騎士をやめて機能付加職人になったけど、妹が厳しすぎて困ります 【第一部 ホントウ】

藻ノかたり

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秘密の武器

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「気ぃ引き締めて行くぞぉ!」

ライルの激が、戦闘開始の合図となった。

「カンナン! 俺とヌーンに素早さの魔法を! マルチェナは俺たちの死角から奴らが攻撃できないよう、電撃で牽制してくれ」

「了解!」

リーダーの命の元、僧侶が二人に素早さ向上の魔法をかける。これで二人の速さは普段の1.5倍になった。そしてマルチェナは戦況を見計らい、仲間が不意打ちを喰らわぬよう目を凝らす。

さて、ここで彼らの戦法について説明しよう。

前述したように、メタルリザードの甲羅は硬い。それを剣や槍で攻撃するのは得策とは言えぬ。では、どうするか? これは人間の鎧と同じく、金属で覆われていない関節部分を狙うのである。

だが、メタルリザードは意外と素早く、また体重が重いとあって、体当たり攻撃は大変危険である。それをお見舞いされたら、体格の良い男の冒険者ですら倒されてしまうだろう。

それを防ぐために、ライルは実際に攻撃をする自分とヌーンに素早さの魔法を掛けさせた。スピードを上げたところで、弱点の関節、特に首筋を狙いに行くのである。

速度の上がったライルが、早速、一匹目の金属トカゲの右前足の関節を斬り裂いた。低い唸り声をあげるメタルリザード。怯んだところを、ライルはトドメの首関節に剣を向ける。

「おぉっ!?」

だが金属トカゲの意外な行動に、ライルが驚きの声をあげた。足をやられて動きの鈍くなったはずのメタルリザードが、素早く尻尾を使い反撃をしてきたのだ。あやうく難を逃れるライル。

「何、やってんのよ!」

マルチェナが叫ぶ。

「いや、コイツおかしい。関節を斬っても、動きが殆ど変わらないぞ」

ライルが、慌てた声を出した。それも無理はない。定番の戦法が効かないのだから当然だ。

「じゃぁ、どうするのよ!」

マルチェナが叫ぶ。

「私に任せて! ちょっと準備するから、ライル、時間を稼いで」

メタルリザードの思わぬ攻撃に晒されているヌーンが、自分のバッグに手を伸ばす。

「よし!」

ライルは理由を聞こうともせずに、速攻で女戦士の提案を聞き入れた。ヌーンはお調子者だが、この場面で根拠のない話をする奴じゃない。リーダーとして不可欠の”仲間を信じる力”をライルは発揮した。

ライルがマルチェナと協力してヌーンの穴をふさぐ間、彼女はバッグから新たな武器を取り出して、ブレスレットに触れさせ元の大きさに拡大する。

「じゃ~ん! これが本日の目玉。ネッド・ライザー特製”ブッ潰せハンマー”よ!」

ヌーンは、片方が円錐形になった中型のハンマーを振り上げて披露した。ちなみに、ブッ潰せ云々はヌーンの命名である。

「はぁ? お前バカか! 尖った方でブン殴っても、奴らの鎧に穴が開くわけじゃねぇぞ。はじき返されるだけだ! ……えっ? ネッド・ライザー特製?」

混乱したライルが叫んだ。

「任せてって、言ったでしょ!」

ヌーンはそう言うと、目にも止まらぬ速さで一匹のメタルリザードの背中めがけて一撃を振るう。

「だから……!」

同じ言葉を繰り返そうとしたライルは、次の瞬間、自らの目を疑った。

何と金属トカゲの背中を突き破るように、ハンマーがめり込んでいったのだ。そしてすぐさまその周りから、真っ赤な血が派手に噴き出していく。ハンマーが敵の鎧を突き抜けて、生身の部分を押しつぶした証拠であった。

「どうなってんだ?」

驚くライルを尻目に、ヌーンは次々とメタルリザードを仕留めて行く。金属トカゲたちは数匹の仲間を駆逐されたのち、慌てて茂みの奥へと消えて行った。

あっけにとられるパーティーメンバーを尻目に、ヌーンがドヤ顔で腰に手を当て”どんなもんよ”とソックリかえる。

「いや、驚きました。メタルリザードをこんな簡単にやっつけるなんて」

普段は冷静なカンナンも興奮気味である。

「ほんと、ほんと。どういうタネがあるのか、教えてよ」

マルチェナが続く。

「そう?そう? 本当に知りたい? マジで? じゃぁ、特別に教えてあげちゃおうかなぁ」

ヌーンが子供のような表情を見せ、奇跡の武器の解説を始めた。
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