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意外な情報
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「そうだ。ついでだから聞いておきたいんだけど、ゴワドン侯爵ってどういう人なんだ。僕は騎士時代、全く会った事はなくて、行事の時に遠くから見る程度だったんでね」
落ち込むリュランを見かねて、ネッドが話題を変える。
「あぁ、ゴワドン伯爵ってのは……、っていうか、”ついで”ってのは何だ、ついでってのは? 仮にも諜報部のエースに直に情報を聞くんだぞ、もう少し、敬意ってものをだな……」
「あ~、はいはい。リュラン様、どうか友達のよしみで情報を教えて下さいまし」
口ごたえしても面倒なので、ネッドは、いっそおどけてみせた。それまで沈んだ表情だったリュランがプッと吹き出し、二人で大笑いをする。
「は、そうだなぁ、まぁ、とにかく厳しい人だ。新米官僚なんぞ、前に立っただけでも震えが来るほどにな。だけど、決して暴君ってわけじゃない。言っている事は、いちいち腹の立つほど筋が通っている。
本来ならそんな人物は役所を追い出されるわけなんだが、何せ爵位が侯爵だ。誰も口出しなんか出来やしない。しかも、実績があるから尚更だ」
八方塞がりの憂鬱を吹き飛ばすように、リュランが雄弁に語る。
「だけど、それだと話が違うぞ。お前はさっき、色々と怪しいって言ってたじゃないか。今の話だと、ゴワドン侯爵は稀に見る名貴族って感じだぞ」
亡き父親の心に暗い影を落とす事件の関係者だけに、ネッドの関心は強かった。
「怪しいってのは、別に不正をしている疑いがあるって意味じゃないさ。とにかく、わからない行動が多いんだ」
リュランが、自分の職責において反論する。
「でもなぁ……」
「あぁ、それから侯爵は、長年機能付加職人の地位向上に努めようとしてきた節がある」
疑問を払拭できないネッドに、意外な情報がもたらされた。
「機能付加職人の地位向上?」
驚いたネッドが、オウム返しに尋ねる。
「あぁ、ただし、これも表立ってやったわけじゃない。裏から糸を引く……、いや応援するって感じだ」
「なんで、そんな事を……」
リュランの答えに、ネッドは新たな疑問が次から次へと頭に浮かんだ。
「まぁ、普通に考えりゃ、自分の犠牲になった職人親子への贖罪って所だろうな。ただ、過去に遡って調べると、ゴワドン侯爵が父親から当主の座を譲られた頃から、それは始まっている。つまり、もう二十年くらいになるわけだ」
「そんなに長く。……でも、おかしいぞ。あの魔法使いと戦士の兄弟の言い分を聞けばわかるように、この二十年で付加職人の地位が向上したなんて事はないよ」
「確かにな。それだけ、世の中の理を変えるのは難しいってこった」
友人の新たな職の前途を憂うように、リュランはため息をつく。少し重苦しい空気が、広くはないネッドの部屋を支配した。
「ふうっ――。じゃ、今日はこれくらいにしてもう寝るか」
これ以上話しても、いい事はないだろうと考えたネッドは、話を切り上げようとする。
「いや、駄目だ」
リュランが、きっぱりとはねつけた。
落ち込むリュランを見かねて、ネッドが話題を変える。
「あぁ、ゴワドン伯爵ってのは……、っていうか、”ついで”ってのは何だ、ついでってのは? 仮にも諜報部のエースに直に情報を聞くんだぞ、もう少し、敬意ってものをだな……」
「あ~、はいはい。リュラン様、どうか友達のよしみで情報を教えて下さいまし」
口ごたえしても面倒なので、ネッドは、いっそおどけてみせた。それまで沈んだ表情だったリュランがプッと吹き出し、二人で大笑いをする。
「は、そうだなぁ、まぁ、とにかく厳しい人だ。新米官僚なんぞ、前に立っただけでも震えが来るほどにな。だけど、決して暴君ってわけじゃない。言っている事は、いちいち腹の立つほど筋が通っている。
本来ならそんな人物は役所を追い出されるわけなんだが、何せ爵位が侯爵だ。誰も口出しなんか出来やしない。しかも、実績があるから尚更だ」
八方塞がりの憂鬱を吹き飛ばすように、リュランが雄弁に語る。
「だけど、それだと話が違うぞ。お前はさっき、色々と怪しいって言ってたじゃないか。今の話だと、ゴワドン侯爵は稀に見る名貴族って感じだぞ」
亡き父親の心に暗い影を落とす事件の関係者だけに、ネッドの関心は強かった。
「怪しいってのは、別に不正をしている疑いがあるって意味じゃないさ。とにかく、わからない行動が多いんだ」
リュランが、自分の職責において反論する。
「でもなぁ……」
「あぁ、それから侯爵は、長年機能付加職人の地位向上に努めようとしてきた節がある」
疑問を払拭できないネッドに、意外な情報がもたらされた。
「機能付加職人の地位向上?」
驚いたネッドが、オウム返しに尋ねる。
「あぁ、ただし、これも表立ってやったわけじゃない。裏から糸を引く……、いや応援するって感じだ」
「なんで、そんな事を……」
リュランの答えに、ネッドは新たな疑問が次から次へと頭に浮かんだ。
「まぁ、普通に考えりゃ、自分の犠牲になった職人親子への贖罪って所だろうな。ただ、過去に遡って調べると、ゴワドン侯爵が父親から当主の座を譲られた頃から、それは始まっている。つまり、もう二十年くらいになるわけだ」
「そんなに長く。……でも、おかしいぞ。あの魔法使いと戦士の兄弟の言い分を聞けばわかるように、この二十年で付加職人の地位が向上したなんて事はないよ」
「確かにな。それだけ、世の中の理を変えるのは難しいってこった」
友人の新たな職の前途を憂うように、リュランはため息をつく。少し重苦しい空気が、広くはないネッドの部屋を支配した。
「ふうっ――。じゃ、今日はこれくらいにしてもう寝るか」
これ以上話しても、いい事はないだろうと考えたネッドは、話を切り上げようとする。
「いや、駄目だ」
リュランが、きっぱりとはねつけた。
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