10 / 153
意外な展開
しおりを挟む
「というわけで、本日、皆に集まってもらったのは他でもない。一週間後、リルゴットの森で大掛かりな調査を行いたいので、出来るだけ多くの冒険者に参加してほしいのだ。
もちろん強制はしないが、我が街の為に是非とも要請を聞き届けてくれる事を望む」
”報酬は出るんですか?”
ギルマスの言葉に、集まっている冒険者の誰かが声をあげた。
「当然だ。今回の探索は、言わば領主さまが依頼主だからな。実は王都の執政省からも、非公式で何人か派遣される事が決まっている。実質的には合同探索となるので、その旨も了解しておいてくれ」
再び、聴衆の間にどよめきが起こる。
「おい、おい。こりゃ、一体どういうこったい。なんで、わざわざ王都の連中が割り込んでくるんだよ」
のんびり屋の戦士ライルも、さすがに驚きを隠せない様子だ。
そのお得意様の言に、ネッドは、つい口を滑らせる
「これはかなり深刻な状況ですね。大っぴらでなくても執政省が出張ってくるとなると、王都側では明らかに”領主には任せておけない”と考えている事になります。
ポーナイザル規模の街で起こった、今のところは小さな事件で普通はこんな対応はしませんよ。もしくは、他に何か思惑があるのかも知れません。場合によっては、上の方の誰かの個人的な事情なのかも……」
「……ネッドさん。あなた、どうしてそんな事が分かるの?」
マルチェナが、即座に疑問を呈した。
しまった!
ネッドは表向きは冷静さを保ちながらも、心の中では大いに狼狽した。彼はつい三ヶ月前までは王都で騎士を務めていた。しかも、王付きの親衛隊の一人である。よって様々な事情にも通じているのだが、それに基づく推測を不用意にもベラベラと喋ってしまったのだった。
「え? えぇ……。いや、友達が王都で城に勤めてましてね。色々と話を聞く中で、そういう事もあるのかなぁ……みたいな、そんな感じで推測を喋ってしまいました。すいません。気にしないで下さい」
必死に誤魔化そうとするネッドを、ライルを除くテーブルの皆が訝しむ。
「では、話は以上だ。急がせる様で申し訳ないが、明日の朝までに依頼を受託する者は登録をしてほしい。詳しい条件は、スタッフに確認をしてくれ」
ギルマスの話が終り、集まった冒険者たちは、ギルド館のスタッフの説明を受けるため、幾つかの受付テーブルの周りへと群がり始めた。
「あぁ、ごめんなさい。実は魔石職人のアスティをカフェに待たせてあるんですよ。結構時間がおしちゃってるんで、失礼しまーす」
「ちょ、ちょっと……!」
追いすがるパーティーの声を、聞こえぬふりで脱出口へとひた走るネッド。あぁ、次に会った時、どう言い訳しよう……。お得意様の件もパァかなぁ……。この件はシャミーには絶対内緒にしておこうと、心に硬く誓うネッドであった。
通りに出るとネッドは、はす向かいにあるカフェ”ポラルゾ”へと駆け込んだ。中では既に二杯目の紅茶を飲み干したアスティが、あわてた様子で店へと入って来た魂石職人を迎え入れる。
しかしギルド館を早々に出奔した事が、すぐに大きな波乱を起こすきっかけになろうとは、その時のネッドには知る由もなかった。
もちろん強制はしないが、我が街の為に是非とも要請を聞き届けてくれる事を望む」
”報酬は出るんですか?”
ギルマスの言葉に、集まっている冒険者の誰かが声をあげた。
「当然だ。今回の探索は、言わば領主さまが依頼主だからな。実は王都の執政省からも、非公式で何人か派遣される事が決まっている。実質的には合同探索となるので、その旨も了解しておいてくれ」
再び、聴衆の間にどよめきが起こる。
「おい、おい。こりゃ、一体どういうこったい。なんで、わざわざ王都の連中が割り込んでくるんだよ」
のんびり屋の戦士ライルも、さすがに驚きを隠せない様子だ。
そのお得意様の言に、ネッドは、つい口を滑らせる
「これはかなり深刻な状況ですね。大っぴらでなくても執政省が出張ってくるとなると、王都側では明らかに”領主には任せておけない”と考えている事になります。
ポーナイザル規模の街で起こった、今のところは小さな事件で普通はこんな対応はしませんよ。もしくは、他に何か思惑があるのかも知れません。場合によっては、上の方の誰かの個人的な事情なのかも……」
「……ネッドさん。あなた、どうしてそんな事が分かるの?」
マルチェナが、即座に疑問を呈した。
しまった!
ネッドは表向きは冷静さを保ちながらも、心の中では大いに狼狽した。彼はつい三ヶ月前までは王都で騎士を務めていた。しかも、王付きの親衛隊の一人である。よって様々な事情にも通じているのだが、それに基づく推測を不用意にもベラベラと喋ってしまったのだった。
「え? えぇ……。いや、友達が王都で城に勤めてましてね。色々と話を聞く中で、そういう事もあるのかなぁ……みたいな、そんな感じで推測を喋ってしまいました。すいません。気にしないで下さい」
必死に誤魔化そうとするネッドを、ライルを除くテーブルの皆が訝しむ。
「では、話は以上だ。急がせる様で申し訳ないが、明日の朝までに依頼を受託する者は登録をしてほしい。詳しい条件は、スタッフに確認をしてくれ」
ギルマスの話が終り、集まった冒険者たちは、ギルド館のスタッフの説明を受けるため、幾つかの受付テーブルの周りへと群がり始めた。
「あぁ、ごめんなさい。実は魔石職人のアスティをカフェに待たせてあるんですよ。結構時間がおしちゃってるんで、失礼しまーす」
「ちょ、ちょっと……!」
追いすがるパーティーの声を、聞こえぬふりで脱出口へとひた走るネッド。あぁ、次に会った時、どう言い訳しよう……。お得意様の件もパァかなぁ……。この件はシャミーには絶対内緒にしておこうと、心に硬く誓うネッドであった。
通りに出るとネッドは、はす向かいにあるカフェ”ポラルゾ”へと駆け込んだ。中では既に二杯目の紅茶を飲み干したアスティが、あわてた様子で店へと入って来た魂石職人を迎え入れる。
しかしギルド館を早々に出奔した事が、すぐに大きな波乱を起こすきっかけになろうとは、その時のネッドには知る由もなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
【完結】それは、私にお任せください
楽歩
恋愛
強面で無骨な近衛隊長のスヴェイン。彼には可憐な婚約者がいる。
スヴェインを一途に思い、全力で愛するレティシア。しかし、スヴェインは気付かない。愛する婚約者を守るため、影で暗躍するレティシアのもう一つの顔を――。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))6万字ほどの中編です。

異世界で婿養子は万能職でした
小狐丸
ファンタジー
幼馴染の皐月と結婚した修二は、次男という事もあり、婿養子となる。
色々と特殊な家柄の皐月の実家を継ぐ為に、修二は努力を積み重ねる。
結婚して一人娘も生まれ、順風満帆かと思えた修二の人生に試練が訪れる。
家族の乗る車で帰宅途中、突然の地震から地割れに呑み込まれる。
呑み込まれた先は、ゲームの様な剣と魔法の存在する世界。
その世界で、強過ぎる義父と動じない義母、マイペースな妻の皐月と天真爛漫の娘の佐那。
ファンタジー世界でも婿養子は懸命に頑張る。
修二は、異世界版、大草原の小さな家を目指す。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる