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友人
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「そ、それは、諜報省の……!」
ボッゾルの顔色がサッと変わる。
諜報省、それは王宮の裏を仕切る部署であり、王国に仇名すものは、たとえ貴族であっても容赦はしない。王ですら査察の対象になる場合だってある。事実、何代か前の王は、他国と通じて国を売ろうとした罪で密かに葬られたという。
そんなところに王宮魔法使いと名乗っていたと知れたら、只で済むわけがない。”アルバイト”のボッゾルにも、それくらいの道理は理解できた。
「ひっ~、お許しを。お許しを~!」
自らの境遇を悟った憐れな魔法使いは、ただ平謝りするばかりであった。
「まぁ、こちらとしても森の探索任務を前に事を荒立てたくはないし、ゴワドン卿のメンツも潰したくはない。”ここでは何も起こらなかった”と言うのであれば、それを信じるとしよう。どうする?」
額を地面に擦り付けるボッゾルを見下ろすリュラン。
「はいっ、はいっ、仰せのままに!」
そう答えるとボッゾルは失神しているガドッツに浮遊の魔法を施し、一目散に何処かへ去っていってしまった。
「どうだい、ネッド。俺の名裁きは!」
奸物どもが去った路地で、リュランがフンと鼻を鳴らす。
「……っていうか、僕の言い分の方は聞いてくれないのかよ」
「お前の言い分?」
「アルバイトとはいえ、執政省の役人に管理責任がある奴だろ、あいつは。そいつに僕は、酷い目にあわされかけたんだぜ」
半分冗談めかして、ネッドが詰め寄った。
「おいおい、酷い目に遭ったのは連中の方だろう? それとも”突然、さしたる理由もなしに王宮を去った騎士が、話題の街で大暴れしている”って報告してほしいのか?」
リュランも、負けじと返す。
「そ、それは困るけど……。あ、でもさ、そもそも諜報ってのは裏で調査を進めるもんだろ? あんなに堂々と、自分は諜報省だと名乗っていいのかよ?」
再反撃に転じるネッド。
「いいの、今回は! お前も知っての通り、俺は諜報省の広報部だから結構顔が知られているし、王都からの派遣隊に正式メンバーとして名を連ねているからな」
諜報省のわりに、ペラペラと情報を喋ってしまうリュランであった。これも騎士養成所以来”あの事件”まで、ネッドと苦楽を共にしてきた仲である事が、そうさせているのだろう。
「それに下手な報告をしたら、お前と一緒に国家反逆罪に問われること間違いなしの”秘密”を背負っているって、皆にバレかねないだろう?」
「お、おい。声が高いぞ」
ネッドが慌てて、辺りを見回した。
「誰もいないよ。俺がそんなヘマをすると思うのか」
「思う」
「なんだとぉ!」
心が通じ合った友人通しの、他愛のない冗談を二人は楽しんだ。だが冗談の中にも、ネッドは深く思う。そう、僕がこうやって曲がりなりにも穏やかに暮らしていけるのは、リュランがとんでもない秘密を僕と一緒に抱えてくれたからなんだと。
ボッゾルの顔色がサッと変わる。
諜報省、それは王宮の裏を仕切る部署であり、王国に仇名すものは、たとえ貴族であっても容赦はしない。王ですら査察の対象になる場合だってある。事実、何代か前の王は、他国と通じて国を売ろうとした罪で密かに葬られたという。
そんなところに王宮魔法使いと名乗っていたと知れたら、只で済むわけがない。”アルバイト”のボッゾルにも、それくらいの道理は理解できた。
「ひっ~、お許しを。お許しを~!」
自らの境遇を悟った憐れな魔法使いは、ただ平謝りするばかりであった。
「まぁ、こちらとしても森の探索任務を前に事を荒立てたくはないし、ゴワドン卿のメンツも潰したくはない。”ここでは何も起こらなかった”と言うのであれば、それを信じるとしよう。どうする?」
額を地面に擦り付けるボッゾルを見下ろすリュラン。
「はいっ、はいっ、仰せのままに!」
そう答えるとボッゾルは失神しているガドッツに浮遊の魔法を施し、一目散に何処かへ去っていってしまった。
「どうだい、ネッド。俺の名裁きは!」
奸物どもが去った路地で、リュランがフンと鼻を鳴らす。
「……っていうか、僕の言い分の方は聞いてくれないのかよ」
「お前の言い分?」
「アルバイトとはいえ、執政省の役人に管理責任がある奴だろ、あいつは。そいつに僕は、酷い目にあわされかけたんだぜ」
半分冗談めかして、ネッドが詰め寄った。
「おいおい、酷い目に遭ったのは連中の方だろう? それとも”突然、さしたる理由もなしに王宮を去った騎士が、話題の街で大暴れしている”って報告してほしいのか?」
リュランも、負けじと返す。
「そ、それは困るけど……。あ、でもさ、そもそも諜報ってのは裏で調査を進めるもんだろ? あんなに堂々と、自分は諜報省だと名乗っていいのかよ?」
再反撃に転じるネッド。
「いいの、今回は! お前も知っての通り、俺は諜報省の広報部だから結構顔が知られているし、王都からの派遣隊に正式メンバーとして名を連ねているからな」
諜報省のわりに、ペラペラと情報を喋ってしまうリュランであった。これも騎士養成所以来”あの事件”まで、ネッドと苦楽を共にしてきた仲である事が、そうさせているのだろう。
「それに下手な報告をしたら、お前と一緒に国家反逆罪に問われること間違いなしの”秘密”を背負っているって、皆にバレかねないだろう?」
「お、おい。声が高いぞ」
ネッドが慌てて、辺りを見回した。
「誰もいないよ。俺がそんなヘマをすると思うのか」
「思う」
「なんだとぉ!」
心が通じ合った友人通しの、他愛のない冗談を二人は楽しんだ。だが冗談の中にも、ネッドは深く思う。そう、僕がこうやって曲がりなりにも穏やかに暮らしていけるのは、リュランがとんでもない秘密を僕と一緒に抱えてくれたからなんだと。
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