騎士をやめて機能付加職人になったけど、妹が厳しすぎて困ります 【第一部 ホントウ】

藻ノかたり

文字の大きさ
上 下
71 / 153

楽しい連中

しおりを挟む
二人がリルゴットの森へ着く頃、既にその場所は冒険者たちで溢れかえっていた。皆、活躍しての賞金や、王都の人間の目にとまっての出世を夢見ての事である。

「じゃぁね、また後で」

メルはそう言うと、平原の側面に設置されたテントの方へと走り去った。見るとそこには、ゴワドン卿やガント、更にはリュランの顔も見える。

「よぉ、ネッド、来たな」

肩を叩かれ振り返ると、そこにはお得意様である冒険者のライルとそのパーティーがいた。

「あぁ、ライルさん。お早うございます」

上客の機嫌を損なわないよう、努めて明るく返事をするネッド。

「しかし、すげぇ数の冒険者だなぁ。こりゃ、この街の殆どの冒険者が集まっていると見える。そんなに、金や名誉が欲しいのかねぇ」

「あんたも”金目当て”の一人でしょうが」

後に居た魔法使いの女性マルチェナが、杖の先でライルの頭をコツンと叩いた。

「なぁ、もう。何だよ、痛ぇなぁ。それに、金目当てってのはどういうこった。俺は、この街の平和のためにだなぁ……」

頭をさすりながら、ライルがマルチェナに食ってかかる。

「ふぅ……。あんた一体、私に幾ら借金があるかわかってるの? いい加減に返さないと、出るとこ出るわよ?」

半ばあきらめ顔のマルチェナが、ため息をついた。

「そうそう、本当は今回の依頼目的で、ネッドさんに仕事を頼みたかったのに、金欠で叶わなかったんですよね」

僧侶のカンナンが、補足をする。

「うるせぇな。坊さんが、金の事をあんまり言うんじゃないよ」

ライルのクレームに、ヤレヤレという顔をするカンナン。

「ふっ、ふっ、ふっ……。突然ですけど、発表しまーす。実はこのバッグの中にはさ、ネッドに機能付加してもらった、秘密のアイテムが入ってるんだよー」

女戦士のヌーンが、得意げに言った。

「え? そんな事、聞いちゃいねぇぞ。ははぁ、昨日どこかから帰って来て、ずっとニタニタしていたのはそのせいか。ほれ、どんな物をこさえてもらったのか、見せてみろ」

ライルが、ヌーンのバッグに手を伸ばす。

「ダメダメ、これは取って置きなんだから、使う時が来るまで見せないよーん」

バッグを狙うパーティーリーダーの魔の手を、その素早さで難なく交わすヌーン。

「ふん、ケチが。いいもんね。この探索でタンマリ稼いだら、俺だってネッドに色々頼んじまうんだから」

ライルが、子供のように口を尖らした。そこでまた一発、頭にコツン。

「違うでしょ? タンマリ稼いだら、まずは、私からの借金をしっかり返すんでしょ!」

「もう……、ウチの連中は、全く金にうるさくて困るよなぁ。冒険者たるもの、ロマンを求めないでどうする? 金は二の次、三の次だよ!」

ライルの妄言に、マルチェナが杖を両手で持ち、更にはそれを自らの頭上に振り上げた。

「マルチェナ、待って待って。ならぬ堪忍、するが堪忍です」

カンナンが、慌てて魔法使いを止める。

「ふん! 今叩きのめして使い物にならなくなっても困るから、とりあえずは勘弁しておいてあげるわ」

歯をギリギリとならすマルチェナを尻目に、ライルは明後日の方向を見て口笛を吹いている。

「仲のいいパーティーなんですね」

「どこが!!」

ネッドのお世辞が皮肉に聞こえたのか、パーティー全員が口をそろえて声を張り上げた。

「あ~、みな集まったようだから、これから探索任務に関する説明を始める」

拡声魔道具を使ったガントの声が、冒険者でごった返した平原に響く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

ゴブリンに棍棒で頭を殴られた蛇モンスターは前世の記憶を取り戻す。すぐ死ぬのも癪なので頑張ってたら何か大変な事になったっぽい

竹井ゴールド
ファンタジー
ゴブリンに攻撃された哀れな蛇モンスターのこのオレは、ダメージのショックで蛇生辰巳だった時の前世の記憶を取り戻す。 あれ、オレ、いつ死んだんだ? 別にトラックにひかれてないんだけど? 普通に眠っただけだよな? ってか、モンスターに転生って? それも蛇って。 オレ、前世で何にも悪い事してないでしょ。 そもそも高校生だったんだから。 断固やり直しを要求するっ! モンスターに転生するにしても、せめて悪魔とか魔神といった人型にしてくれよな〜。 蛇って。 あ〜あ、テンションがダダ下がりなんだけど〜。 ってか、さっきからこのゴブリン、攻撃しやがって。 オレは何もしてないだろうが。 とりあえずおまえは倒すぞ。 ってな感じで、すぐに死ぬのも癪だから頑張ったら、どんどん大変な事になっていき・・・

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

処理中です...