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結界闘技場
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頼むから、怪我とかしていないでくれよ。ネッドは祈るような気持であった。二人とも嫁入り前の娘である。もし何かあったら、伯父のガントは勿論、アリシアの父親である魔王にも申し訳が立たない。
まぁ、"嫁入り前の娘"という発想自体がが、既に古いわけであるが、そんな事は微塵も考えないネッド・ライザーであった。彼はある意味、とても古風な一面を持ちあわせているのである。
「ん? あれは何だ!」
もうすぐ林の原っぱに到着するという直前、ネッドは何か見覚えのあるドーム状の大きな結界を見つけた。あそこか! 直感を得たネッドは、全速力でその場へと向かう。
こちらは当のメルとアリシア。両者一歩も引かぬ、互角の戦いが続けられていた。
「だから、ネッドの事、さっさと諦めなさいよ!この悪魔娘!」
アリシアの攻撃魔法の的にならぬよう、ジグザグ高速で空き地を駆け巡るメル。
「それは、こっちのセリフですわ!マイハニーに近づかないで!」
暗黒火球を次々と回避され、イラつきが頂点に達しているアリシア。
「はぁ? マイハニー!? 私だってそんな呼び方した事ないのに、図々しいにもほどがあるわ!」
激高するメルだが、度重なるアリシアの猛攻に、自慢の高速攻撃もそろそろ限界だ。いい加減、勝負をつける必要があると覚悟を決める。
メルはとにかく手数を出し、結界の端までアリシアを追い込んだかと思うと、一転、その真逆の端に全速力で駆け向かう。
「何? 逃げ出すんですの? ネッドの事は諦め……」
アリシアが勝利を確信しかけた瞬間、外周まで戻ったメルは、踵を返し好敵手へ向けてすぐさま走り出す。そのスピードは一秒ごとに加速され、凄まじい勢いを作りだした。
「スピードを最大限にするために、わざと距離を取った?」
アリシアは今、結果の端にいる。後ろに逃げ場はない。かといって横に悪魔のステップをきっても、メルは魔法を使い、進行方向を変えて来るだろう。
迎え撃つしかない!
アリシアは咄嗟に、そう判断した。右手のナイフを頭上に掲げ、左手のナイフを真下に降ろす。短い呪文を唱えながら、それらを同時に半回転させると、描かれた円の軌跡に、超特大の暗黒火球が現れた。加えてアリシアが魔法の言葉を口にすると、火の玉は楕円球の形に変化する。
「これで、最後ですわ!」
アリシアが両手を後ろへ振り切ると、楕円火球は更に大きさを増しながら、突進してくるメルへと向かっていった。これだけの大きさとなれば、メルがどの方向へ逃げようとも避ける事は不可能だ。
そして、魔王の血筋である翼を現出させた今のアリシアの力をもってすれば、如何にメルが悪魔のエネルギーに耐性があるとはいえ、深刻なダメージを受ける事は避けられないだろう。
メルが取り得る全ての軌道を網羅した暗黒火球が彼女に迫りくる。だが、ここでメルが意外な行動に討って出た。火球が彼女にぶつかるタイミングより明らかに遠い距離で、メルは剣を一気に振り降ろしたのだ。当然これでは、剣は空を切り、火球の直撃を喰らう事を免れない。
まぁ、"嫁入り前の娘"という発想自体がが、既に古いわけであるが、そんな事は微塵も考えないネッド・ライザーであった。彼はある意味、とても古風な一面を持ちあわせているのである。
「ん? あれは何だ!」
もうすぐ林の原っぱに到着するという直前、ネッドは何か見覚えのあるドーム状の大きな結界を見つけた。あそこか! 直感を得たネッドは、全速力でその場へと向かう。
こちらは当のメルとアリシア。両者一歩も引かぬ、互角の戦いが続けられていた。
「だから、ネッドの事、さっさと諦めなさいよ!この悪魔娘!」
アリシアの攻撃魔法の的にならぬよう、ジグザグ高速で空き地を駆け巡るメル。
「それは、こっちのセリフですわ!マイハニーに近づかないで!」
暗黒火球を次々と回避され、イラつきが頂点に達しているアリシア。
「はぁ? マイハニー!? 私だってそんな呼び方した事ないのに、図々しいにもほどがあるわ!」
激高するメルだが、度重なるアリシアの猛攻に、自慢の高速攻撃もそろそろ限界だ。いい加減、勝負をつける必要があると覚悟を決める。
メルはとにかく手数を出し、結界の端までアリシアを追い込んだかと思うと、一転、その真逆の端に全速力で駆け向かう。
「何? 逃げ出すんですの? ネッドの事は諦め……」
アリシアが勝利を確信しかけた瞬間、外周まで戻ったメルは、踵を返し好敵手へ向けてすぐさま走り出す。そのスピードは一秒ごとに加速され、凄まじい勢いを作りだした。
「スピードを最大限にするために、わざと距離を取った?」
アリシアは今、結果の端にいる。後ろに逃げ場はない。かといって横に悪魔のステップをきっても、メルは魔法を使い、進行方向を変えて来るだろう。
迎え撃つしかない!
アリシアは咄嗟に、そう判断した。右手のナイフを頭上に掲げ、左手のナイフを真下に降ろす。短い呪文を唱えながら、それらを同時に半回転させると、描かれた円の軌跡に、超特大の暗黒火球が現れた。加えてアリシアが魔法の言葉を口にすると、火の玉は楕円球の形に変化する。
「これで、最後ですわ!」
アリシアが両手を後ろへ振り切ると、楕円火球は更に大きさを増しながら、突進してくるメルへと向かっていった。これだけの大きさとなれば、メルがどの方向へ逃げようとも避ける事は不可能だ。
そして、魔王の血筋である翼を現出させた今のアリシアの力をもってすれば、如何にメルが悪魔のエネルギーに耐性があるとはいえ、深刻なダメージを受ける事は避けられないだろう。
メルが取り得る全ての軌道を網羅した暗黒火球が彼女に迫りくる。だが、ここでメルが意外な行動に討って出た。火球が彼女にぶつかるタイミングより明らかに遠い距離で、メルは剣を一気に振り降ろしたのだ。当然これでは、剣は空を切り、火球の直撃を喰らう事を免れない。
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