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探索開始
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その頃ネッドは、一足早く森の中へと姿を消していた。まずは人目につかない茂みを探して、そこで防具を交換する。バッグに入れた縮小されたスネ当てや胸当てを、元の大きさに戻して装着した。
「さてと、肝心かなめの……」
ネッドは”とあるアイテム”をバッグから取り出し、それを装備した。これで彼がどれだけ活躍したとしても、その功績を他人に知られる事はない。事前にギルマスである伯父の了解も得ている行動であった。やはり”只の”機能付加職人が、八面六臂の活躍をしてるのを目撃される事は具合が悪いのである。
彼はまず早駆けのアーマーブーツの性能を生かし、先日出会ったあのサラマンダーらしき魔物のいた場所へとひた走った。だが、そこに奴がいる可能性は低い。何故なら状況から考えて、奴はあそこで何かをしていたというよりも、ガッドッツ、ボッゾルの兄弟と偶然に出会った可能性が高いからだ。
むしろあの兄弟がそれとは知らず、例の謎の集団が不完全な魔石を運ぶルートに近づいたので始末したという事だろう。彼らにとっては、運が悪かったとしか言いようがない。
光りの差し込む日中の森は、月の光しか届かない夜と比べれば、はるかに行動しやすい場所である。ネッドは、記憶を頼りに問題の場所へと急いだ。いくら奴がいないだろうとはいえ、あの場所を全く無視するわけにはいかない。何せ手がかりがあるとすれば、今のところはあそこしかないのだから。
順調に走り続けるネッド。森で行ういつものアイテム試しならば、それに適したモンスターと出会う事を切に願う彼であるが、今回ばかりは誰にも会いたくはなかった。縮小しているとはいえ、バッグに入れてある武器や防具には限りがある。あの炎の魔物に会うまでは出来るだけ、それらを温存しておきたいと願うのは当然であった。
だがそんなネッドの思いを打ち砕くように、眼前に魔物の群れが現れる。まぁ、リルゴットの森は、奥へ至るほどモンスターが多くなる森なので仕方のない話であった。
「あれは……、ドリフターか」
ネッドは少し安堵した。連中はそれほど大変な相手ではない。人間の頭ほどの大きさであるドリフターは、名前の通り”放浪者”である。集団で森のあちこちをただフワリフワリと浮遊しているだけの存在で、自分たちから攻撃を仕掛ける習性はない。
しかし、その毛むくじゃらの口だけが目立つ青い体に触れれば、体内の爆発性の内臓が反応して強力な炸裂弾と化す。まるで森を漂う機雷であった。それが集団でいるのだからたまらない。普通は彼らが浮遊している場所を迂回するのが賢明な行動だが、今それをする時間的余裕はない。
森は広い。だが探索の時間は午前10時から午後4時までと決まっていた。暗くなった後の森の恐ろしさを、誰よりも知っているギルマスならではの配慮であったが、その6時間の間に成果を得なければならない。
ネッドはバッグから、雷玉を取り出した。先日、ゾラウルフを撃退したアイテムである。彼は近くに大きな岩を見つけ、その陰から雷玉をドリフター達の群れに投げ入れる。果たして凄まじい電撃がほと走り、まず雷玉の近くにいた何匹かが爆発を起こした。更にはその隣、またその隣と爆発の輪は広がっていき、そこらへん一帯を整地したかのように辺りの木々を薙ぎ払う。
全てのドリフターが爆発したわけではないが、ぶつからないで通り抜けるだけの数には減った事を確認し、ネッドは再び早駆けのブーツを全開にして生きた機雷の横を走り去った。いつ誘爆が起こるか不明の中、使用済みの雷玉を回収できないのは残念だが致し方ないだろう。
シャミーが、また怒るだろうな……。アイテムの減価償却も、しっかり記録している妹の顔が浮かんだ。
でも変だな……、あのドリフターたち、少し違和感があった……。機能付加職人としてのネッドの頭の中からシャミーの顔は早々に姿を消し、たったいま行った戦闘の結果に対する疑問が醸成される。
ネッドは今までに、彼らとたびたび遭遇をしてきた。彼らが、何処にでもいる魔物だからだ。でも、今の連中の”爆発の規模”はおかしい。明らかに平均をかなり上回っている。環境によって個体差は出るものの、それでは説明の出来ない程の差異があった。
本当にこんな時に限って……。出来れば詳しく調べたいところだが、今は放っておくしかない。ネッドは未練を断ち切って先を急いだ。
「さてと、肝心かなめの……」
ネッドは”とあるアイテム”をバッグから取り出し、それを装備した。これで彼がどれだけ活躍したとしても、その功績を他人に知られる事はない。事前にギルマスである伯父の了解も得ている行動であった。やはり”只の”機能付加職人が、八面六臂の活躍をしてるのを目撃される事は具合が悪いのである。
彼はまず早駆けのアーマーブーツの性能を生かし、先日出会ったあのサラマンダーらしき魔物のいた場所へとひた走った。だが、そこに奴がいる可能性は低い。何故なら状況から考えて、奴はあそこで何かをしていたというよりも、ガッドッツ、ボッゾルの兄弟と偶然に出会った可能性が高いからだ。
むしろあの兄弟がそれとは知らず、例の謎の集団が不完全な魔石を運ぶルートに近づいたので始末したという事だろう。彼らにとっては、運が悪かったとしか言いようがない。
光りの差し込む日中の森は、月の光しか届かない夜と比べれば、はるかに行動しやすい場所である。ネッドは、記憶を頼りに問題の場所へと急いだ。いくら奴がいないだろうとはいえ、あの場所を全く無視するわけにはいかない。何せ手がかりがあるとすれば、今のところはあそこしかないのだから。
順調に走り続けるネッド。森で行ういつものアイテム試しならば、それに適したモンスターと出会う事を切に願う彼であるが、今回ばかりは誰にも会いたくはなかった。縮小しているとはいえ、バッグに入れてある武器や防具には限りがある。あの炎の魔物に会うまでは出来るだけ、それらを温存しておきたいと願うのは当然であった。
だがそんなネッドの思いを打ち砕くように、眼前に魔物の群れが現れる。まぁ、リルゴットの森は、奥へ至るほどモンスターが多くなる森なので仕方のない話であった。
「あれは……、ドリフターか」
ネッドは少し安堵した。連中はそれほど大変な相手ではない。人間の頭ほどの大きさであるドリフターは、名前の通り”放浪者”である。集団で森のあちこちをただフワリフワリと浮遊しているだけの存在で、自分たちから攻撃を仕掛ける習性はない。
しかし、その毛むくじゃらの口だけが目立つ青い体に触れれば、体内の爆発性の内臓が反応して強力な炸裂弾と化す。まるで森を漂う機雷であった。それが集団でいるのだからたまらない。普通は彼らが浮遊している場所を迂回するのが賢明な行動だが、今それをする時間的余裕はない。
森は広い。だが探索の時間は午前10時から午後4時までと決まっていた。暗くなった後の森の恐ろしさを、誰よりも知っているギルマスならではの配慮であったが、その6時間の間に成果を得なければならない。
ネッドはバッグから、雷玉を取り出した。先日、ゾラウルフを撃退したアイテムである。彼は近くに大きな岩を見つけ、その陰から雷玉をドリフター達の群れに投げ入れる。果たして凄まじい電撃がほと走り、まず雷玉の近くにいた何匹かが爆発を起こした。更にはその隣、またその隣と爆発の輪は広がっていき、そこらへん一帯を整地したかのように辺りの木々を薙ぎ払う。
全てのドリフターが爆発したわけではないが、ぶつからないで通り抜けるだけの数には減った事を確認し、ネッドは再び早駆けのブーツを全開にして生きた機雷の横を走り去った。いつ誘爆が起こるか不明の中、使用済みの雷玉を回収できないのは残念だが致し方ないだろう。
シャミーが、また怒るだろうな……。アイテムの減価償却も、しっかり記録している妹の顔が浮かんだ。
でも変だな……、あのドリフターたち、少し違和感があった……。機能付加職人としてのネッドの頭の中からシャミーの顔は早々に姿を消し、たったいま行った戦闘の結果に対する疑問が醸成される。
ネッドは今までに、彼らとたびたび遭遇をしてきた。彼らが、何処にでもいる魔物だからだ。でも、今の連中の”爆発の規模”はおかしい。明らかに平均をかなり上回っている。環境によって個体差は出るものの、それでは説明の出来ない程の差異があった。
本当にこんな時に限って……。出来れば詳しく調べたいところだが、今は放っておくしかない。ネッドは未練を断ち切って先を急いだ。
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