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寝室の密談
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「今回の、リルゴットの森での探索についてか」
分かってはいるが、ネッドが念を押す。
「あぁ、俺が昼間、お前がやりすぎるのを止めたのも、そのためだ。状況は非常に混とんとしている。下手に状況を荒立てたくない」
両こぶしを握り、リュランが苦虫を噛み潰したような表情を見せた。確かに彼が止めなければ、ネッドは魔法使いに大ケガをさせていたかも知れない。心の声に突き動かされたとはいえ、ネッドは我を忘れかけた事を大いに反省した。
「ネッド、お前はもう知ってるんだろ? 今回、王都から来る代表団の束ね役が、ゴワドン卿だって話」
「あぁ、伯父さんから聞いて驚いたよ。ただ、それには訳が……」
「四十年前の一件か」
ネッドを遮るように、リュランが失われた秘密を口にする。
「知っているのか!?」
友の意外な一言に、少し驚くネッド。しかしリュランが諜報部である事を鑑みれば、それほど意外ではないとすぐに気づく。そして話をすり合わせた結果、二人が知っている事実に大きな差異はないと分かった。
「それで、何が問題なんだよ。ゴワドン卿が四十年前の事件に良心の呵責を覚えていて、犠牲になった親子がいた街のために働きたいっていうのは、そんなに不自然な事なのか」
ネッドが尋ねる。
「なぁ、ネッド。お前の親父さんが絡んでいるから、肩入れしたくなるのは分かるがな。幾ら何でも、異例過ぎるだろ?。百歩譲って、腹心の部下をよこせば済む話じゃないか?
それにお前はゴワドン卿とは殆ど付き合いがないだろうが、こっちは諜報部に引き抜かれてから、あの御仁をマークしてたんだよ。
どうも行動に不審な点が多いんだ。もちろん、具体的には何もわかっていないがな。俺が今回ついてきたのは、ゴワドン卿の行動を見張るためでもある」
リュランが、大きく息を吐いた。
「なぁ、リュラン。昼間の魔法使いの件だけどさ。あいつはゴワドン卿に雇われてるみたいだけど、何であんな奴を使うのかがわからない。探索自体は王宮の指示なんだから、正規の魔法使いを連れて来るべきだろう」
ネッドが、疑問を口にする。
「いや、そこは理解できるんだ。確かに王宮の仕事だが、なるべく穏便にというのが官僚共の総意なんだよ。王も同意している。王宮の魔法使いや兵士を使ってしまえば、どうしても大袈裟になるし、結果次第では王宮の落ち度になる。保身しか考えない役人連中が、自らを危うくするやり方を取るわけないだろうが。
だからいざとなれば斬り捨てやすい、ヨソ者で固めざるを得ないのさ。でも本当に急な話だったから、あんな出来損ないも交じってしまったんだろうな」
「……」
折角のリュランの説明だが、どこか合点がいかないネッドであった。
「そもそも王宮が出張るなんて、誰の発案なんだ。普通はないだろ」
ネッドが、根本的な疑問をぶつける。
「提案したのは執政省の役人だ。だがな、調べてみると、どうやらゴワドン卿がそいつに発案させた節があるんだよ。
つまり自分ではなく他人に言い出させ、これ幸いとばかりに自らが責任者に名乗り出る。もちろん、侯爵が責任者を買って出た事を不審に思う者もいたが、四十年前の一件を持ち出して一応の納得を得たってわけさ」
「何でそんな事を?」
意外な事実に、ネッドが重ねて疑問を呈した。
「過去の話があるにしても、いきなり自分から言い出すのは、如何にも不自然だからだろうな。だが、裏工作をしてまで、何故、侯爵が、今”ここ”へ来たかったのか……」
リュランは八方塞がりとばかりに、重ねて大きなため息をついた。
分かってはいるが、ネッドが念を押す。
「あぁ、俺が昼間、お前がやりすぎるのを止めたのも、そのためだ。状況は非常に混とんとしている。下手に状況を荒立てたくない」
両こぶしを握り、リュランが苦虫を噛み潰したような表情を見せた。確かに彼が止めなければ、ネッドは魔法使いに大ケガをさせていたかも知れない。心の声に突き動かされたとはいえ、ネッドは我を忘れかけた事を大いに反省した。
「ネッド、お前はもう知ってるんだろ? 今回、王都から来る代表団の束ね役が、ゴワドン卿だって話」
「あぁ、伯父さんから聞いて驚いたよ。ただ、それには訳が……」
「四十年前の一件か」
ネッドを遮るように、リュランが失われた秘密を口にする。
「知っているのか!?」
友の意外な一言に、少し驚くネッド。しかしリュランが諜報部である事を鑑みれば、それほど意外ではないとすぐに気づく。そして話をすり合わせた結果、二人が知っている事実に大きな差異はないと分かった。
「それで、何が問題なんだよ。ゴワドン卿が四十年前の事件に良心の呵責を覚えていて、犠牲になった親子がいた街のために働きたいっていうのは、そんなに不自然な事なのか」
ネッドが尋ねる。
「なぁ、ネッド。お前の親父さんが絡んでいるから、肩入れしたくなるのは分かるがな。幾ら何でも、異例過ぎるだろ?。百歩譲って、腹心の部下をよこせば済む話じゃないか?
それにお前はゴワドン卿とは殆ど付き合いがないだろうが、こっちは諜報部に引き抜かれてから、あの御仁をマークしてたんだよ。
どうも行動に不審な点が多いんだ。もちろん、具体的には何もわかっていないがな。俺が今回ついてきたのは、ゴワドン卿の行動を見張るためでもある」
リュランが、大きく息を吐いた。
「なぁ、リュラン。昼間の魔法使いの件だけどさ。あいつはゴワドン卿に雇われてるみたいだけど、何であんな奴を使うのかがわからない。探索自体は王宮の指示なんだから、正規の魔法使いを連れて来るべきだろう」
ネッドが、疑問を口にする。
「いや、そこは理解できるんだ。確かに王宮の仕事だが、なるべく穏便にというのが官僚共の総意なんだよ。王も同意している。王宮の魔法使いや兵士を使ってしまえば、どうしても大袈裟になるし、結果次第では王宮の落ち度になる。保身しか考えない役人連中が、自らを危うくするやり方を取るわけないだろうが。
だからいざとなれば斬り捨てやすい、ヨソ者で固めざるを得ないのさ。でも本当に急な話だったから、あんな出来損ないも交じってしまったんだろうな」
「……」
折角のリュランの説明だが、どこか合点がいかないネッドであった。
「そもそも王宮が出張るなんて、誰の発案なんだ。普通はないだろ」
ネッドが、根本的な疑問をぶつける。
「提案したのは執政省の役人だ。だがな、調べてみると、どうやらゴワドン卿がそいつに発案させた節があるんだよ。
つまり自分ではなく他人に言い出させ、これ幸いとばかりに自らが責任者に名乗り出る。もちろん、侯爵が責任者を買って出た事を不審に思う者もいたが、四十年前の一件を持ち出して一応の納得を得たってわけさ」
「何でそんな事を?」
意外な事実に、ネッドが重ねて疑問を呈した。
「過去の話があるにしても、いきなり自分から言い出すのは、如何にも不自然だからだろうな。だが、裏工作をしてまで、何故、侯爵が、今”ここ”へ来たかったのか……」
リュランは八方塞がりとばかりに、重ねて大きなため息をついた。
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