56 / 153
リュランの話
しおりを挟む
二人は早々に、ネッドの部屋へと赴く。
「さぁ。全部、はいてもらおうか」
リュランにいつものお道化た調子はなく、ほんのたまにしか見せない真剣な表情になった。
「と、その前に確認なんだけどさ。僕に侯爵について聞くって事は、森の入り口での一件を、お前が把握してないって事だよな」
ネッドは、しげしげとリュランの顔を覗き込む。
「あぁ、そうだけど、だからなんだよ」
それを聞いたネッドの口元が緩んだ。
「やーい、まかれてやんの」
「なんだと、コラァ!」
一矢報いたと、ニンマリするネッド。図星を指されて、思わず声をあげるリュラン。
「ま、冗談はここまでとして、何が聞きたいんだ、リュラン」
友人の真剣さは分かっていたが、どうしても借りを返したかったネッドは、目的を遂げ真面目に友人へと尋ねた。
「あぁ、そうだよ。お前の言う通りだ。ゴワドン卿の動きをマークはしていたんだが、見事にまかれちまった。まぁ、あっちはお付きの者をまくつもりだったんだろうが、こっちもトバッチリを食ったってわけだ」
リュランが、唇をかむ。
ひいき目なしで見ても、リュランは優秀な諜報騎士だ。その彼がまかれたとなると、ゴワドンの力量はかなりのものとなる。また理由にしても、単に誰にも邪魔されないで感慨に浸りたかったいう見方もできるが、それだけで果たして説明がつくのだろうか。
「俺が知りたいのは、お前がゴワドン卿と話した全てだよ」
リュランの顔が、心なしか引きつっている。諜報騎士ともあろう者が、情報をこうも完全に人づてに聞くのはプライドが許さないのだろう。
「……僕が、侯爵と話したのは……」
悪友の心を知ってか知らずか、ネッドは先ほどの内容を包み隠さずリュランに話した。聞き終わったリュランは、暫し腕を組んで考える。
「なぁ、今さら何だけど、騎士時代、ゴワドン卿がお前に声をかけてきた事はないのか? 今の話だと、ゴワドン卿は犠牲になった子供や親ばかりじゃなく、お前のおやじさんについても、かなり気に掛けている様子じゃないか」
リュランが、口を開いた。
「ゴワドン卿は、お前のおやじさんが亡くなった事を知っていた。お前が騎士見習いになったのはそ後なんだから、名前や色々な情報を鑑みれば、お前がアルベルト・ライザーの息子だっていうのは分かったと思うんだよな」
「うん……。実は、それについては伯父さんのギルマスからも聞かれたよ。でも、そんな事は一切なかった。まぁ、会う機会自体なかったからな」
奇しくも、ガントと同じ疑問を呈したリュランにネッドは答える。
「実はな、これは全く裏が取れていない情報なんだが、ゴワドン卿を調べている内に妙な話が出てきたんだ」
「妙な話?」
ネッドは、リュランの話に引き寄せられた。
「あぁ。でもいいか、これは今言ったように、全く根拠薄弱な、噂レベルにすらなっていない話なんだがな……」
「だから、何だよ」
リュランの言葉に、ネッドは疑問を持った。いつも自信満々の男が、これだけ喋るのを躊躇するのは珍しい。
「ゴワドン卿は、密かに騎士時代のお前を見守っていた節があるんだよ」
「何だって!?」
ネッドは、思いがけない友人の言葉に驚いた。
「さぁ。全部、はいてもらおうか」
リュランにいつものお道化た調子はなく、ほんのたまにしか見せない真剣な表情になった。
「と、その前に確認なんだけどさ。僕に侯爵について聞くって事は、森の入り口での一件を、お前が把握してないって事だよな」
ネッドは、しげしげとリュランの顔を覗き込む。
「あぁ、そうだけど、だからなんだよ」
それを聞いたネッドの口元が緩んだ。
「やーい、まかれてやんの」
「なんだと、コラァ!」
一矢報いたと、ニンマリするネッド。図星を指されて、思わず声をあげるリュラン。
「ま、冗談はここまでとして、何が聞きたいんだ、リュラン」
友人の真剣さは分かっていたが、どうしても借りを返したかったネッドは、目的を遂げ真面目に友人へと尋ねた。
「あぁ、そうだよ。お前の言う通りだ。ゴワドン卿の動きをマークはしていたんだが、見事にまかれちまった。まぁ、あっちはお付きの者をまくつもりだったんだろうが、こっちもトバッチリを食ったってわけだ」
リュランが、唇をかむ。
ひいき目なしで見ても、リュランは優秀な諜報騎士だ。その彼がまかれたとなると、ゴワドンの力量はかなりのものとなる。また理由にしても、単に誰にも邪魔されないで感慨に浸りたかったいう見方もできるが、それだけで果たして説明がつくのだろうか。
「俺が知りたいのは、お前がゴワドン卿と話した全てだよ」
リュランの顔が、心なしか引きつっている。諜報騎士ともあろう者が、情報をこうも完全に人づてに聞くのはプライドが許さないのだろう。
「……僕が、侯爵と話したのは……」
悪友の心を知ってか知らずか、ネッドは先ほどの内容を包み隠さずリュランに話した。聞き終わったリュランは、暫し腕を組んで考える。
「なぁ、今さら何だけど、騎士時代、ゴワドン卿がお前に声をかけてきた事はないのか? 今の話だと、ゴワドン卿は犠牲になった子供や親ばかりじゃなく、お前のおやじさんについても、かなり気に掛けている様子じゃないか」
リュランが、口を開いた。
「ゴワドン卿は、お前のおやじさんが亡くなった事を知っていた。お前が騎士見習いになったのはそ後なんだから、名前や色々な情報を鑑みれば、お前がアルベルト・ライザーの息子だっていうのは分かったと思うんだよな」
「うん……。実は、それについては伯父さんのギルマスからも聞かれたよ。でも、そんな事は一切なかった。まぁ、会う機会自体なかったからな」
奇しくも、ガントと同じ疑問を呈したリュランにネッドは答える。
「実はな、これは全く裏が取れていない情報なんだが、ゴワドン卿を調べている内に妙な話が出てきたんだ」
「妙な話?」
ネッドは、リュランの話に引き寄せられた。
「あぁ。でもいいか、これは今言ったように、全く根拠薄弱な、噂レベルにすらなっていない話なんだがな……」
「だから、何だよ」
リュランの言葉に、ネッドは疑問を持った。いつも自信満々の男が、これだけ喋るのを躊躇するのは珍しい。
「ゴワドン卿は、密かに騎士時代のお前を見守っていた節があるんだよ」
「何だって!?」
ネッドは、思いがけない友人の言葉に驚いた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

ゴブリンに棍棒で頭を殴られた蛇モンスターは前世の記憶を取り戻す。すぐ死ぬのも癪なので頑張ってたら何か大変な事になったっぽい
竹井ゴールド
ファンタジー
ゴブリンに攻撃された哀れな蛇モンスターのこのオレは、ダメージのショックで蛇生辰巳だった時の前世の記憶を取り戻す。
あれ、オレ、いつ死んだんだ?
別にトラックにひかれてないんだけど?
普通に眠っただけだよな?
ってか、モンスターに転生って?
それも蛇って。
オレ、前世で何にも悪い事してないでしょ。
そもそも高校生だったんだから。
断固やり直しを要求するっ!
モンスターに転生するにしても、せめて悪魔とか魔神といった人型にしてくれよな〜。
蛇って。
あ〜あ、テンションがダダ下がりなんだけど〜。
ってか、さっきからこのゴブリン、攻撃しやがって。
オレは何もしてないだろうが。
とりあえずおまえは倒すぞ。
ってな感じで、すぐに死ぬのも癪だから頑張ったら、どんどん大変な事になっていき・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる