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北の魔王城
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「うわぁ~」
「ほら、静かにして。あなたが作った召喚道ですわよ」
慌てふためくネッドの腕を、しっかりつかんだアリシアが諭す。今二人は先ほどまでいた林の原っぱと、アリシアが直近で召喚された時に居た場所を結ぶ魔力で醸成された異空間にいる。ネッドも頭ではわかっているものの、何せ自分が通るのは初めてなので、驚くのも無理はない。
数秒後、彼らは召喚道を抜け、とある場所へと現れた。
「ア、アリシア。ここはどこ?」
「ふふっ。”私は誰?”なんて言い出さないで下さいね。ここは、北の魔王の居城ですわ」
慌てるネッドをからかうように、アリシアが応える。
あぁ、そうか。そりゃそうだ。アリシアは、成人しているにもかかわらず、実家に住まいする箱入り娘だという事を、ネッドは思い出した。よく見れば見覚えがある。ネッドが、ここに来るのは三回目だ。
さて、少し魔界の話をしよう。
魔界は人間界とは次元の違う空間にあり、直接は行き来が出来ない。アリシアのように召喚されたり、特別な移動魔法を使う必要があった。
そしてネッドが今いるのは「北の魔王の居城」である。
魔界は東西南北に分割され、それぞれに魔王が統治をしている。以前は一人の魔王が全てを担っていたのだが、ある時、お家争いに端を発する大戦争が勃発し、分割統治する事で決着がついたのだった。いわゆる”魔界四分の計”である。ちなみに提唱したのは、ジョカッド・コウメンデスと言う伝説の名魔軍師だ。
「え~と、どういうつもり、アリシア」
ネッドが不機嫌そうな顔をし、ニコニコしているアリシアへ尋ねる。
「どういうつもりって、じっくり二人で話をしたかったからに決まってるでしょう?」
使い魔契約をしているアリシアは、決してネッドの命令には逆らえない。たとえ死を命じらても大人しく従うしかないのである。また逆に、マスターである者の安全は、命を賭して守らなければならない責務を負っている。
そして魔王も妃もアリシアを目の中に入れても痛くない程に溺愛しているので、事実上、ネッドは北の魔王と同格の位置に存在すると言って良かった。
「あ、お嬢様……、ええぇ? お前は何者だ! それにお嬢様、お召し物がボロボロで! 貴様ぁ、お嬢様に何をした!
であい、であえ! 曲者! 曲者だぁ~!!」
偶然、ネッド達を見かけた魔王の従者が、非常警報を鳴らす。瞬く間に廊下の両端に衛兵が集まり、ネッド達を包囲した。だが、これは仕方のない事だろう。魔王溺愛の娘が、見知らぬ人間と一緒におり、しかも着ているものがメルとの戦いで見るも無残にちぎれていたのだから。
「あ~、違う!違います!誤解だぁ――!!」
ネッドは瞬く間に衛兵に取り押さえられる。もちろん彼にはそれを振り払う力はあったが、ここで暴れるのはどう考えても得策ではない。ネッドはすぐに、捕らわれの身となった。
「アリシア、彼らに事情を!」
懇願するようにアリシアへ命を下すネッドだったが、肝心のアリシアはもうどこにも姿が見えない。如何に使い魔が、マスターの命令を聞かなくてはならないとは言っても、その場に居なくては意味がない。もちろんそれを見越した上での、アリシアのちょっとしたイタズラであった。
「ア、アリシア~、助けてくれ~」
「こら、お前は人間だな? 人間如きが、お嬢様を呼び捨てにするとは何事だ!」
元騎士とも思えぬ情けない声を出すネッド。それをゴッツイ悪魔の衛兵隊長、グゴガインがドヤしつける。
「ほら、静かにして。あなたが作った召喚道ですわよ」
慌てふためくネッドの腕を、しっかりつかんだアリシアが諭す。今二人は先ほどまでいた林の原っぱと、アリシアが直近で召喚された時に居た場所を結ぶ魔力で醸成された異空間にいる。ネッドも頭ではわかっているものの、何せ自分が通るのは初めてなので、驚くのも無理はない。
数秒後、彼らは召喚道を抜け、とある場所へと現れた。
「ア、アリシア。ここはどこ?」
「ふふっ。”私は誰?”なんて言い出さないで下さいね。ここは、北の魔王の居城ですわ」
慌てるネッドをからかうように、アリシアが応える。
あぁ、そうか。そりゃそうだ。アリシアは、成人しているにもかかわらず、実家に住まいする箱入り娘だという事を、ネッドは思い出した。よく見れば見覚えがある。ネッドが、ここに来るのは三回目だ。
さて、少し魔界の話をしよう。
魔界は人間界とは次元の違う空間にあり、直接は行き来が出来ない。アリシアのように召喚されたり、特別な移動魔法を使う必要があった。
そしてネッドが今いるのは「北の魔王の居城」である。
魔界は東西南北に分割され、それぞれに魔王が統治をしている。以前は一人の魔王が全てを担っていたのだが、ある時、お家争いに端を発する大戦争が勃発し、分割統治する事で決着がついたのだった。いわゆる”魔界四分の計”である。ちなみに提唱したのは、ジョカッド・コウメンデスと言う伝説の名魔軍師だ。
「え~と、どういうつもり、アリシア」
ネッドが不機嫌そうな顔をし、ニコニコしているアリシアへ尋ねる。
「どういうつもりって、じっくり二人で話をしたかったからに決まってるでしょう?」
使い魔契約をしているアリシアは、決してネッドの命令には逆らえない。たとえ死を命じらても大人しく従うしかないのである。また逆に、マスターである者の安全は、命を賭して守らなければならない責務を負っている。
そして魔王も妃もアリシアを目の中に入れても痛くない程に溺愛しているので、事実上、ネッドは北の魔王と同格の位置に存在すると言って良かった。
「あ、お嬢様……、ええぇ? お前は何者だ! それにお嬢様、お召し物がボロボロで! 貴様ぁ、お嬢様に何をした!
であい、であえ! 曲者! 曲者だぁ~!!」
偶然、ネッド達を見かけた魔王の従者が、非常警報を鳴らす。瞬く間に廊下の両端に衛兵が集まり、ネッド達を包囲した。だが、これは仕方のない事だろう。魔王溺愛の娘が、見知らぬ人間と一緒におり、しかも着ているものがメルとの戦いで見るも無残にちぎれていたのだから。
「あ~、違う!違います!誤解だぁ――!!」
ネッドは瞬く間に衛兵に取り押さえられる。もちろん彼にはそれを振り払う力はあったが、ここで暴れるのはどう考えても得策ではない。ネッドはすぐに、捕らわれの身となった。
「アリシア、彼らに事情を!」
懇願するようにアリシアへ命を下すネッドだったが、肝心のアリシアはもうどこにも姿が見えない。如何に使い魔が、マスターの命令を聞かなくてはならないとは言っても、その場に居なくては意味がない。もちろんそれを見越した上での、アリシアのちょっとしたイタズラであった。
「ア、アリシア~、助けてくれ~」
「こら、お前は人間だな? 人間如きが、お嬢様を呼び捨てにするとは何事だ!」
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