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やばい奴
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「ふふーん。これは、ハンマーです」
ヌーンが、自信たっぷりに語り出す。
「んなこたぁ、わかってるよ」
ライルが、ヌーンを睨んだ。
「まぁ、まぁ。ホントせっかちだねライルは……。では、この尖がった方の先端をごろうじろ」
ヌーンはハンマーの本体部分に近い柄を持ち、それを皆の前に突き出した。
「ほぉ、これは三層になっていますね」
カンナンが言った通り、先端の半分くらいの層、その次に非常に薄い層、最後に金属の本体、という構造になっている。
「肝は、この先端なんだよね。これは金属じゃなくて、ザレイア・ストーンで出来てるのよ」
「あの、金属並みに硬いっていう?」
ヌーンの説明に、マルチェナが反応した。
「そうそう。そして次は、同じく金属並みに硬いって言われる、木材のガディウッドなのよね、この薄いやつ」
「だから……、それだと何で、メタルリザードを、あぁも簡単にやっつけられるんだよ」
勿体ぶった説明に、ライルがイラつき始める。しかし、そんな事にはお構いなしのヌーン。
「この先端の石の部分にさ。ラスト・ビートルの魂石を凝縮して練り込んであるんだってさ、ネッドの話だと。
何処かの誰かが、メタル系のモンスターが多い地域を探す”ハズレくじ”を引いちゃったもんだから、ネッドに相談して作って貰ったってわけ」
皆が”あぁ”と納得した。ただ、ハズレくじを引いたライルは複雑な表情だ。
ラストとは”サビ”という意味であり、その名を冠するカブトムシは、正に金属を錆びさせる昆虫であった。とりついた金属に錆を発生させ、それを主食としている。
「つまり、そのハンマーでメタルリザードの甲羅をぶん殴って、瞬時に錆びさせたって事なのか? 」
「そう。だから、その部分は脆くなってハンマーが生身の体まで届いたってわけ」
性格に問題はあるものの、二人とも生粋の戦士である。武器談議に花が咲いた。
「でも、よくハンマー本体の金属が錆びませんね」
カンナンが、疑問を差し挟む。
「あっ、そうか。だからガディウッドを間に挟んで、金属部分に影響がないようにしてるのね」
マルチェナの洞察に、カンナンも”なるほど”と納得顔で応えた。
「ちくしょう、俺も欲しいなぁ。探索の報酬も手に入るし、早速ネッドの店に行かなくちゃ」
「だから……。あんたは、まず私に借金を返しなさい」
マルチェナが、釘を刺す。
「うるせぇなぁ。お前、冒険者やめて金貸しにでもなったら……」
そう言いかけて、突然ライルが森の奥に頭を振った。続いてヌーン、マルチェナ、カンナンも同じ方を見る。
「……なんか、やばい奴が……」
ヌーンが言い終わるのを待たずに、そのやばい奴が茂みから突然姿を現した。
「うわっ! 何だこりゃ」
ライルが叫ぶのも無理はない。そいつは茂みの中から現れたというよりも、茂みの木をなぎ倒して現れたのである。身の丈が七メートルはあろうかという、巨大なモンスター。
「メタルゴーレム!?」
マルチェナが、声に出してその名を呼んだ。
「ウソでしょ? なんでこんな所にメタルゴーレムがいるのよ!」
今までお気楽モードだったヌーンが、戦士の顔に戻る。
「いや、噂にはありましたよ。もっとずっと森の奥にではありますが、はぐれゴーレムがいるって」
カンナンの言葉に、他のメンバーが震撼する。それだけ最悪の事態なのである。
通常、ゴーレムは術者が魔法で作りあげるものだから、近くに操る者がいるはずである。だから手ごわいゴーレムでも、そっちを倒せば自ずと勝利が手に入る。だが、時に術者が戦闘中に死亡し、その怨念がゴーレムに憑りつく事がある。それが、はぐれゴーレムである。かのモンスターは、倒されるまで自ら動き続ける始末の悪い化け物だ。
その場合、ゴーレムそのものを倒すしかない。だが、ゴーレムは一般的には強敵であり、特にメタルゴーレムは、手強い事この上ない。
「逃げた方が!」
カンナンが、リーダーに指示を仰ぐ。
「ダメだ。メタルゴーレムはスピードもあるし、下手に背中を見せれば、かえってやられちまう」
「闘うしかないって事ね」
すぐさま、ライルの意をくむマルチェナ。
ただ、ここでパーティーが全滅しても何の不思議もない事を、すぐに皆は理解した。
ヌーンが、自信たっぷりに語り出す。
「んなこたぁ、わかってるよ」
ライルが、ヌーンを睨んだ。
「まぁ、まぁ。ホントせっかちだねライルは……。では、この尖がった方の先端をごろうじろ」
ヌーンはハンマーの本体部分に近い柄を持ち、それを皆の前に突き出した。
「ほぉ、これは三層になっていますね」
カンナンが言った通り、先端の半分くらいの層、その次に非常に薄い層、最後に金属の本体、という構造になっている。
「肝は、この先端なんだよね。これは金属じゃなくて、ザレイア・ストーンで出来てるのよ」
「あの、金属並みに硬いっていう?」
ヌーンの説明に、マルチェナが反応した。
「そうそう。そして次は、同じく金属並みに硬いって言われる、木材のガディウッドなのよね、この薄いやつ」
「だから……、それだと何で、メタルリザードを、あぁも簡単にやっつけられるんだよ」
勿体ぶった説明に、ライルがイラつき始める。しかし、そんな事にはお構いなしのヌーン。
「この先端の石の部分にさ。ラスト・ビートルの魂石を凝縮して練り込んであるんだってさ、ネッドの話だと。
何処かの誰かが、メタル系のモンスターが多い地域を探す”ハズレくじ”を引いちゃったもんだから、ネッドに相談して作って貰ったってわけ」
皆が”あぁ”と納得した。ただ、ハズレくじを引いたライルは複雑な表情だ。
ラストとは”サビ”という意味であり、その名を冠するカブトムシは、正に金属を錆びさせる昆虫であった。とりついた金属に錆を発生させ、それを主食としている。
「つまり、そのハンマーでメタルリザードの甲羅をぶん殴って、瞬時に錆びさせたって事なのか? 」
「そう。だから、その部分は脆くなってハンマーが生身の体まで届いたってわけ」
性格に問題はあるものの、二人とも生粋の戦士である。武器談議に花が咲いた。
「でも、よくハンマー本体の金属が錆びませんね」
カンナンが、疑問を差し挟む。
「あっ、そうか。だからガディウッドを間に挟んで、金属部分に影響がないようにしてるのね」
マルチェナの洞察に、カンナンも”なるほど”と納得顔で応えた。
「ちくしょう、俺も欲しいなぁ。探索の報酬も手に入るし、早速ネッドの店に行かなくちゃ」
「だから……。あんたは、まず私に借金を返しなさい」
マルチェナが、釘を刺す。
「うるせぇなぁ。お前、冒険者やめて金貸しにでもなったら……」
そう言いかけて、突然ライルが森の奥に頭を振った。続いてヌーン、マルチェナ、カンナンも同じ方を見る。
「……なんか、やばい奴が……」
ヌーンが言い終わるのを待たずに、そのやばい奴が茂みから突然姿を現した。
「うわっ! 何だこりゃ」
ライルが叫ぶのも無理はない。そいつは茂みの中から現れたというよりも、茂みの木をなぎ倒して現れたのである。身の丈が七メートルはあろうかという、巨大なモンスター。
「メタルゴーレム!?」
マルチェナが、声に出してその名を呼んだ。
「ウソでしょ? なんでこんな所にメタルゴーレムがいるのよ!」
今までお気楽モードだったヌーンが、戦士の顔に戻る。
「いや、噂にはありましたよ。もっとずっと森の奥にではありますが、はぐれゴーレムがいるって」
カンナンの言葉に、他のメンバーが震撼する。それだけ最悪の事態なのである。
通常、ゴーレムは術者が魔法で作りあげるものだから、近くに操る者がいるはずである。だから手ごわいゴーレムでも、そっちを倒せば自ずと勝利が手に入る。だが、時に術者が戦闘中に死亡し、その怨念がゴーレムに憑りつく事がある。それが、はぐれゴーレムである。かのモンスターは、倒されるまで自ら動き続ける始末の悪い化け物だ。
その場合、ゴーレムそのものを倒すしかない。だが、ゴーレムは一般的には強敵であり、特にメタルゴーレムは、手強い事この上ない。
「逃げた方が!」
カンナンが、リーダーに指示を仰ぐ。
「ダメだ。メタルゴーレムはスピードもあるし、下手に背中を見せれば、かえってやられちまう」
「闘うしかないって事ね」
すぐさま、ライルの意をくむマルチェナ。
ただ、ここでパーティーが全滅しても何の不思議もない事を、すぐに皆は理解した。
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