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その後に14
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リコールも問題なく済すんで、新しい生徒会役員もすぐに決まった。今度は実力のある生徒で顔はそこそこでも性格はしっかりしている。
それまでの役員の才能が平凡だったのかというくらい溜まっていた仕事もさくさくと減っていく。
すごいなと関心しつつ、減った仕事に妙に寂しさを感じる。
「これでゆっくりできる。クラミも会長なんてやめてもらって長く一緒にいたいものだが、クラミはしたいだろうし、将来のことを考えると会長だったというのは有利だろうしな」
もう学園で2人の関係を知らないものはいないくらい倉見と仲樹は一緒にいる。今も食堂で隣あっていて、食べにくくないかというくらい寄り添って食事をしていた。
「…ん」
「どうした?」
なぜか浮かない顔の倉見。
「なんでもない」
「む。俺は心配だ」
「あ、そっか…。悪い。そうだよな。たいしたことじゃないんだけどな。ナカキの言うとおり俺は将来会社を継ぐわけだし、きちんとしないといけない。…ただ、本当にそれでいいのかと迷って…。今回のことで世界観?が変わったからな」
「将来に不満があるのか?」
「そうじゃない。けど…」
「俺は。クラミとの将来を考えている。俺はそれを一番に考える。恋人を一番にするなんて馬鹿だと言われるかもしれないが、俺にとってのすべてはクラミなんだ」
「ナカキ…。……うれしい。俺もそうしたい」
「なら、どうすれば2人にとって幸福になれるか、2人で考えていこう」
「…ん…」
男同士であることはすでに受け入れているものの、周囲は認めないこともあるし、それで苦労をするかもしれない。それでもそんなこと簡単に乗り越えられるんじゃないかと思えるくらい、今が輝いた時に感じていた。
少しの不安は、大事な仲樹となにかしらの理由で離れなければならないことが起きないかということ。全力で阻止する気はあるが、何が起きるか分からない。
夜、健やかに眠りについた倉見は、目に痛いピンク色に意識をはっきりさせる。
「やあ。すごいね! 本当に黒いモヤを消すなんて、これも神の導きかな?」
笑顔の死神が倉見を出迎えた。
「…わかんないのかよ」
「下っ端が分かるわけないでしょ。黒いモヤだって悪いものだってのは知ってるけど、それが欲からきてるとは驚きだし」
「考えてみると当然なことじゃないか? 普通の人の悪いものっていったら邪念だろ」
「ああ、お話ではそうだけれども。…とにかく、消したりまでしてくれてありがとう。これで他の人への影響もなくなることだろう。そんな君には探偵役の称号をあげよう! 他の誰も知らないけれど、俺は忘れないよ」
「それより縁」
黒いモヤのことも忘れかけてたけど、思い出した。ご褒美なければ頑張ってない。仲樹の助けがなければ無理だったかもだけど、望みは一緒なんだから問題ないだろう。
「実は2人の縁ってなかなか強いからね。今回の問題はちょっと危なかったけど、2人の絆のおかげでついでに問題解決にいたったんだよね」
「…つまり?」
「すでに本人が望み続ける限り、共にいられる運命といっていい」
「いまさら縁を作る必要はなかったってことか」
それって人の弱みにつけこんだのかと倉見は死神をじとっと見る。
「まあまあ、縁は2人の間だけではないだろう? 2人の力になれそうな人との縁を強固にするから許して」
「それなら…。がっちり頼むな。そこらは努力でどうにかならないし」
「ご褒美だしね。君達2人は興味深いから奮発するよ」
下っ端といえど、力持ってそうな存在に縁を確約してもらえ、倉見は安心して眠気がくる。
そのまま抗えず眠りに落ちて仲樹への思いに意識がいくが、死神の最後の言葉に笑えなかった。
「お話だとするとさ、一度こういうのに巻き込まれるとクセになるように、似た不思議体験繰り返しそうだよねー」
思わず眠った身体を無理矢理起こす。
「お前がそんな冗談言ったら駄目だろ」
「クラミ? どうした?」
倉見の身体を抱えて寝ていた仲樹も一緒に起こされるかたちになり、不思議そうな顔をしている。
「ナカキー。聞いてくれー」
「ああ。どうした?」
遠慮なく倉見は仲樹に飛びつき、仲樹は優しくその背を叩いてくれた。
夢の話を聞いた仲樹は。
「次こそは側にいて倉見を守る」
なにか起こる前提のことを言った。それでも嬉しい倉見は口元がにやける。たしかに仲樹がずっと側にいてくれるのなら、何があっても平気だろう。
2人は人目のない部屋の中でたっぷりいちゃつくのだった。
その後、安定して恋人として充実した生活を送るようになったある日。
新しい副会長が客が来ているというので応接室に行けば、全身黒い服装の見事な銀髪赤目の男がいて、不敵な顔で君が探偵君?と言われた倉見は相手の姿から悪魔じゃないかと推測。
見事当たった。
悪魔に協力なんてできるかと言ったが、うまく協力することになってしまう。
そんな運命になったっぽい。あの死神のせいだと仲樹にグチる。
「褒美の縁はもしかしてこれも含んでないか?」
「は? ………それは推測できなくはないが、どういう意味だろう?」
「さて、巻き込まれたのか、これも俺達にとっていい方向にいくのかは分からないが、きっといいことに繋がると思いたいな。クラミの為になるならなんだってするさ」
少し仲樹の頭によぎるのは、倉見が黒いモヤを見たことだ。それは前からではないし、本当に運命が変わってるかもしれない。そうなると死神の考えでこうなっているのなら、重視する必要がある。
ただ、むやみに不安にさせる必要はないので話はしない。
「…いいのか? こういってはなんだが、とても普通のことからはずれている」
「ばーか」
「いて」
倉見は小突かれた額をさする。手加減されたが地味に痛い。
「言っただろ。今度はクラミの為に初めから関わってくつもりだ。なんとか俺も死神に接触したいな。その悪魔も」
「どっちもいいもんじゃないと思うのに」
「お前が関わってるんだから、なんだろうと関わる。俺をのけもんにすんなよ?」
「……………それは」
できれば関わってほしくない。しかし、逆の立場ならどんなことしても関わると思う。それとやっぱり、後悔しない選択は、シンプルに共にあることだと思う。
「…分かった。だけど、そっちも勝手にむちゃするなよ?」
「わかった」
笑いながら言う仲樹に倉見は少しむっつりするが、すぐに同じように笑った。
なんだかこの先楽しそうだ。なにがあっても、楽しんでいこうと思う。恋人と共に。
2014/03/14
それまでの役員の才能が平凡だったのかというくらい溜まっていた仕事もさくさくと減っていく。
すごいなと関心しつつ、減った仕事に妙に寂しさを感じる。
「これでゆっくりできる。クラミも会長なんてやめてもらって長く一緒にいたいものだが、クラミはしたいだろうし、将来のことを考えると会長だったというのは有利だろうしな」
もう学園で2人の関係を知らないものはいないくらい倉見と仲樹は一緒にいる。今も食堂で隣あっていて、食べにくくないかというくらい寄り添って食事をしていた。
「…ん」
「どうした?」
なぜか浮かない顔の倉見。
「なんでもない」
「む。俺は心配だ」
「あ、そっか…。悪い。そうだよな。たいしたことじゃないんだけどな。ナカキの言うとおり俺は将来会社を継ぐわけだし、きちんとしないといけない。…ただ、本当にそれでいいのかと迷って…。今回のことで世界観?が変わったからな」
「将来に不満があるのか?」
「そうじゃない。けど…」
「俺は。クラミとの将来を考えている。俺はそれを一番に考える。恋人を一番にするなんて馬鹿だと言われるかもしれないが、俺にとってのすべてはクラミなんだ」
「ナカキ…。……うれしい。俺もそうしたい」
「なら、どうすれば2人にとって幸福になれるか、2人で考えていこう」
「…ん…」
男同士であることはすでに受け入れているものの、周囲は認めないこともあるし、それで苦労をするかもしれない。それでもそんなこと簡単に乗り越えられるんじゃないかと思えるくらい、今が輝いた時に感じていた。
少しの不安は、大事な仲樹となにかしらの理由で離れなければならないことが起きないかということ。全力で阻止する気はあるが、何が起きるか分からない。
夜、健やかに眠りについた倉見は、目に痛いピンク色に意識をはっきりさせる。
「やあ。すごいね! 本当に黒いモヤを消すなんて、これも神の導きかな?」
笑顔の死神が倉見を出迎えた。
「…わかんないのかよ」
「下っ端が分かるわけないでしょ。黒いモヤだって悪いものだってのは知ってるけど、それが欲からきてるとは驚きだし」
「考えてみると当然なことじゃないか? 普通の人の悪いものっていったら邪念だろ」
「ああ、お話ではそうだけれども。…とにかく、消したりまでしてくれてありがとう。これで他の人への影響もなくなることだろう。そんな君には探偵役の称号をあげよう! 他の誰も知らないけれど、俺は忘れないよ」
「それより縁」
黒いモヤのことも忘れかけてたけど、思い出した。ご褒美なければ頑張ってない。仲樹の助けがなければ無理だったかもだけど、望みは一緒なんだから問題ないだろう。
「実は2人の縁ってなかなか強いからね。今回の問題はちょっと危なかったけど、2人の絆のおかげでついでに問題解決にいたったんだよね」
「…つまり?」
「すでに本人が望み続ける限り、共にいられる運命といっていい」
「いまさら縁を作る必要はなかったってことか」
それって人の弱みにつけこんだのかと倉見は死神をじとっと見る。
「まあまあ、縁は2人の間だけではないだろう? 2人の力になれそうな人との縁を強固にするから許して」
「それなら…。がっちり頼むな。そこらは努力でどうにかならないし」
「ご褒美だしね。君達2人は興味深いから奮発するよ」
下っ端といえど、力持ってそうな存在に縁を確約してもらえ、倉見は安心して眠気がくる。
そのまま抗えず眠りに落ちて仲樹への思いに意識がいくが、死神の最後の言葉に笑えなかった。
「お話だとするとさ、一度こういうのに巻き込まれるとクセになるように、似た不思議体験繰り返しそうだよねー」
思わず眠った身体を無理矢理起こす。
「お前がそんな冗談言ったら駄目だろ」
「クラミ? どうした?」
倉見の身体を抱えて寝ていた仲樹も一緒に起こされるかたちになり、不思議そうな顔をしている。
「ナカキー。聞いてくれー」
「ああ。どうした?」
遠慮なく倉見は仲樹に飛びつき、仲樹は優しくその背を叩いてくれた。
夢の話を聞いた仲樹は。
「次こそは側にいて倉見を守る」
なにか起こる前提のことを言った。それでも嬉しい倉見は口元がにやける。たしかに仲樹がずっと側にいてくれるのなら、何があっても平気だろう。
2人は人目のない部屋の中でたっぷりいちゃつくのだった。
その後、安定して恋人として充実した生活を送るようになったある日。
新しい副会長が客が来ているというので応接室に行けば、全身黒い服装の見事な銀髪赤目の男がいて、不敵な顔で君が探偵君?と言われた倉見は相手の姿から悪魔じゃないかと推測。
見事当たった。
悪魔に協力なんてできるかと言ったが、うまく協力することになってしまう。
そんな運命になったっぽい。あの死神のせいだと仲樹にグチる。
「褒美の縁はもしかしてこれも含んでないか?」
「は? ………それは推測できなくはないが、どういう意味だろう?」
「さて、巻き込まれたのか、これも俺達にとっていい方向にいくのかは分からないが、きっといいことに繋がると思いたいな。クラミの為になるならなんだってするさ」
少し仲樹の頭によぎるのは、倉見が黒いモヤを見たことだ。それは前からではないし、本当に運命が変わってるかもしれない。そうなると死神の考えでこうなっているのなら、重視する必要がある。
ただ、むやみに不安にさせる必要はないので話はしない。
「…いいのか? こういってはなんだが、とても普通のことからはずれている」
「ばーか」
「いて」
倉見は小突かれた額をさする。手加減されたが地味に痛い。
「言っただろ。今度はクラミの為に初めから関わってくつもりだ。なんとか俺も死神に接触したいな。その悪魔も」
「どっちもいいもんじゃないと思うのに」
「お前が関わってるんだから、なんだろうと関わる。俺をのけもんにすんなよ?」
「……………それは」
できれば関わってほしくない。しかし、逆の立場ならどんなことしても関わると思う。それとやっぱり、後悔しない選択は、シンプルに共にあることだと思う。
「…分かった。だけど、そっちも勝手にむちゃするなよ?」
「わかった」
笑いながら言う仲樹に倉見は少しむっつりするが、すぐに同じように笑った。
なんだかこの先楽しそうだ。なにがあっても、楽しんでいこうと思う。恋人と共に。
2014/03/14
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