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テンテコマイ
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翌朝。ネッドはまたしてもシャミーに叩き起こされた。完全に寝不足だった。昨晩のリュランから聞いた話が気になって、あまり眠れなかったのだ。
昨日の話が本当なら、養成所を含む騎士時代に、ゴワドン卿が僕に声を掛けなかったのは理解できる。ただでさえ皆から睨まれているのに、侯爵の名を出した大っぴらな援助があれば、僕の立場はますます悪くなっただろう。
理不尽をなす奴らから見れば”機能付加職人の息子風情が、侯爵の信任を得ている。こんなふざけた話はない”とばかりに、嫉妬と羨望の入り混じった負の感情が彼らの心を支配するに違いなかった。だがそうなると、表立っての嫌がらせは出来なくなるので、より陰湿で過激な行動に出たに決まっている。
それを予想したゴワドン侯爵が、あくまで陰ながらの援助をした可能性は確かにあった。ネッドは、寝ぼけマナコをこすりながら考える。
だがそんな不確かなシンキングタイムは、とある喧噪でかき消された。探索目的で注文していた品を取りに来る客が、引きも切らずに来店し、ネッドとシャミーはテンテコマイの時間を過ごしたのだった。
「そう言えばお兄ちゃん。今回の探索目当てに、一番先に来たヌーンさんだっけ? あの人は、まだ来ていないわね」
一段落した店で、紅茶を飲みながらシャミーが尋ねる。
「あぁ、あの注文は明日の朝、つまり探索の前日の朝までって約束なんだ。注文内容が、少し大変でね」
妹手作りの節約クッキーを頬張るネッド。
「わかってるとは思うけど、お兄ちゃんも探索に行くんだからね。冒険者の人達は、職人としてはお客さんでも、冒険者としてはライバルだって忘れないでちょうだい」
シャミーが、念を押す。
わかってるさ。僕だって出来れば活躍して賞金を稼ぎたい。活躍しても目立たない工夫はバッチリだし、伯父さんの許可もとった。
”まぁ、期待していてくれよ”
ネッドは心の中で呟いた。下手に口に出すと、活躍できなかった時に、また何を言われるかわからないからだ。
客の注文もあらかたこなした事から、ネッドは先日思いたった予定を実行しようとする。それは、探索の”下見”であった。
今日の夜、密かにリルゴットの森へ行ってみよう。もちろん、シャミーには内緒で……。実は、そのための秘密道具も開発済みだ。ネッドの胸は、心なしか高まった。
昼間の疲れからか、シャミーがいつもより早めに寝室に引っ込んだのを確認し、ネッドは装備万端リルゴットの森へと向かう。もちろん、早駆けの靴も忘れない。
数日前にやって来た森の入口にたたずむネッド。
今回の下見には、幾つか目的があった。新装備の試験。少しでも、伯父やゴワドン卿の役に立つための情報収集。そして雷玉を取りに行った時に感じた、怪しげな”何か”の究明。
ネッドは一抹の不安を感じながらも、森の奥へと分け入って行く。恐ろしい光景と出会う事になるのも知らずに。
昨日の話が本当なら、養成所を含む騎士時代に、ゴワドン卿が僕に声を掛けなかったのは理解できる。ただでさえ皆から睨まれているのに、侯爵の名を出した大っぴらな援助があれば、僕の立場はますます悪くなっただろう。
理不尽をなす奴らから見れば”機能付加職人の息子風情が、侯爵の信任を得ている。こんなふざけた話はない”とばかりに、嫉妬と羨望の入り混じった負の感情が彼らの心を支配するに違いなかった。だがそうなると、表立っての嫌がらせは出来なくなるので、より陰湿で過激な行動に出たに決まっている。
それを予想したゴワドン侯爵が、あくまで陰ながらの援助をした可能性は確かにあった。ネッドは、寝ぼけマナコをこすりながら考える。
だがそんな不確かなシンキングタイムは、とある喧噪でかき消された。探索目的で注文していた品を取りに来る客が、引きも切らずに来店し、ネッドとシャミーはテンテコマイの時間を過ごしたのだった。
「そう言えばお兄ちゃん。今回の探索目当てに、一番先に来たヌーンさんだっけ? あの人は、まだ来ていないわね」
一段落した店で、紅茶を飲みながらシャミーが尋ねる。
「あぁ、あの注文は明日の朝、つまり探索の前日の朝までって約束なんだ。注文内容が、少し大変でね」
妹手作りの節約クッキーを頬張るネッド。
「わかってるとは思うけど、お兄ちゃんも探索に行くんだからね。冒険者の人達は、職人としてはお客さんでも、冒険者としてはライバルだって忘れないでちょうだい」
シャミーが、念を押す。
わかってるさ。僕だって出来れば活躍して賞金を稼ぎたい。活躍しても目立たない工夫はバッチリだし、伯父さんの許可もとった。
”まぁ、期待していてくれよ”
ネッドは心の中で呟いた。下手に口に出すと、活躍できなかった時に、また何を言われるかわからないからだ。
客の注文もあらかたこなした事から、ネッドは先日思いたった予定を実行しようとする。それは、探索の”下見”であった。
今日の夜、密かにリルゴットの森へ行ってみよう。もちろん、シャミーには内緒で……。実は、そのための秘密道具も開発済みだ。ネッドの胸は、心なしか高まった。
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数日前にやって来た森の入口にたたずむネッド。
今回の下見には、幾つか目的があった。新装備の試験。少しでも、伯父やゴワドン卿の役に立つための情報収集。そして雷玉を取りに行った時に感じた、怪しげな”何か”の究明。
ネッドは一抹の不安を感じながらも、森の奥へと分け入って行く。恐ろしい光景と出会う事になるのも知らずに。
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