騎士をやめて機能付加職人になったけど、妹が厳しすぎて困ります 【第一部 ホントウ】

藻ノかたり

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リュランの話

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二人は早々に、ネッドの部屋へと赴く。

「さぁ。全部、はいてもらおうか」

リュランにいつものお道化た調子はなく、ほんのたまにしか見せない真剣な表情になった。

「と、その前に確認なんだけどさ。僕に侯爵について聞くって事は、森の入り口での一件を、お前が把握してないって事だよな」

ネッドは、しげしげとリュランの顔を覗き込む。

「あぁ、そうだけど、だからなんだよ」

それを聞いたネッドの口元が緩んだ。

「やーい、まかれてやんの」

「なんだと、コラァ!」

一矢報いたと、ニンマリするネッド。図星を指されて、思わず声をあげるリュラン。

「ま、冗談はここまでとして、何が聞きたいんだ、リュラン」

友人の真剣さは分かっていたが、どうしても借りを返したかったネッドは、目的を遂げ真面目に友人へと尋ねた。

「あぁ、そうだよ。お前の言う通りだ。ゴワドン卿の動きをマークはしていたんだが、見事にまかれちまった。まぁ、あっちはお付きの者をまくつもりだったんだろうが、こっちもトバッチリを食ったってわけだ」

リュランが、唇をかむ。

ひいき目なしで見ても、リュランは優秀な諜報騎士だ。その彼がまかれたとなると、ゴワドンの力量はかなりのものとなる。また理由にしても、単に誰にも邪魔されないで感慨に浸りたかったいう見方もできるが、それだけで果たして説明がつくのだろうか。

「俺が知りたいのは、お前がゴワドン卿と話した全てだよ」

リュランの顔が、心なしか引きつっている。諜報騎士ともあろう者が、情報をこうも完全に人づてに聞くのはプライドが許さないのだろう。

「……僕が、侯爵と話したのは……」

悪友の心を知ってか知らずか、ネッドは先ほどの内容を包み隠さずリュランに話した。聞き終わったリュランは、暫し腕を組んで考える。

「なぁ、今さら何だけど、騎士時代、ゴワドン卿がお前に声をかけてきた事はないのか? 今の話だと、ゴワドン卿は犠牲になった子供や親ばかりじゃなく、お前のおやじさんについても、かなり気に掛けている様子じゃないか」

リュランが、口を開いた。

「ゴワドン卿は、お前のおやじさんが亡くなった事を知っていた。お前が騎士見習いになったのはそ後なんだから、名前や色々な情報を鑑みれば、お前がアルベルト・ライザーの息子だっていうのは分かったと思うんだよな」

「うん……。実は、それについては伯父さんのギルマスからも聞かれたよ。でも、そんな事は一切なかった。まぁ、会う機会自体なかったからな」

奇しくも、ガントと同じ疑問を呈したリュランにネッドは答える。

「実はな、これは全く裏が取れていない情報なんだが、ゴワドン卿を調べている内に妙な話が出てきたんだ」

「妙な話?」

ネッドは、リュランの話に引き寄せられた。

「あぁ。でもいいか、これは今言ったように、全く根拠薄弱な、噂レベルにすらなっていない話なんだがな……」

「だから、何だよ」

リュランの言葉に、ネッドは疑問を持った。いつも自信満々の男が、これだけ喋るのを躊躇するのは珍しい。

「ゴワドン卿は、密かに騎士時代のお前を見守っていた節があるんだよ」

「何だって!?」

ネッドは、思いがけない友人の言葉に驚いた。
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