人しく君の同行を許した理由が分かるかい? 」
ゴワドンの姿の殆どが、闇に混ざって行く。
「つまり厄介者の俺を葬るのが、今回の第二の目的であったって事か。いや、光栄だね。侯爵様に、ここまで手腕を認めらたんだから」
「わかりが早くて助かるよ、ホーネット君。全く関係のない所で君を暗殺すれば、かえって疑いの目は私に向くだろう。
だが事件が解決した後、祝賀会で泥酔した君が、不良魔石で狂暴化した魔物に殺されたとなれば話は別だ。そのためには、君が今回の探索に参加する必要があったってわけさ」
既にリュランに見えるものは、恐ろしい光を放つ反逆者の両眼だけしかなくなった。
「じゃぁ、冥土の土産とやらのために、一つ教えてもらおうか。どうして、リルゴットの森なんだ?」
リュランが、刀の柄に手をかける。
「そうだな。ここは、王都から近からず遠からずの距離にある。私が行き来するのに都合が良いんだよ。魔物も沢山いるしね。隠れ蓑には丁度いい。
君も既に知っているだろうが、ミミックの面で代役を仕立てれば、一週間程度は全く問題なくここへ来られる。
それに……」
「それに?」
リュランが、問い返した。
「ここは、全ての始まりの地だからさ!」
闇の中から再び現れ出たゴワドンは、その全身を深紅の鎧に包まれていた。
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