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序盤戦
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炎の魔人は、その逞しい脚力をフルに活用し、ネッドの正面に躍り出た。彼が怯んだ僅かの間に、怪物の全身から凄まじい炎が噴出される。いや、噴出というよりも、密度の濃い炎が練り出されたと言った方が適切だろう。
ガドッツ兄弟を。わずかな時間で炭へと変えた恐ろしい力であった。既に炎の一部と化した魔物の拳がネッドを襲う。
「くっ!」
避ける事は既に叶わず、ネッドは盾を前面に押し出す事しか出来なかった。これは、ネッドの油断である。たとえ三カ月間とはいえ、騎士としての活動をしていなかった故の手痛い失敗だった。
本来であれば、どれだけ頑丈な金属の盾であれ、炎の魔人が発した炎熱で溶けだしてしまうだろう。そうなれば盾は二度と使い物にはならない。下手をすれば、握っている手を大火傷する羽目になりかねない威力である。
だがそんな事は、百も承知のネッドであった。どうした事か、彼の盾は燃えるでもなく溶けるでもなく、そのままの形を保っている。さすがの魔人もこれには驚いたようで、一瞬の隙が生まれた。
ネッドは、盾を使い魔人の体をブン殴る。更に動揺した敵は思わず二、三歩後ずさりをした。多少の勘が鈍っていたとはいえ、彼がこの機を逃すはずはない。早駆けの靴の力を借り、素早く全身からの炎が届かない距離へと避難した。
ネッドにとって、この事は失敗であり成功でもあった。彼の盾が何故、溶けも燃えもしなかったのか? それはその盾が、氷の魔物ブリザードタイガーの魂石を機能付加したものだったからである。
かの虎は全身が氷のように冷たく、触れるもの全てを凍らせる。そうして相手を動けなくしてから、ゆっくりと捕食するのであった。炎に対して氷。これが鉄板の対策であるのは言うまでもないだろう。
だがこれはネッドとすれば、第一段階目としては”失敗”だったのである。何故ならば、この盾を使えば大抵の場合、炎それ自体を凍らせる威力があるからだ。それが凍らなかった。単に炎の熱に耐えたに過ぎない。
つまりこの盾を使い相手の攻撃を逆手にとり、炎を通じて本体をも凍らせようとする作戦は失敗に終わっのであった。
「ちくしょう。やっぱりダメか」
第一の作戦が失敗したネッドは唇をかんだ。だがそれは、真の作戦が功を奏する可能性を示唆している。
炎の魔人は思いもかけない敵の防具にひるんだものの、気を取り直して再び攻撃に転じる。あくまで自分の有利は変わらないと確信しているようだった。
正に恐ろしい意味で火だるまと化した魔人がネッドに二の矢、三の矢の攻撃を仕掛けてくる。ネッドはそれを何とか氷の盾でしのいでいるが防戦一方あった。
じゃあ、プランBを開始するか!
ネッドは心の中でそうつぶやくと、剣を握る右手に力を込めた。彼は魔法使いではないので、魔法そのものは使えない。だが魔法使いボッゾルが放ったファイヤーボールを素手で受け止め圧縮したように、魔力の存在する”何か”を操る事は出来るし、機能付加職人ゆえの才能から、むしろそれを得意としていた。
魔物の魂石で機能付加したネッドの剣には、魔物の魔力が付与されている。ネッドはその手を通じ、その特異機能を”オン”にした。
ガドッツ兄弟を。わずかな時間で炭へと変えた恐ろしい力であった。既に炎の一部と化した魔物の拳がネッドを襲う。
「くっ!」
避ける事は既に叶わず、ネッドは盾を前面に押し出す事しか出来なかった。これは、ネッドの油断である。たとえ三カ月間とはいえ、騎士としての活動をしていなかった故の手痛い失敗だった。
本来であれば、どれだけ頑丈な金属の盾であれ、炎の魔人が発した炎熱で溶けだしてしまうだろう。そうなれば盾は二度と使い物にはならない。下手をすれば、握っている手を大火傷する羽目になりかねない威力である。
だがそんな事は、百も承知のネッドであった。どうした事か、彼の盾は燃えるでもなく溶けるでもなく、そのままの形を保っている。さすがの魔人もこれには驚いたようで、一瞬の隙が生まれた。
ネッドは、盾を使い魔人の体をブン殴る。更に動揺した敵は思わず二、三歩後ずさりをした。多少の勘が鈍っていたとはいえ、彼がこの機を逃すはずはない。早駆けの靴の力を借り、素早く全身からの炎が届かない距離へと避難した。
ネッドにとって、この事は失敗であり成功でもあった。彼の盾が何故、溶けも燃えもしなかったのか? それはその盾が、氷の魔物ブリザードタイガーの魂石を機能付加したものだったからである。
かの虎は全身が氷のように冷たく、触れるもの全てを凍らせる。そうして相手を動けなくしてから、ゆっくりと捕食するのであった。炎に対して氷。これが鉄板の対策であるのは言うまでもないだろう。
だがこれはネッドとすれば、第一段階目としては”失敗”だったのである。何故ならば、この盾を使えば大抵の場合、炎それ自体を凍らせる威力があるからだ。それが凍らなかった。単に炎の熱に耐えたに過ぎない。
つまりこの盾を使い相手の攻撃を逆手にとり、炎を通じて本体をも凍らせようとする作戦は失敗に終わっのであった。
「ちくしょう。やっぱりダメか」
第一の作戦が失敗したネッドは唇をかんだ。だがそれは、真の作戦が功を奏する可能性を示唆している。
炎の魔人は思いもかけない敵の防具にひるんだものの、気を取り直して再び攻撃に転じる。あくまで自分の有利は変わらないと確信しているようだった。
正に恐ろしい意味で火だるまと化した魔人がネッドに二の矢、三の矢の攻撃を仕掛けてくる。ネッドはそれを何とか氷の盾でしのいでいるが防戦一方あった。
じゃあ、プランBを開始するか!
ネッドは心の中でそうつぶやくと、剣を握る右手に力を込めた。彼は魔法使いではないので、魔法そのものは使えない。だが魔法使いボッゾルが放ったファイヤーボールを素手で受け止め圧縮したように、魔力の存在する”何か”を操る事は出来るし、機能付加職人ゆえの才能から、むしろそれを得意としていた。
魔物の魂石で機能付加したネッドの剣には、魔物の魔力が付与されている。ネッドはその手を通じ、その特異機能を”オン”にした。
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