騎士をやめて機能付加職人になったけど、妹が厳しすぎて困ります 【第一部 ホントウ】

藻ノかたり

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深紅の騎士

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「そんな言葉を信じると思うのか」

騎士の迫力に押されながらも、ネッドは抵抗を試みる。

「信じてもらうしかないさ。でなければ、君には痛い目を見てもらう事になる」

声のトーンが一段低くなり、これは脅しではないと、深紅の騎士は強調した。

「ふん、何を言っているんだ。お前が逃した炎の魔人や、虫の魔人。明らかに僕を殺そうとしたじゃないか。それを今更!」

「……魔人? あぁ、彼らの事か。そうか魔人か、いい呼び名だ。これからは、その呼び名を採用させてもらうとしよう」

深紅の騎士が、シレッと答える。

「ふざけるな!」

相手の余りに不明瞭な言い分に、ネッドのテンションがあがっていく。

「まぁ、落ち着きたまえ。

私は君を殺そうなんて、思っていないよ。単に警告をしただけだ。彼らがやりすぎたのであればお詫びする。

特に今日のアキッド・クローラーなんて、あれは出来損ないだ。元騎士の君を亡き者に出来るなんて、初めから考えてはいない」

こいつは僕が騎士だった事も知っている。つまりは、王都関連の人間なのだろうか。緊迫した場面ながらも、ネッドは新たな情報を頭に刻みつけた。

「僕は、このまま引き下がるつもりはないよ。お前を捕まえて、全てを白状させる。それだけだ」

ここまできたら、駆け引きなど意味がないと悟ったネッドは、正面から目の前の敵に挑む覚悟をした。

「交渉の余地は、ないというわけか。仕方がない。こっちも人生をかけてやってる事なんでね。

だが、安心したまえ。さっきも言ったように、殺しはしない。殺したくはないんだ。暫く動けないようになってもらう程度にしておくよ」

言葉は穏やかだが、鎧の下からは恐ろしいまでの殺気が発せられている。

「うぬぼれるな!」

ネッドは機先を制しようと、深紅の騎士めがけて突進した。相手の実力は分からないが、かなりの手練れに違いはない。

それは二刀流である事からも明白だ。攻撃は最大の防御とは言うものの、それを実践するのは難しい。盾を捨て、その代わりに剣を持つというのは、かなり攻撃的な性格であり、またそれを実行に移せる力がある証拠である。

「では、お相手しよう」

落ち着き払った深紅の騎士は、早速その本領を発揮する。胸の装置が唸ったかと思うと、両肩の角からいきなり電撃が発せられた。詠唱していない事から魔法ではない。

あれも、機能付加アイテムなのか?

ネッドは震撼するとともに、戦闘中にもかかわらず強い興味を持った。父親から受け継いだ、機能付加職人としての魂がそうさせるのだろう。

次々と襲い掛かる電撃を、華麗に避けていくネッド。

「甘く見ないでほしいな!」

今度はネッドの騎士としての魂が、彼にそう叫ばせる。電撃は破壊力と共に麻痺の効果もある恐ろしい武器だ。しかし攻撃は直線的であるから、発射された瞬間に軌道を予測すれば、避けて避けられない攻撃ではない。

「ほう?」

深紅の騎士が、感心したような声を出す。後へステップしながら、次々と電撃を飛ばす騎士ではあるが、ネッドは早くも攻略の糸口をつかんでいた。

タイミング次第だ。

奴が電撃を発するには、ある程度タイムラグがある。胸の装置が唸っている間は電撃は来ない。ネッドは敵との間合いを計りながら、機会を伺った。

最新の電撃がネッドの肩をかすめた時、彼は早駆けの靴の機能を最大限に引き出し、一気に間合いを詰める。彼に与えられた時間は、奴の胸の装置が鳴り終えるまでの数秒であった。

ネッドが急激にスピードを上げた事により、深紅の騎士の動きに一瞬戸惑いが生まれる。ネッドは、その機を逃さない。目にもとまらぬ早業で、相手の胸めがけて剣を振るう。電撃を発生させているだろう装置を狙ったのだ。

その刃は目的を達するかと思われたが、ネッドの思惑を読んでいたかのように、深紅の騎士は、抜群の瞬発力で後ろへ退いた。

「愚かな。剣で斬り刻まれるほど、この鎧や装置は脆弱ではないぞ」

装置の音がやみかけ、電撃を発する肩の角が光を帯び始める。もはや剣の届く距離ではない。ネッドは早駆けの靴の力で、可能な限り後ろへ飛んだ。

手ごわい!

ネッドの魂が叫ぶ。
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