騎士をやめて機能付加職人になったけど、妹が厳しすぎて困ります 【第一部 ホントウ】

藻ノかたり

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的中した予感

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「ところで、ノンビリしていていいのかよ。大切な用事が、あるんじゃなかったのか?」

リュランが、意地悪そうな流し目をネッドに向ける。

「あ、そうだった。ワケは後で話す。とりあえず、僕は先に行っているよ。時間を見て店の方へ寄ってくれ」

ギルマスの娘メルと、魔王の娘アリシアとのトラブルを予感していた事を思い出し、自宅へ急ごうとするネッド。

「いや、ワケなら全て知っている。俺を誰だと思ってるんだ。諜報騎士のリュラン・ホーネット様だぞ。お前が昨日、市場でジャガイモを何個買ったかまで、きっちりお見通しさ!」

左手を胸にあて、右手を上に突きだし気取るリュランをガン無視して、ネッドは一路、我が家へ向けて駆け出した。その姿を呆れた表情で見送るリュラン。

……あの時、俺のした事は間違っていなかったよな。

リュランは、心の中でそう呟いた。


「あぁ、とんだ所で時間を食ってしまった。早駆けの靴を履いてくればよかった!」

目的の場所まで時間がかかりすぎる事にネッドはイラついた。だがこればかりは、どうしようもない。とにかく全速力で自分の店を目指すネッドであった。

十数分後、汗だくになって自宅兼店舗「機能付加ショップ ハッピー・アディション」に辿り着いたネッド。扉を開くなり、開口一番「メル姉は来てる!?」と叫ぶ。

店には誰もおらず、これが良い兆しなのか悪い兆しなのか判断のつかないネッドは、住宅部分へ通じる廊下を急いだ。

「シャミー、メル姉は来た!?」

ネッドは肩で大きく息をしながら、ソファーでクッキーを頬張る妹に尋ねる。

「あぁ、お兄ちゃん。メル姉なら来たわよ。やっぱり行き違いになったのね」

「じゃぁ、アリシアは? 店にいなかったようだけど」

「メル姉と、出て行ったわ」

「何しに?」

「決闘しに」

膝にこぼれたクッキーのかけらを拾いながら、シャミーがシレッと答えた。

「えっ――!!」

最悪だ、最悪の展開。予想はしていたものの、それが現実になってしまったと知り、ネッドは愕然とした。

「どうして、止めなかったんだよ!」

ネッドが、シャミーを咎める。

「止めて止まるような二人じゃないって、お兄ちゃんだってわかってるでしょ。まぁ、今まで都合の悪い事を放っておいたツケが、回って来ただけの話なんじゃないの?」

妹はまだ十五歳のはずなのに、何でどこかの説教オバさんみたいな口を利くのだろう……。そう思うネッドだったが、今はそれどころではない。

「で、決闘って、どこで!?」

「林の原っぱで」

慌てふためく兄に向って、淡々と答えるシャミー・ライザー。

次なる目的地を定めたネッドが、踵を返して自宅を後にする。林の原っぱまで急いでも三分だ。万が一の事が起きる前に、何としてもあの二人を止めなければ! 双方の実力を知っているネッドは、全速力で決闘場へと向かった。
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